【患者】31歳男性
【主訴】意識障害、カタトニア(緊張病;動作の途中で動きが止まるといった運動障害)
【現病歴】右上肢を挙上させ、呼びかけにも応答しないといった状態で、同居人に発見される。同居人に付き添われて英仁大学付属名峰病院に受診した。血圧低下なく、体温の異常などもみられなかった。上肢を他動的に動かすことは可能であり、挙上させるとその位置にて固持するような様子みられた。
【既往歴】特記すべきこと無し
【生活歴】喫煙、飲酒行わず。派遣社員として勤務
【入院時検査所見】
血液検査にて、特記すべき異常を指摘し得ず。頭部CTにても、明かな異常なし。

上記の状態を急性カタトニアと考え、その原因を統合失調症と後田医師は判断。ジアゼパム 10 mg を静脈注射行っています。その結果、症状の改善みられていました。ですが、天井の染みが巨大化して見えたり、駆血帯が蛇と見えたりと、幻視症状がみられていました。

以前にも幻視症状みられており、今回の症状を痙攣発作の一種と考え、ハロペリドールをデパケンに変更。また、薬物中毒を疑って尿検査施行したが、明かな陽性反応を示しておりませんでした。さらに経過を追うと、視力低下みられており、頸部リンパ節腫脹もみられていました。そこで、デパケンの副作用を疑って減量行っています。結果、症状改善みられており、退院となりました。

しかしながら、退院後も以下のような症状がみられていました。
退院後、朝から尿閉(尿が出ない)症状や下肢の脱力感などがみられており、背部痛も生じていました。そのため、血圧低下はみられていませんでしたが、胸部大動脈解離を疑って胸腹部CTを施行することになりました。

ですが、後藤医師の指示により、CT検査を中断。下肢の知覚低下(親指を上にしているか下にしているか分からなかった)認めていることから、急性横断性脊髄炎を疑い(大動脈解離であれば、脊髄前角の神経障害が起こりやすいが、知覚を司る後角の症状は出にくい)、脊髄MRIを施行することにしました。ですが、その途中で吐血、視力障害が認められました。MRIの検査では、脊髄に高信号域を認めました。

これらの症状から、デビック病(視神経脊髄炎)を疑っています。また、汎血球減少(赤血球、白血球、血小板が減少)を認め、血液像にて血球貪食症候群の所見を認めています。これらから、腫瘍、自己免疫疾患、感染症の存在を考え、ガリウムシンチを行っています。

病状の悪化進行しているため、検査結果を待たずにステロイドパルスを施行しています。そんななか、蚊に刺された左上肢が異常に発赤・腫脹認めたため、蚊アレルギーを考えています。また、「31歳で初キスした」という情報から、EBウィルスの成人になってからの感染が関与しているのではないか、と考えられました。

さらに、左上肢には皮疹(陥没したような)を認め、慢性的なEBウィルス感染症があり、そこにキスしたことでEBウィルスが再活性化されたと考えられました。慢性活動型のEBウィルス感染症では、難治性であり、悪性リンパ腫への進展も考えられ、化学療法による治療、そして骨髄移植による治療などを行う予定としていました。

【前回のストーリー】
GM〜踊れドクター 第2話「両側下肢痛をきたした24歳女性」

GM〜踊れドクター 第2話「鎌状赤血球症の患者」