些細なことや物事の手順にこだわり、それが狂うと強い不安や苛立ちに駆られ、モノが清潔か不潔かをくどいほど気にしたり…。こうしたことが原因で、日常生活において周囲との協調が難しくなってしまう強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)。女優ミーガン・フォックスも、これに苦しんでいることを雑誌で告白した。

昨年ミーガンは、『Wonderland』誌とのインタビューで「私は境界性パーソナリティ障害か統合失調症ではないかと思う」と語っていたが、『Allure』誌とのこの度の特集インタビューにおいても、自分のメンタル面の悩みをさらけ出した。

「朗らかな人間を目指したいと思ったこともあるわ。でも、どう努力してもユーモラスな人間になるのは無理だった。私はやっぱり一人が好き。人と会話しなくても寂しいと感じないの。」

「私、ひどいOCD(強迫性障害)なの。これはもう病気よ。食生活からトイレまで、それが清潔かどうかいちいち気にしてしまう。例えばトイレの水が流れる音、あれがダメなの。バイ菌が空気中に舞っていると感じてしまって…。」

「食器も気になって仕方がないわ。見知らぬ人達が口をつけてバイ菌がついた食器なんてゾッとする。でも私は自分では料理が出来ないわ。餓死すると言われてもムリ。いざとなれば1週間食べなくても平気よ。」
(ミーガン・フォックス、“強迫性障害OCD” をカミング・アウト。)

強迫性障害とは


強迫性障害は、強迫神経症とも言います。英語ではobsessive-compulsive disorderと表記し、頭文字で"OCD"などと略されます。

強迫性障害とは、常同的に繰り返し心に浮かぶ観念や表象である『強迫思考』、無意味なものと理解しながら繰り返し行わざるをえなくなる『強迫行為』を反復する状態を指します。この二つの症状が特徴的です。

『強迫観念』とは、不合理と自覚していながら意思に反して反復的・持続的に侵入し、強い不安や苦痛を引き起こす思考やイメージを指します。

自分が衝動的な行為をするのではないか、他者に害を与えたのではないかという加害観念や、自分や他人の唾液・排泄物・菌などが不潔に思える不潔恐怖などがあります。ミーガン・フォックスさんのケースでは、後者の症状がみられています。

また、これらの強迫観念に付随して起こる行為を『強迫行為』といい、そのほとんどは強迫観念を取り消したり防止したりする防御的儀式です。たとえば、不潔恐怖に対する洗浄強迫、鍵やガス栓をしめ忘れたのではないかという恐怖に対する確認強迫などがあります。

強迫思考も強迫行為も本人の意に反して出現します。また、苦痛で不快なものであり、不安を生じさせます。患者さんは、その状態から抜け出そうと抵抗しますが、ほとんど成功することがなく、日常生活に支障を来すようになってしまいます。

強迫性障害の治療


強迫性障害の治療としては、以下のようなものがあります。
治療としては、薬物療法と認知行動療法が有効といわれています。

薬物療法は、第1選択薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)です。SSRIが無効の場合、三環系抗うつ薬のクロミプラミンを用います。難治例に対しては,リスペリドン、オランザピン、クエチアピンなどの非定型抗精神病薬(少量−中等量)を、SSRIかクロミプラミンに追加して用いると有効な場合があります。

SSRIは、投与初期に消化器症状(悪心・嘔吐)を起こす可能性があります。しかし、その消化器症状は、制吐薬の併用で改善することが多く、制吐薬を併用しなくても一過性である可能性が高いです。また、SSRIは症状が改善したからといって急に中断すると、中断時出現症候群(めまい、悪心、しびれ、ジリジリ感など)が生じるため、漸減の必要があります。

認知行動療法としては、曝露反応妨害法が有効であるといわれています。曝露反応妨害法は、不安を引き起こす対象に患者を直面させ(フラディング:曝露)、その時に生じる不安を回避するための強迫行為を行わせない(反応妨害)という方法です。

症状の程度や、治療効果には個人差があり、一概には言えないと思われます。周囲の理解を得て、社会適応を目指す、といったことが望まれるのではないでしょうか。

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