「恐縮です!」のせりふでおなじみの芸能リポーター、梨元勝さんが6月、肺がんを患っていることを明らかにした。現在、抗がん剤での治療を続けている。長年、がんを告白した著名人を追ってきたが、「ついに自分に来た。これからは自分を取材する気持ちでがんと向き合いたい。気力も体力もあるし、きっと復活してみせますよ」と、病床でもなお精力的に取材を続けている。

4月の連休前から原因不明の空せきが止まらなくて、かかりつけ医のいる病院で検査入院をしたんです。そこで肺炎と診断されました。でも症状が消えない。そこで5月末に検査入院したら、右の肺に曇りが見つかりました。

ぼくは以前から虫垂炎や尿管結石などにかかり、入退院を繰り返してきました。心臓から血液を送り出すポンプとなる筋肉の力が弱く、「拡張型心筋症」という病を抱えていたこともあります。13年前、英国ダイアナ妃の取材時にその病にかかり、レントゲンを撮ったら、右の肺が炎症で曇っていました。その2年後にも今回と同じような症状が見られ、肺炎と診断されました。だから、また、肺炎だろうと思っていました。

でも違いました。右の肺の一部を採取し、調べた結果、6月5日に肺がんだと告げられたんです。肺全体が曇りがかっていました。全くたばこを吸わないのに、がんだなんて…。まさかと思いました。

妻は「がんイコール死」と思ったそうで、大変心配していました。でも、ぼくは高熱も出ていないし、周囲への転移も見られません。

がんの告知については、ひと昔前であれば、知らないままがよかったのかもしれません。かつて、俳優の石原裕次郎さんが亡くなったとき、兄の慎太郎さんが記者会見で「弟にはがんだと言うべきだった。その方が本人もがんばったかもしれない」と話していたことを思いだします。

でも、今では医療は進歩しているし、ぼくは告知されてよかった。思い切って治療しようと踏ん切りがつき、6月半ばからは2種類の抗がん剤を点滴で受けています。

ぼくはこれまで、難病のタレントや著名人を取材し、その生き方を伝えてきました。それが同じような病気と闘う家族の励みになればとリポートしてきました。だから、ぼくも自分で自分を取材し伝えるべきではないかと、迷わず思いました。ぼくは突撃リポーターですから…。

病院では携帯電話やパソコンを使い、治療する部屋から取材をすることを認めていただきました。ここから取材スタッフに指示を出したり、打ち合わせをしたり。スクープを狙っています。名付けて「闘病ITプロジェクト」。

せき込むことはあるけれど、がんと真正面から闘うことが自分を活性化することにつながります。一人娘もこれまでは「お父さんの芸能の仕事はしない」と言ってきましたが、今回ばかりは「私がやらなきゃ」と、福岡でのテレビのレギュラー番組に代打で出演したりと支えてくれています。大人になったんだなと思いました。

病床からツイッターで闘病の模様を伝えると、たくさんの応援メッセージも届きます。それに三十数年前に結婚した妻も毎日付き添ってくれて…。家族の絆(きずな)を改めて感じました。

今ではせき込むだけで目が覚めたりはします。でも、命が削られているという実感はありません。でも、まずは病気を完全に退治しないと…。

元東京都知事の青島幸男さんが亡くなる前、取材に「抗がん剤治療の副作用が大変で、のたうち回るほどだ」と言っていました。そこで、青島さんが「自分ががんで苦しんでいると思い詰めるより、がんが今、おれの中で苦しんでいるんだと考えたら、気分が変わった」と話していたのを思いだします。

ものは考えようです。人生はプラスに考え、しっかり治療に励んで皆さんの前に元気な姿を見せたいと思います。
(「まさか」突然の肺がん告知 プラス思考、取材する気で 梨元勝さん)


肺癌とは


肺癌とは、気管支および肺実質から発生した上皮性悪性腫瘍で、一般にその生物学的特徴から、小細胞癌と非小細胞癌に分けられます。非小細胞癌とは、主に腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌からなります。

肺癌は非小細胞癌(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌)が約85%、小細胞癌が15%を占めます。病因は喫煙による影響が最も強く、発症危険率は喫煙本数と比例するといわれています。喫煙指数(1日に吸う本数 × 年数)が800を超えると肺癌の危険が高くなるといわれています。

肺癌の場所による分類としては、区域気管支より中枢側に発生したものを中枢型、末梢側に発生したものを末梢型といいます。中枢型には扁平上皮癌と小細胞癌が目立ち、男性例が多く、喫煙との関連が高いです。一方、末梢型では腺癌が目立ち、女性が比較的多く、喫煙との関連は低いといわれています。

肺癌は多彩な症状を示します(早期では無症状のことが多く、進行期になると多彩な症状)が、肺門型(気管が肺に入る入口付近)の肺癌では咳・痰などの症状が出やすく、肺野型(肺門から離れたところにできた癌)では無症状・健診発見が多いと言われています。

咳、痰などの症状がある場合、まずは胸部レントゲン写真撮影を行います。次に、癌かどうか、あるいはどのタイプの肺癌かを調べるため、喀痰細胞診、穿刺吸引細胞診などによる細胞診、気管支鏡や経皮的肺生検(CTガイド下肺針生検)などを行って組織診を行います。

胸部CTでは、単純胸部X線で描出できない小結節、肺門、縦隔リンパ節転移、隣接臓器浸潤、胸膜播種、他臓器転移を明確に描出することができます。CT画像でみられる悪性病変の特徴は、胸部X線の場合と同様ですが、さらに鮮明な画像が得られます。肺野末梢型の孤立結節影の画像上の鑑別診断には、thin slice CTが有用です。

らせんCT(ヘリカルCT、スパイラルCT)は、CT寝台を移動しながら連続スキャンに画像を得る方法です。撮影時の設定により、肺野陰影の存在診断,陰影の質的診断などを目指した診断が可能となります。また、寝台を止めてスキャンした場合、CT断面の透視画像となり、生検などの場合に用いられます。

気管支ファイバースコピーは、咳、痰、血痰などの症状で肺癌が疑われる症状を有する場合、または胸部画像診断で肺癌が疑われる場合が対象となります。こうした場合、さらに生検が行われ、組織学的に検査が行われることもあります。また、経皮的肺生検(CTガイド下肺針生検)が病理学的な診断に用いられることもあります。ほかにも、ファイバースコピーあるいは透視下、CTガイド下針生検で診断のつかない場合、VATS生検や開胸生検を行い確定診断を得ることもあります。

血液検査や胸水検査で、腫瘍マーカーが測られることもあります。腫瘍マーカーとは、腫瘍細胞などが産生する物質で血液を中心とする体液、排泄物組織などに見い出され、腫瘍の存在、性状、進展度を示唆する蛋白質です。

肺癌では、CEA、NSE、Pro GRP、CYFRAなどが上昇する場合があります。通常、血漿または血清中の濃度を検討することが多いです。

ですが、いずれも特異性、感受性に問題があり、特定診断に用いることはできません。主として治療効果判定や再発の有無のチェックに用いることが多いです。

肺癌の治療


肺癌の治療としては、以下のようなものがあります。
肺癌の治療法としては、主に3種類のものがあります。外科療法、放射線療法、抗癌剤による化学療法です。治療法の選択は、癌組織型、進展度(staging)、performance status(一般全身状態)、肺肝腎などの主要臓器機能、合併症の有無、により左右されます。

小細胞肺癌は、早期に転移をみることが多く、放射線治療の観点から一照射野か否かの基準として、「限局型」(limited disease; LD)、「進展型」(extensive disease; ED)の分類が用いられることが多いです。化学療法と放射線療法が基本となります。

非小細胞癌の場合、I期〜IIIa期の一部が対象となりますが、化学療法の併用が必須とされ、通常3〜4コースの併用化学療法が行われます。手術成績は、I期での5年生存率60〜70%、II期30〜40%です。しかし、心臓や肺の機能障害がある場合は手術ができないこともあります。

放射線療法は、小細胞肺癌の場合、全身状態がよく、70歳以下で、限局型が対象であり、抗癌剤(シスプラチン CDDP+エトポシド VP-16など)との同時併用治療が行われます。放射線治療の総線量は50〜55Gyであり、成績として、中間生存期間が14〜18ヶ月、2年生存率30〜40%、5年以上生存率は15〜20%となっています。

非小細胞癌の場合、手術できないI期からIIIa期、胸水を認めないIIIb期が対象となります。肺癌の場合、通常は身体の外から患部である肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的に1日1回週5回照射し、5〜66週間の治療期間が必要です。最近では、1日2回週10回、あるいは1日3回週15〜21回照射する多分割照射も試みられています。

その他、化学療法も行われます。抗癌剤治療は、小細胞肺癌では有効であり、多くの場合癌は縮小し、消失することもあります。ですが、小細胞肺癌は早くみつかっても既にほかの臓器へ転移していることが多く、治療がよく効いた後も再発する場合も多いです。

非小細胞肺癌では、現時点では第IV期を対象とした抗癌剤併用療法成績からは、平均生存期間8〜10ヶ月、奏効率30%、1年生存率30〜40%の成績であり、どのような組み合わせをしてもほとんど差が認められない状態です。

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