くも膜下出血に倒れたのが今年4月のこと、医師も驚くほどの奇跡的な回復を見せ、あっという間にステージに復帰した「ポイズン」のブレット・マイケルズ(47)。だが、もうすぐ心臓の手術を受けるようだ。

仕事に復帰するも5月に再び入院、心臓に穴が確認されたマイケルズ。12月にガンズ・アンド・ローゼズとのツアーをやり遂げたら、来年1月に再び入院し、その手術が予定されているという。

彼の心臓の様子について担当医師は『E!News』の取材で、生まれつきのものである “卵円孔開存症” が認められると説明した。

これは、心臓の左心室と右心室の上部を仕切る隔膜にある穴が、普通であれば生後1か月以内に閉じるべきところを閉じないままの状態が生涯続くというもの。血液が心臓の右心室と左心室の間で流出入してしまうが、症状がない場合が殆どで、治療も特に必要ということではないそうだ。

「ブレットは動脈狭窄症の治療で5月から薬剤投与を受けており、生活習慣の改善にも頑張っています。“卵円孔開存症” が原因で彼が脳卒中を起こしたとは考えておりませんが、治療が可能なため手術してしまおうと判断しました。」
(くも膜下出血から生還のロック・シンガー、今度は心臓手術。)



卵円孔とは、胎生期に心房中隔にあって、胎盤循環を行う役割を持ちます。通常は、出生時に完全に閉鎖します。卵円窩はその痕跡です。

この閉鎖が完全には閉鎖しないで残った病態を「卵円孔開存症」といいます。卵円孔開存は胎生期の卵円孔が弁機構として残ったもので、成人の約25%にみられます。

左房圧はふつう右房圧より高いため、卵円孔は機能上は閉鎖した状態と変わらず臨床上問題はないですが、肺高血圧症、右心不全などで右房圧が上昇すると右から左への短絡を生じることがあります。

卵円孔開存は、成人では短絡を生じないといった特徴もあり、心房中隔欠損症とは分けて考えられています。

さらに、卵円孔と脳梗塞との関係性については以下のようなものがあります。
脳梗塞、特に「脳塞栓症」とは心臓や脳主幹動脈、右左シャント(右心房と左心房が交通しているような病態)による奇異性塞栓症など、あらゆる塞栓源に由来する塞栓によって脳虚血が起こり、形成される梗塞をいいます。

奇異性塞栓症とは、静脈血栓が塞栓源となり、右左シャント(卵円孔開存、心室中隔欠損など)を介して脳梗塞を起こすものです。すなわち、静脈内の塞栓が心臓の卵円孔や中隔欠損部を通って動脈系へ入り、脳梗塞を起こすというものです。

この奇異性塞栓症は、若年者の突発発症の脳梗塞の重要な原因として注目されています。通常、四肢や骨盤などの部位の静脈血栓や肺梗塞を合併しています。

もちろん、ブレット・マイケルズさんの脳梗塞がすなわちこの奇異性塞栓症によるものだとは断定できませんが、その可能性は否定できないとも思われます。今回、その卵円孔を塞ぐための手術を受けられるようです。

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