日本を代表する女優、高峰秀子さんが12月28日午前5時28分、肺がんのため東京・渋谷区の病院で死去していたことが同31日、分かった。86歳だった。1954年に公開された主演映画「二十四の瞳」で人気を確立、主演映画と同じタイトルの主題歌「銀座カンカン娘」を歌って大ヒットしたことも。生後すぐに実母と死別するなど苦労を重ねたが、映画監督の松山善三さん(85)と結婚後は、エッセイストとしても活躍。言いたいことをズバズバ言う庶民派でもあった。

「デコちゃん」と呼ばれて親しまれた高峰さん。10月下旬に体調を崩して入院し、肺がんと診断されて治療を続けていたが、12月28日に容体が急変、帰らぬ人となった。同29日に近親者で葬儀・告別式を済ませた喪主の松山さんは同31日、「私自身、心身ともに皆さまにお目にかかることのできる状況ではございません」と文書で悲痛な思いを発表した。

肺癌とは


肺癌とは、肺や気管支などから発生した悪性腫瘍を指します。一般に、その特徴から、「小細胞癌」と「非小細胞癌」に分けられます。「非小細胞癌」には、主に腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌が含まれます。肺癌は非小細胞癌(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌)が約85%、小細胞癌が15%を占めます。

病因は喫煙による影響が最も強く、発症危険率は喫煙本数と比例するといわれています。喫煙指数(1日に吸う本数 × 年数)が800を超えると肺癌の危険が高くなるといわれています。ただ、非喫煙者の方でも肺癌になる可能性はあります。特に、非喫煙者の方でも肺腺癌になることはあります。

肺癌の場所による分類としては、区域気管支より中枢側に発生したものを中枢型、末梢側に発生したものを末梢型といいます。

中枢型には扁平上皮癌と小細胞癌が目立ち、男性例が多く、喫煙との関連が高いです。一方、末梢型では腺癌が目立ち、女性が比較的多く、喫煙との関連は低いといわれています。

小細胞癌は、原発性肺癌の15%を占め、きわめて悪性度が高く、発見時にすでに遠隔臓器への転移や肺門縦隔リンパ節転移をみることが多いといわれています。

小細胞肺癌は、重喫煙者で男性に多いです。多くは肺門型(縦隔のある中心部付近に発生しやすいです。ちなみに肺門とは、左右の肺の内側面中央にある部分で、第5から第7胸椎の高さに相当する)で、区域枝から亜区域枝の上皮の基底膜近辺に発生し、気管支粘膜下を長軸方向に浸潤増殖するという特徴があります。

非小細胞肺癌の腺癌は、肺癌全体の約40%を占め、最も頻度の高い組織型です。女性肺癌の80%は腺癌であり、非喫煙者が多いです。ほとんどの症例で気管支肺胞系の末梢に発生し、孤立結節型の増殖を示し、画像上、結節影を形成します。

肺癌の症状としては、他の癌腫と同様に早期では無症状のことが多く、進行期になると多彩な症状を呈することになります。

全国肺癌登録4,931例の分析によると、症状としては咳がもっとも多く、49.3%となっています。その他、痰(23.7%)、血痰(19.0%)、胸痛(15.8%)、呼吸困難(6.3%)、やせ(5.8%)、発熱(4.8%)、嗄声(4.0%)の順で症状がみられますが、無症状の方も17.5%いらっしゃいます。

肺門型(気管が肺に入る入口付近)の肺癌では咳・痰などの症状が出やすく、肺野型(肺門から離れたところにできた癌)では無症状・健診発見が多いと言われています。

小細胞肺癌のように肺門型であると、咳、痰が早期からみられ、血痰も早期にみられることがあります。また、進展するにつれ喘鳴、呼吸困難をみることがあります。区域あるいは肺葉性の閉塞性肺炎を起こすこともあり、発熱、せき、痰などの肺炎症状を呈することもあります。

胸郭内隣接臓器への浸潤、転移によるものとしては、胸痛や胸水貯留(原発巣の胸膜直接浸潤、癌性リンパ管症による胸膜リンパ流のうっ滞)、Horner症候群(交感神経圧迫による顔面の発汗、瞼の下垂、神経損傷のある側の瞳孔縮小などがみられる)、患側上肢や胸部の激痛、運動麻痺(Pancoast腫瘍)、横隔膜麻痺、不整脈、心タンポナーデ、上大静脈症候群(頭頸部や上肢の浮腫、表在静脈の拡張が起こる。上大静脈への浸潤による)などが起こります。

肺癌の治療


肺癌の治療としては、以下のようなものがあります。
肺癌の治療法としては、主に3種類のものがあります。外科療法、放射線療法、抗癌剤による化学療法です。治療法の選択は、癌組織型、進展度(staging)、performance status(一般全身状態)、肺肝腎などの主要臓器機能、合併症の有無、により左右されます。

小細胞肺癌は、早期に転移をみることが多く、放射線治療の観点から一照射野か否かの基準として、「限局型」(limited disease; LD)、「進展型」(extensive disease; ED)の分類が用いられることが多いです。化学療法と放射線療法が基本となります。

小細胞肺癌の場合、多くの場合癌は縮小し、消失することもあります。しかし、小細胞肺癌は早くみつかっても既にほかの臓器へ転移していることが多く、治療がよく効いた後も再発する場合も多いです。

抗癌剤には、現在、エトポシド、シスプラチン、カルボプラチン、塩酸イリノテカン、アムルビシンなどの薬剤が主に使われており、シスプラチン/カルボプラチン+エトポシド、シスプラチン+トポテシンなどの組み合わせもしくはアムルビシン(カルセド)単剤などで用いられます。

非小細胞肺癌の場合、通常はI期からIIIA期の一部が手術の対象となります(N2 症例に対する手術単独の治療成績は不良であり、集学的治療の対象)。IIIB期症例に対しては、プラチナ製剤を含む化学療法と胸部放射線治療の併用療法が標準であり、IV期は化学療法などが用いられます(ただし、治療意義は生存期間の延長と癌に伴う症状の緩和)。

悪性胸水の貯留や心臓への浸潤が認められれば、stage IVと考えられます。非小細胞癌、特に肺腺癌であれば、まずはカルボプラチン(CBDCA)もしくはシスプラチン(CDDP)と、パクリタキセル(PTX)といった組み合わせや、カルボプラチン(CBDCA)もしくはシスプラチン(CDDP)とアリムタ(Alimta)などの組み合わせがfirst lineとなると考えられます。

最近では、カルボプラチン(CBDCA)もしくはシスプラチン(CDDP)とアリムタ(Alimta)などの組み合わせに、アバスチン(Avastin)などを加えて治療を行ったりもします。

さらに、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬である経口薬、ゲフィチニブ(イレッサ)やエルロチニブ(タルセバ)が用いられるケースもあります。これらの薬剤は、EGFRの変異がある場合は最初から用いられたりします。特に女性、非喫煙者、東洋人で効きやすいと言われています。

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