読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
37才の知人の女性のことです。動悸や、いらいらする、気持ちが落ち込む等の症状がみられます。「若年性更年期」という言葉も聞くので、心配です。婦人科で更年期かどうかを調べた方が良いでしょうか(52歳男性)

この相談に対し、弘前大産婦人科教授である水沼英樹先生は以下のようにお答えになっています。
37歳という若さでも、卵巣機能の低下が起こっているなら、更年期女性に見られる症状が発生してもおかしくありません。

実際のところ子宮内膜症や子宮筋腫を持つ若年女性に対して、卵巣機能を抑える治療を行うと、しばしば顔面の紅潮、発汗、うつなど更年期症状に似た副作用が見られています。

従って、知人の女性が、卵巣機能の低下が始まっている場合には、更年期に似た症状が起こる可能性も否定はできませんが、月経周期がきちんと来ているならばその可能性は低いと思います。

この年齢で「更年期」などと言われること自体、新たな心配材料となりますので婦人科での診察よりも、まずは心療内科などで相談する方が効果的と思います。

更年期障害とは、更年期(閉経の前後約5年)に現れる多種多様の症候群で、器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とする症候群を指します。

症状としては、熱感、のぼせ、心悸亢進、発汗、不眠などを中心とした自律神経失調症状と、不安感、抑うつ、恐怖感、疲労感などの精神神経症状の2つに大別されます。

原因としては、性腺機能の変化が視床下部の神経活動に変化をもたらし、神経性・代謝性のさまざまな生体変化を引き起こすことによると考えられています。一方で、更年期では、心理的・社会的にも不安定な時期であるため、その発現には社会的・心因的要因も大いに関与するといわれています。

実は、更年期といえば、女性だけのものかと思われるかも知れませんが、男性にも更年期障害は存在します。男性更年期障害(PADAM:Partial Androgen Deficiency in Aging Male)と呼ばれます。

さらに、「若年性更年期」について水沼先生は以下のように書かれています。
ところで、最近メディアを中心に、「若年性更年期」という表現がよくされていますが、更年期とは閉経を挟む10年間の期間を示す用語なので、「若年性更年期」とはおかしい表現で、言うまでもなく医学辞書のどこを探しても存在しません。

一般に、40歳未満で閉経になった場合には「早発閉経」と呼ばれます。骨粗しょう症や脂質代謝異常(高脂血症)などの病気が起こりやすくなるので、医師によるきちんとした健康管理が必要になります。

早発閉経の多くが原因不明ですが、時に自己免疫疾患などが原因で発症する場合もありますので、早発閉経となった場合にはきちんと診察を受けてください。

なお、早発閉経の年齢ですが、以前は43歳未満と定義されていましたが、国際基準に合わせるべきであるとの判断で数年前から40歳未満に変更になりました。

閉経とは、更年期に至り卵巣の活動性が徐々に低下、やがて消失し、永久に月経が停止することを指します。その時期を閉経期といいます。閉経とは、卵巣機能の衰退過程の中で月経が閉止する現象で、12ヶ月以上の無月経を確認した時点で閉経と判定します。

早発閉経は、一般的に40歳未満で血中FSH値が40mIU/mL以上が持続し無月経となった状態を指します。卵巣実質がLH、FSHに反応しないゴナドトロピン抵抗性卵巣症候群と、家族性、免疫性、医原性、染色体異常などさまざまな原因で卵胞が枯渇、喪失するため無月経となる病態に分類できます。

若い年齢で生理的閉経と類似した病態が生じ、エストロゲン低下による自律神経失調症や骨粗鬆症の治療や予防が必要となります。月経異常を放置したりせず、しっかりと婦人科の医師に相談することが重要であると思われます。

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