元フジテレビゼネラルプロデューサーの横澤彪(よこざわ・たけし)さんが8日死去したことが分かった。73歳だった。

昭和50年代、お笑い番組「THE MANZAI」で、漫才のツービート(ビートたけしさん、ビートきよしさん)や島田紳助さんらを見いだし、お笑いブームを巻き起こした。

その後、スタッフが番組に登場するなど、それまでのバラエティー番組の常識を覆す「オレたちひょうきん族」をヒットさせ、フジテレビの昼の看板番組で28年間続く「笑っていいとも!」など長寿番組の基礎を築いた。

番組制作を通じ、明石家さんまさん、タモリさんら多くの人気タレントを育て、その後のバラエティー番組制作に大きな影響を与えた。

平成7年にフジテレビを退社。人気タレントが多数所属する吉本興業(大阪)に入社、東京本社代表などを歴任し同社の東京進出に貢献した。その後、鎌倉女子大教授などを務め、最近はフリーで執筆活動などをしていた。

平成17年には悪性リンパ腫が判明。入退院を繰り返しながらも精力的に仕事を続けていた。
(元フジテレビゼネラルプロデューサー 横澤彪氏死去)

悪性リンパ腫とは


悪性リンパ腫は、リンパ節や全身のリンパ組織(胸腺、脾臓、扁桃腺、リンパ管など)に存在する、リンパ球系細胞の悪性腫瘍です(腫瘍の起源や、腫瘍化の過程も単一ではありません)。

若年者にもみられますが、30歳以上では年齢とともに増加します。男女比は2:1で男性に多いです。日本の悪性リンパ腫の発生率は10万人当たり約5人であり、欧米の約12人に比べて低いです(この理由としては、節性リンパ腫であるHodgkin病と濾胞性リンパ腫の発生率が低いためです。節外性リンパ腫の占める割合が相対的に高くなっています)。

病理組織学的所見から、Hodgkin(ホジキン)病と非Hodgkinリンパ腫(NHL)とに大別されます。

ホジキン病は、リード-ステルンベルグ(Reed-Sternberg)細胞の出現する特徴のあるリンパ腫です(ただ、その起源はまだ分かってません)。背景の多彩な細胞を病理組織学的特徴とするリンパ系腫瘍で、悪性リンパ腫全体の5〜10%を占めます。

好発年齢は若年者と中・高年者の2相性です。WHO分類では、結節性リンパ球優勢型と古典型に大別され、後者はさらに結節硬化型、混合細胞型、リンパ球豊富型、リンパ球減少型に分類されます。結節硬化型の頻度が最も高いです。ホジキンリンパ腫は頸部に発生することが多く、連続性に進展し、しばしば縦隔に巨大腫瘍をきたします。

非ホジキンリンパ腫の大多数は、Bリンパ球あるいはTリンパ球の腫瘍であることが判明しています。そこで、非ホジキンリンパ腫は、形態学的特徴(病理学的分類)、細胞系質的特徴(B細胞性、T細胞性、NK細胞性)、染色体・遺伝子情報などをもとに分類されます。また、発症してからの病気の進行速度によっても分けることができます(年単位で進行する低悪性度、月単位で進行する中悪性度、週単位で進行する高悪性度など)。

一般的に低悪性度のものには、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫などが該当し、中悪性度のものにはびまん性大細胞性B細胞性リンパ腫や未分化大細胞リンパ腫など、高悪性度のものにはリンパ芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫などが該当します。

このように、「悪性リンパ腫」という病名は、さまざまなリンパ系組織の悪性腫瘍を大きくまとめて呼んでいます。それぞれ性質が異なるため、最適な治療を選択する上では、「悪性リンパ腫の中のどのようなタイプなのか」ということが非常に重要になってきます。

症状としては、首、腋の下、足のつけ根などのリンパ節の多い部位に無痛性のリンパ節腫脹がみられます(無痛性のリンパ節腫脹を初発症状として医師のもとを訪れることが多い)。Hodgkin病のリンパ節腫脹は、頸部、腋窩、鼠径部の順に多いです。非Hodgkinリンパ腫では、これらの表在リンパ節以外にも、眼瞼、鼻腔、扁桃、皮膚、甲状腺、乳房、睾丸、皮下軟部組織などに腫瘤をつくることがあります。

発熱、盗汗(ひどい寝汗)、体重減少がみられることがあり、この3つは病期分類でB症状と呼ばれ、重要視されています。全身掻痒感などがみられることもあります。場合によっては、腫瘍による圧迫や浸潤による症状、部位により浮腫、嚥下障害、呼吸困難、食欲不振などがみられることもあります。

診断には、リンパ節(もしくは節外病変)の生検が必須です(穿刺細胞診は有用でない)。こうした病理組織像に加え、フローサイトメトリー法や免疫組織染色による細胞表面形質解析や染色体分析も行い、遺伝子検査を行うこともあります。

身体診察としては、全身のリンパ節の触診が行われます。腫大したリンパ節は無痛性で、弾性硬(いわゆるゴム様)であり、表面平滑な状態です。通常、癒着はなく可動性がありますが、腫瘍細胞がリンパ節の被膜を越えると周囲と癒着します。また、急速に増大する場合は、被膜の伸展痛を生じることがあります。

ほかにも、悪性リンパ腫の広がりをみるため、Waldeyer輪(喉の奥に扁桃腺が輪状に並んでいる部分)の視診、呼吸音の聴診、肝脾腫、腹部腫瘤、胸・腹水の有無などをみたり、神経学的異常、たとえばHorner(ホルネル)症候群、脳神経や脊髄の障害、髄膜浸潤の所見などの有無を調べることも重要です。

血液検査では、特異的な所見はないです。ただ、ホジキン病では、リンパ球減少や好酸球増加がみられることがあります。非ホジキンリンパ腫で白血化すれば、リンパ腫細胞が認められます。血清可溶性インターロイキン2レセプター(sIL-2R)濃度やLDH値、症例によってはCRPが病勢を反映するといわれています。

病期(ステージ)分類は、身体診察やX線検査、エコー検査、CT検査、骨髄穿刺(生検)に加え、必要に応じてガリウムシンチグラフィー、髄液検査などの所見をもとに決定します。ステージは以下の通りです。
・I期 :単一リンパ節領域または限局した単一節外病変
・II期 :横隔膜の片側のみに病変
・III期:横隔膜の上下に及ぶ病変
・IV期 :リンパ組織以外の臓器にびまん性侵襲がある
B症状があればBを、なければAを付記します。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、上記のステージにより、治療方針が決定されます。標準的な治療法の選択肢としては、

1)放射線療法
3)化学療法(抗がん剤)
3)生物学的製剤:抗CD20抗体(成熟B細胞の性格を示す悪性リンパ腫に効果的)
4)経過観察
5)造血幹細胞移植:自家移植、同種移植
などがあります。標準療法としては、化学療法や放射線療法が中心です。

ホジキン病の化学療法は4剤併用のABVD(アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)療法が用いられます。

非ホジキンリンパ腫では、低悪性度B細胞リンパ腫の場合、限局期であればは30〜40グレイの局所放射線療法を選択します。胃のMALTリンパ腫であれば、Helicobacter pylori除菌療法が第1選択となります。ですが、染色体転座t(11;18)(q22;q22)をもつ例は除菌療法抵抗性であるため、生検時に確認する必要があります。眼付属器のMALTリンパ腫では、放射線療法を選択するか、無治療で経過観察し増悪傾向がみられたら治療します。

進行期の場合、CHOP(シクロホスファミド,アドリアマイシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)療法が標準となっています。

CHOP療法では、吐き気や嘔吐、不眠、便秘、口渇、口内炎、動悸、手足のしびれなどの副作用に注意する必要があります。治療当日は尿が赤くなることがあります。

また、最近ではCD20陽性の成熟B細胞の性格を示す悪性リンパ腫には、生物学的製剤であるリツキサンが用いられることもあります(海外では再発・難治性の低悪性度群リンパ腫に効果が認められている)。CHOP療法とともに行われ、R-CHOP療法などといわれます。

リツキサンは、1本の薬価が最高で約25万円(保険適用前)と非常に高価な薬剤でありますが、進行期濾胞性リンパ腫では、CHOP療法とRituximab(リツキサンのことで、マウス-ヒトキメラ型抗CD20モノクローナル抗体)の併用療法が標準療法となる可能性もあります。

リツキサンでは、infusion reactionとよばれる合併症に注意する必要があります。発熱、寒気、頭痛、ふらつき、息苦しいなどの症状を自覚したときは直ちに知らせる必要があります。特に初回投与時や注入速度を上げた直後から30分以内に出現しやすいです。

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