ゼリア新薬工業は6月28日、同社が創製し、アステラス製薬と国内で共同開発を行っている機能性ディスペプシア(FD)治療薬Z−338(成分名=アコチアミド)について、国内で実施したフェーズ3試験の結果を発表した。今年秋ごろの承認申請を予定している。

ゼリア新薬によると、FDでは食後の膨満感や早期満腹感、上腹部の痛みなどの消化器症状を訴えるが、内視鏡で見ても病変が見られない。最近の調査では、日本の成人の4分の1に症状が見られるとの報告もある。FDの原因は解明されていないが、食物の胃から小腸への排出の遅延に関連していることが分かってきたという。

アコチアミドは、消化管運動に欠かせない神経伝達物質アセチルコリンを分解する酵素の働きを阻害し、食物の胃からの排出遅延を改善してFDの自覚症状に効果を示すという。

FD患者897人が参加したフェーズ3試験では、アコチアミド100mgを1日3回4週間投与する群とプラセボ群とに無作為に割り付けて比較した結果、▽投与後の被験者の印象▽3つの症状(食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感)の消失率―の2つの主要評価項目で、アコチアミド群はプラセボ群に対して統計学的に有意な改善を示したという。また、安全性について、副作用の発現率は両群で差が認められなかったという。

ゼリア新薬によると、FD患者を対象として有効性を証明して承認された医薬品はこれまでにない。承認取得後はゼリア新薬が製造し、アステラス製薬と同一製品名で共同販売する予定。
(機能性ディスペプシア治療薬を承認申請へ)

機能性ディスペプシアとは


機能性ディスペプシアfunctional dyspepsiaとは、消化性潰瘍や癌、逆流性食道炎などの器質的疾患は認めませんが、胃痛、胃部不快感、吐き気などの上部消化器症状を訴えるもので、以前はnon-ulcer dyspepsia(NUD)とよばれていました。日本では、欧米のFDにあたる病名としては、胃炎あるいは慢性胃炎という診断名などが用いられていたこともあります。

簡単に言ってしまえば、胃の組織に異常がないにも関わらず、胃もたれや胃痛などの症状を引き起こす疾患といえるでしょう。この疾患は、実に日本人の4人1人が患ったことがあると考えられ、比較的多いといえます。

ちなみに、欧米では胃炎とは「胃粘膜の組織学的炎症」と記載されていることが多く、その原因はHelicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)を中心とした感染、NSAIDsなどの薬剤、自己免疫、および粘膜の過剰反応によるとされています。診断には病理組織学的な検査、すなわち内視鏡検査とともに胃生検が必要となります。

機能性ディスペプシアの診断にはまず、器質的疾患の除外が第1となります。痛みの程度、発現時期、発熱や黒色便の有無、嚥下困難、体重減少、腹部腫瘤存在などは器質的疾患を疑わせる症状です。

理学的所見、尿や血液所見、腹部超音波検査、上部消化管内視鏡検査にて、腹部臓器の器質的疾患を除外します。

さらに、欧米のFDの診断基準としてはRome基準IIがあり、2006年新しいRome基準IIIがさらに発表されています。その基準とは、以下のようなものです。
項目1のうちの1つ以上と、項目2の両者を満たす。
・項目1
a. 煩わしい食後膨満感
b. 早期満腹感
c. 心窩部痛
d. 心窩部灼熱感
・項目2
上部消化管内視鏡検査にて症状を説明可能な器質的疾患がない。

以上が、半年以上前からあり、少なくとも最近3ヶ月に上記診断基準を満たす。

また、Rome ?では
・食事摂取により起こるdyspepsia症状―postprandial distress syndrome(PDS)
・心窩部痛を主とする―epigastric pain syndrome(EPS)


の2型に分類しており、さらにげっぷを主症状とする型(belching disorders)、悪心と嘔吐を主症状とする型(nausea and vomiting disorders)、さらに成人におけるrumination syndromeを独立させています。

治療としては、症状からみた病型分類が指標となります。潰瘍型は胃酸分泌の亢進が関与していることが多いので胃酸分泌抑制薬が、運動不全型は上部消化管の運動機能異常が関与していると考えられているので消化管運動機能調節薬が、非特異型は心因・精神的因子の関与が強いと考えられるので心身医学的治療や向精神薬を第1選択とするのが効果的な治療です。

運動機能調節薬としてはモサプリド、イトプリド、六君子湯で過去にシサプリドとの二重盲験比較試験が行われており、その有効性が明らかとなっています。モサプリドは最近、防御因子増強薬型との大規模比較試験が全国規模で行われ、イトプリドについても海外でRCTが行われ、有効性が示されています。

さらに、アコチアミドという新薬も登場したようです。機能性胃腸症で悩む人たちが、この薬で症状を緩和できれば、と望まれます。

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