北米ツアー中のロックバンド、X JAPANのリーダー・YOSHIKIが甲状腺機能亢進症を患っていることが7日わかった。昨年7月の頸椎椎間板孔切除手術前の診断で判明したが、「心配をかけたくない」との意向によりスタッフにもこれまで公表を控えていた。

甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になり「一般の人に比べ非常に疲れやすい体質」(主治医)で、このほど滞在先のホテルで気を失って倒れていたところを発見され病気が判明。「一時は甲状腺がんの可能性も示唆された」(同)といい、今のところはその心配はないものの引き続き精査と治療を要する。活動は休止せず、現地時間10日に予定どおりツアー最終公演をニューヨークで行う。

持病の椎間板ヘルニアが悪化し、骨の変形により神経を圧迫する頸椎椎間孔狭窄症と診断され、昨年7月27日に米カリフォルニアで外科手術を受けたYOSHIKIだが、その術前診察で甲状腺肥大と甲状腺機能亢進症も見つかっていた。

重篤になると頻脈などの心循環器の症状や代謝亢進、不眠、麻痺などの神経症状、意識障害を伴う可能性があり、YOSHIKIはレコーディングやコンサートの合間をぬって治療や検査を続けてきた。甲状腺の病気の一つであるバセドウ病と診断された歌手の絢香も昨年末をもって活動を休止し、現在は治療に専念している。
(YOSHIKIが甲状腺疾患を公表 一時は甲状腺がんの疑いも)

甲状腺機能亢進症とは


甲状腺機能亢進症は、狭義では「甲状腺の機能が亢進している状態」を指し、単に血中の甲状腺ホルモンが増加している甲状腺中毒症と区別されます。しかしながら、両者はしばしば同義語として使用され、臨床症状は共通点が多いです。

血中甲状腺ホルモンが増加する原因として、
1) 原発性甲状腺機能亢進症(バセドウ病、機能性甲状腺腺腫など)
2) 破壊性甲状腺中毒症(亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎など)
3) 中枢性甲状腺機能亢進症(TSH産生腫瘍など)
4) 甲状腺ホルモン剤の過量摂取
などがあります。この中で頻度の最も多いものはバセドウ病であり、次いで破壊性甲状腺中毒症です。住民検診などで見つかる甲状腺機能亢進症は、1,000人に対し 1〜6人と報告されています。同様に、外来を受診する一般患者のうち、甲状腺中毒症を有する人は約0.5 %程度存在します。

診断は臨床症状(動悸・頻脈、多汗、手指振戦、体重減少、易疲労感、甲状腺腫)と血中甲状腺ホルモンの上昇(fT4、fT3)が基本となります。

中枢性甲状腺機能亢進症以外では、血中TSHは低下しています。中枢性甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモン上昇にもかかわらず血中TSHは低下していません。バセドウ病では眼球突出などの眼症状合併が参考になります。

バセドウ病の診断基準では、
臨床所見:
i )びまん性甲状腺腫大
ii )眼球突出または特有の眼症状
iii)頻脈、体重減少、四肢振戦などの甲状腺中毒症所見
これらの1つ以上に加え、下記の検査所見を満たす。
検査所見:
i )遊離T4(fT4)高値
ii )TSH低値(0.1μU/ml以下)
iii)抗TSH受容体抗体(TRAb、TBII)陽性または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性

となっています。

甲状腺機能亢進症の治療


甲状腺機能亢進症の治療としては、以下のようなものがあります。
甲状腺中毒症の原因がバセドウ病によるものか、破壊性甲状腺中毒症によるものか不明の場合、診断が決定するまで必要に応じてβ受容体遮断薬投与にて経過観察します。

動悸や易疲労感が強い時は安静を心掛け、運動や過度の仕事は控えるのが原則となります。

バセドウ病の甲状腺機能亢進症に対する治療としては、
・抗甲状腺薬による内科的治療
・放射性ヨード治療
・外科的療法

これら3つがあります。日本では、内科的治療が第1選択として施行されることが圧倒的に多く、次いで放射性ヨード治療、外科的療法の順となっています。放射性ヨード治療や外科的療法を行う際でも甲状腺クリーゼを回避するため、抗甲状腺薬にて甲状腺機能をコントロールしておくことが原則です。したがって、抗甲状腺薬が初期の第1選択となります。

抗甲状腺薬(ATD)には、チアマゾール(メルカゾール)とプロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)があります。ともに、甲状腺内でのヨードの酸化・有機化の抑制などによって、甲状腺ホルモンの合成を低下させることが主作用です。

チアマゾールの利点は、効力がプロピルチオウラシルに比べて強くなっています。プロピルチオウラシルの利点としては、乳汁への分泌が低いことと末梢でのT4からT3への変換を抑制することが挙げられます。妊婦や授乳婦ではプロピルチオウラシルを第1選択としています。

放射性ヨード療法は、中高年者で、抗甲状腺薬で顆粒球減少症などの副作用があったり、寛解しない例や手術後の再発例が対象となります。晩発性甲状腺機能低下症は副作用というよりも不可避な結果と考えられます。

手術療法では、甲状腺亜全摘術などが施行されます。内科的治療で寛解しないもしくはコントロール不良な若年者、抗甲状腺薬の副作用例,腫瘍の合併、短期間に治療希望、甲状腺腫が非常に大きい場合などで行われます。

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