歌手の大黒摩季が、オフィシャルファンクラブサイトで今年10月いっぱいでのアーティスト活動の休止を報告した。活動休止の理由は、1996年に発覚して以来「だましだまし付き合って来た」という子宮疾患の治療のため。

病状はかなり進行しているようで、集中した治療が必要になったという。重度の「子宮腺筋症」だけでなく、「左卵巣嚢腫=子宮内膜症性のチョコレート嚢腫」、「子宮内膜症」、「子宮筋腫」も併発し、「これらを軽減する為に一番の方法が妊娠でもあるので、度々体外受精も行ってきました」「ハードな仕事の中で流産を繰り返した」など苦しい胸の内を明かしている。

だが、文章にはところどころ顔文字が織り交ぜられ、「本人至って前向きですし、生きるの死ぬのの病気ではありません」「ちょっとしばらく語学留学に行ってきますくらいの“ひとまず活動休止”というつもりでおります」といった前向きなコメントを多数掲載。そして、「出来るだけ早く復帰するべく、ジタバタせず良い子で精進致しますので、活動再開する際にはより一層のご声援&オファー宜しくお願いします!」とファンに呼びかけた。
(大黒摩季が子宮疾患治療のため活動休止〜流産など苦しい経験も)



子宮腺筋症とは


子宮腺筋症とは、原因は不明ですが、子宮筋層内に子宮内膜腺が侵入したものです。

かつては、「子宮内膜症」を内性子宮内膜症と外性子宮内膜症に分けていましたが、両者を区別して、内性子宮内膜症の方を「子宮腺筋症」と名付けることになりました。

症状としては、子宮筋腫とほぼ同様です。過多月経・月経困難症が主な症状となり、これらについては症例によって訴えが異なっていることもあります。具体的には、月経時に鎮痛薬などを使用しなければならないかどうか、月経が10日以上長期間にわたって続くかどうか、凝血塊がおりるかどうかなどを、把握します。

過多月経があり、持続すると貧血が起こってきます。鉄欠乏性貧血が怒り、症例によってはHbが5〜6g/dlになっても気づかれないことがあります。高度な貧血が長期に続くことによって、心不全症状が出現することもあります。

また、下腹部腫瘤も生じてきます。診断は内診で腫大した子宮を触知することであり、検査として超音波断層、CT、MRIなどが有効となります。内診、画像診断などで子宮の腫大を認めれば子宮筋腫・子宮腺筋症を想定します。ただし、両疾患とも子宮内膜症の合併が多いです。

症状、年齢、挙児希望の有無などにより治療の必要性や治療法を判断します。一般的にはどちらも生命に危険を与えることはほとんどなく、閉経すれば自然に縮小することを念頭に治療方針を考えます。

症状が軽い場合は経過観察となります。過多月経の貧血や月経困難症などには、鉄剤や鎮痛薬で経過をみていきます。

ホルモン療法としては、Gn-RHアゴニストやダナゾールなどを用います。
Gn-RHアゴニストは、下垂体からのゴナドトロピン分泌を抑制し、エストロゲンを低下させ、腫瘤を縮小させます。また、長期の使用は骨量の低下を招くため6ヶ月が限度とされています。ダナゾールは、エストロゲン分泌を抑制し、さらに直接効果で腫瘤を縮小させます。

経口避妊薬、ピルも用いられることもあります。月経量や月経痛を軽減するため筋腫や腺筋症の症状を改善します。しかし、保険適用がないこと、また時に腫瘤が増大することに注意が必要です。

手術療法としては、子宮筋腫核出術が用いられます。正常子宮を残し、筋腫核のみを摘出する術式です。開腹術、腹腔鏡によるもの、子宮鏡によるものなどがあります。不妊症などには有効ですが、再発があるります。腺筋症には核出術は一般的ではないですが、腫瘤が子宮の一部に偏っている場合は可能なことがあります。

子宮全摘出は、根治療法です。開腹術、腟式手術、腹腔鏡下手術などの方法があります。

卵巣嚢腫とは


宇多田ヒカルさんも、2003年に「卵巣のう腫」で手術を受けたことを明らかにしています。

卵巣嚢腫とは、以下のような疾患です。
卵巣嚢腫とは、卵巣に発生する嚢胞性の良性腫瘍を総称したものです。病理組織学的には、漿液性嚢胞腺腫serous cystadenoma、粘液性嚢胞腺腫mucinous cystadenoma(ムチン性嚢胞腺腫)、成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢胞腫)が含まれます。臨床的には充実部分を欠き、嚢胞部分のみからなると考えられる卵巣腫瘤に対しても、一般的に用いられています。

漿液性嚢胞腺腫とは、水のようにサラサラとした液体(漿液)が貯留した嚢腫です。全卵巣腫瘍の約50%を漿液性腫瘍が占めており、そのうちの70%が良性の漿液性腺腫であるといわれています。単房性の嚢胞(1つ嚢胞がある状態)を形成します。腫瘍細胞は線毛をもつ、卵管上皮あるいは立方型の卵巣表層上皮に似ます。

粘液性嚢胞腺腫は、ネバネバした液体がたまる嚢腫です。多くの場合、表層上皮性間質性腫瘍に属する良性の粘液性腫瘍です。頸管腺型と腸上皮型の2型があります。

一般に、閉経期から高齢者に多くみられますが、若年者にも発生します。約5%の粘液性腫瘍では奇形腫成分が混在することがあり、そのような例では胚細胞由来が考えられます。多くの場合、多房性の嚢胞を形成するため、超音波診断や腹部CTなどの画像で診断が推定できるといわれています。

大黒さんのケースでは、チョコレート嚢胞(子宮内膜症性嚢胞)であったそうです。卵巣の子宮内膜症に起因する嚢胞で、類腫瘍性病変であるといわれています。

典型的には、子宮内膜腺上皮と上皮下に子宮内膜間質を認めます。直径15 cmほどの巨大な嚢胞を形成することもあります。内容は練りチョコレート様であり、「チョコレート嚢胞」という名前があります。褐色水様の場合もあります。

上皮が欠落していても間質に出現する血色素を貪食した組織球(pseudoxanthoma cell)の浸潤がみられることで診断がつきます。

卵巣チョコレート嚢胞の一部は悪性変化を遂げるといわれており、年齢40歳以上、嚢胞の長径4 cm以上の症例はハイリスクであり、手術による確定診断が望ましいといわれています。

ぜひともゆっくりと静養なさって、再び元気な姿をみせていただければ、と思われます。

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