78歳のエリザベス・テイラーが、うっ血性心不全のため今週初めに入院していたことが明らかになった。

スポークスマンによると、症状は現在も続いており、病院で治療を受け、経過を見るために入院を続けているとのこと。エリザベスは2009年10月に同じ症状を治療するために心臓手術を受けている。病気がちな彼女は脳腫瘍の手術の後に脳梗塞を起こしたことがあるほか、皮膚がん、肺炎などでも入院。過去25年間で100回以上病院を訪れているという。

現在も脊柱側わん症を患っており、慢性的な首の痛みに耐え、車椅子生活を送っているが、病院で過ごす日々が多すぎるため、今後は一切の手術を拒否していると報じられている。

エリザベスの家族はファンに感謝しながらも、健康な状態に戻れるよう、プライバシーを尊重してほしいとのコメントをだしている。
(78歳のエリザベス・テイラー、うっ血性心不全で入院 一切の手術を拒否)

うっ血性心不全とは


心臓は、ポンプとして臓器、組織が必要とする血液を送り出しています。心臓のポンプとしての機能が低下すると、臓器、組織の機能を維持するのに十分な血液量を送ることができなくなり、易疲労感、運動耐容能低下など、組織灌流不全に基づく症状・徴候が出現してきます。

心不全とは、この心臓のポンプ機能の失調により、臓器が必要とする心拍出量が得られず、こうした臓器低灌流(血液が上手く行き渡らない)と、うっ血のために引き起こされる臨床症候群、と定義できます。

心不全の原因となるのは、頻度の高いのは虚血性心疾患、弁膜疾患、高血圧性心疾患、心筋疾患の順に多いです。誘因としては感染、心房細動などの不整脈、水分・塩分の過剰摂取、治療薬の中断などが重要となります。

うっ血性心不全はさまざまなこうした病因による心疾患の終末像であり、状態像です。心不全状態になると患者さんの日常生活が損なわれ、生命予後が短縮することになってしまいます。

収縮不全は心臓の収縮機能の低下や、後負荷の不整合(左室が血液を送り出す際の負担を後負荷といいます。これは末梢血管抵抗に相当し、後負荷不整合とは、急速な後負荷の増大によって左室の機能が追従できず、左心機能が一時的に低下している状態を指します)により生じ、拡張不全は左心室の等容拡張期における弛緩能または拡張期伸展性の低下によって(要は、心臓が広がりにくくなります)生じます。

うっ血性心不全の治療


うっ血性心不全の治療としては、以下のようなものがあります。
American Heart Association(AHA)の分類(stageA、B、C、D)によると、重症度によって治療法が分類されています。

将来心不全を発症する背景要因を抱えている段階であるstage A(高血圧症、動脈硬化性疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどを呈するも心不全はない)では、それぞれの要因をコントロールすることが重要となります。

塩分やアルコールの過剰摂取を含むや睡眠・休養時間を含めた生活習慣の改善、禁煙、適度な運動などが求められます。さらに、コントロール不十分であれば、高血圧症、高脂血症、糖尿病などそれぞれの疾患に対する薬物療法を開始します。

心不全を惹起しうる構造的心臓疾患(心筋梗塞の既往、左室肥大、無症候性の弁膜疾患など)、駆出率低下などはあるが心不全の症状は出現していないstage Bでは、stage Aでの治療に加えて、ACE阻害薬またはARB、およびβ遮断薬を使用することを考えます。

ACE阻害薬またはARBといった基礎薬を使用したうえでβ遮断薬(カルベジロール[アーチスト])が追加されることが多いですが、低血圧の場合はβ遮断薬の追加が難しいこともあります。

構造的心臓疾患をすでに有し、心不全の既往または現在心不全症状が存在するstage Cでは、stage A、Bのすべての治療に加えて、禁忌でなければ、ACE阻害薬またはARB、およびβ遮断薬を用います。

浮腫があれば利尿薬(ラシックス、ダイアート)を用い、使用量に注意を払いながら継続投与とします。心不全症状があり、頻脈、特に心房細動の合併があればジゴキシンを使用したりします。心筋保護を目的に抗アルドステロン薬(アルダクトンA)、心機能低下が高度であれば、Ca拮抗薬(アムロジン)を追加します。

内科的治療に不応性で、特殊なインターベンション(補助循環など)も必要となる難治性心不全であるstage Dでは、stage A〜Cのすべての治療が行われます。利尿薬、ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬、ジギタリスなどの投与に加えて、すべてのARBではないがブロプレスの追加でさらなる有効性が示されています。

利尿薬は作用の異なる薬剤、例えばループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬の同時投与やラシックス静注、さらには、重症であれば強心薬の経静脈投与とともにラシックス点滴静注を試みます。

心不全症状(NYHA III-IV相当)があり、内服による治療に抵抗性の場合は、ハンプを含めた一時的な経静脈的血管拡張療法も可能です(ですが、慢性心不全の予後にどのような効果があるかについてはなお不明)。

また、強心薬は長期使用すると心筋傷害を増大し予後を悪化させる可能性がありますが、stage Dではやむを得ない対症療法と考えられます。

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