交流戦が吹っ飛んだ。今年で6回目となるセ・パ直接対決が始まった12日、楽天の野村前監督(74)が緊急入院していたことが発覚。フジテレビの報道で、しかもそれが「解離性大動脈瘤」と分かって、一時は「深刻な状態」とのウワサが球界を駆け巡り、スポーツマスコミは大騒ぎとなったのだ。

野村前監督が都内病院に担ぎ込まれたのはさる10日。その後、別の病院に救急搬送されたという。幸い命に別条はなく「10日間前後で退院できる見込み」(関係者)というが、ヤクルト監督就任が決まった89年オフにも心臓疾患で緊急入院しているだけに、楽観視はできない。

「89年に倒れた際も、実は今回と全く同じ『大動脈瘤』でした。医師からの指導で以来、血圧を下げる薬を常用し、今もそれは手放せません。もともと血管や心臓に不安があるだけに、心配です」(ヤクルト関係者)

野村前監督は酒もたばこもやらない。74歳になっても食欲は旺盛で、200グラムのステーキをペロリと平らげる。「眠れるのは健康な証拠」と12時間睡眠を周囲に自慢するなどしていたが、関係者が唯一、心配していたのが働き過ぎだった。

「倒れる前日の9日も神奈川県川崎市で講演をやっていた。内容は楽天への恨み節や沙知代夫人(78)とのなれ初め、それに関係する南海監督解任などいつもと代わり映えしないものでしたが、予定時間を30分以上もオーバーして熱弁を振るっていた。本人が『サッチーがどんどん仕事を入れて、休ませてくれんのや』と冗談めかして言っていたように、その日が4月から数えて12回目の講演。静岡から山口に行き、東京に戻って今度は奈良と、そんな移動を毎月のように繰り返していた。その合間を縫ってテレビ出演やイベント出演の仕事もこなしているわけですから、そりゃあ負担はかかっていたはずですよ」(広告代理店関係者)
(野村前楽天監督 緊急入院の衝撃)

解離性大動脈瘤とは


大動脈瘤とは、何らかの原因により大動脈壁が脆弱化し、限局的に動脈内腔が拡張した状態を指します。大動脈瘤は「正常動脈径より50%以上の拡大、あるいは動脈が局所的に3.0cm以上拡大した状態」と定義されます。

大動脈瘤の部位により、上行大動脈瘤、弓部・胸部下行大動脈瘤、腎上部腹部大動脈瘤、腎動脈分岐部以下の腹部大動脈瘤(腎下部腹部大動脈瘤)、胸腹部大動脈瘤に分類されます。

部位別では腎動脈分岐部以下の腹部大動脈瘤(腎下部腹部大動脈瘤)が約60%と最も多く、次いで上行大動脈瘤16%、弓部下行大動脈瘤7%、腎上部腹部大動脈瘤5%、胸腹部大動脈瘤2%の順となっています。

動脈瘤壁の構造により
真性動脈瘤:動脈瘤壁が内膜、外膜、残存中膜など動脈壁の構造を有するもの
仮性動脈瘤:動脈瘤壁が固有の壁構造を欠き,新たに形成された結合組織または動脈壁の外膜のみを有するもの
解離性大動脈瘤:中膜内に血液が流入し、大動脈壁が内層と外層に剥離された状態

に分類されます。

原因として、最も多いのは動脈硬化性によるものです。これは、粥腫の形成・崩壊、潰瘍形成、出血の繰り返しから中膜弾性線維の破壊をきたして、壁厚像を脆弱化させる過程が推定されています。

このほかに遺伝的素因により中膜弾性線維の破壊が起こりやすいもの〔Marfan(マルファン)症候群で起こる嚢胞性中膜壊死〕、炎症による中膜弾性線維断裂や平滑筋の破壊が起こるもの〔Behcet(ベーチェット)病、大動脈炎症候群、梅毒など〕、あるいは外傷性のものが挙げられます。

解離性大動脈瘤の治療


解離性大動脈瘤の治療としては、以下のようなものがあります。
大動脈瘤に対する治療としては、内科的治療では治癒が望めないことから、外科的治療が原則となります。ですが、瘤径の小さな症例、高齢あるいは重篤な合併症のため手術適応外の症例には動脈瘤の拡大進展を遅延させる目的で降圧薬による内科的治療を行います。

降圧薬としては長時間作用型Ca拮抗薬(CCB)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)の併用療法にβ遮断薬の追加が望ましいです。高齢者では脳、冠、腎循環に注意しながら緩徐に降圧し、できれば130/80mmHg未満にコントロールします。腎機能低下があればラシックス10−20mgを追加します。

手術適応は無症状の症例では一般的に瘤径あるいは拡大速度によって決定します。瘤径に関しては胸部大動脈瘤6 cm(マルファン症候群5 cm)、腹部大動脈瘤5cm、拡大速度に関しては年約1 cm以上が手術適応の目安となります。

疼痛、周囲臓器の圧迫症状を呈する症例は破裂の危険性が高いことから適応となります。疼痛、動脈瘤の大きさ、拡大速度、喫煙、慢性肺疾患は動脈瘤破裂の危険性が高く、一方、高齢、全身状態、大動脈置換の部位、範囲、心、肺、腎不全の合併は手術成績に影響を及ぼす因子となります。

外科治療の目的は動脈瘤の破裂の予防であり、基本的な手術手技は動脈瘤切除、人工血管置換術などを行います。

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