肺がん治療薬「イレッサ」をめぐり、輸入販売元の「アストラゼネカ」(大阪市)に賠償を命じた25日の大阪地裁判決を受け、ア社側の代理人弁護士も記者会見を開き、「判決通りにすれば、警告だらけになってしまう。情報提供が不十分という判決は納得できない」と話した。
ア社が作成したイレッサの初版添付文書では、間質性肺炎の副作用を2ページ目の4番目に記載していた。判決では「少なくとも1番目と、冒頭の警告欄に記載すべきだった」として、改訂するまでの文書を「欠陥」と指摘した。
これに対し、ア社代理人の池田裕彦弁護士は「記載順序を厳密に特定しないといけないとすれば、今までよりたくさんの治験が必要になる」と批判。有用な薬が日本だけ使えない「ドラッグ・ラグ」がますます拡大する、とした。
ただ、医薬品としてのイレッサについては、この日の判決で「特定の遺伝子変異患者への効果は、従来の抗がん剤を大きく上回る」と評価されており、池田弁護士は「有用性を司法が確認したのは妥当。今でも年間9千人が服用して恩恵を受けている」と述べた。
判決を受け、ア社は「イレッサ発売時および発売後を通して、医師に対し適時・適切に情報提供を行ってきた。早急に判決内容を精査し、対応を決定する」とコメントした。
(イレッサ判決「ドラッグ・ラグ拡大する」販売元側も不満)
イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)は、抗癌剤の一種です。一般的な抗癌剤とは異なり、癌の増殖などに関係する特定の分子を狙い撃ちする分子標的治療薬です。作用としては、上皮成長因子受容体 (EGFR) のチロシンキナーゼを選択的に阻害します。
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)とは、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (EGF) を認識し、シグナル伝達を行う受容体です。このEGFRに遺伝子増幅や遺伝子変異、構造変化が起きると、発癌、および癌の増殖、浸潤、転移などに関与するようになります。この作用を抑えることで、イレッサは癌を抑える作用を持っているとされているわけです。
適応となるのは、手術不能のステージ(病期)が進んだ症例や、再発した非小細胞肺癌に対する治療薬として用いられます。ただ、すべての非小細胞肺癌に有効性が認められているわけではなく、遺伝子変異を認めるEGFRが強く発現している症例に特に有効性が認められており、副作用も考慮してその適用は慎重に配慮すべきと考えられます。
さらに、以下のようなことが言えると思われます。
ア社が作成したイレッサの初版添付文書では、間質性肺炎の副作用を2ページ目の4番目に記載していた。判決では「少なくとも1番目と、冒頭の警告欄に記載すべきだった」として、改訂するまでの文書を「欠陥」と指摘した。
これに対し、ア社代理人の池田裕彦弁護士は「記載順序を厳密に特定しないといけないとすれば、今までよりたくさんの治験が必要になる」と批判。有用な薬が日本だけ使えない「ドラッグ・ラグ」がますます拡大する、とした。
ただ、医薬品としてのイレッサについては、この日の判決で「特定の遺伝子変異患者への効果は、従来の抗がん剤を大きく上回る」と評価されており、池田弁護士は「有用性を司法が確認したのは妥当。今でも年間9千人が服用して恩恵を受けている」と述べた。
判決を受け、ア社は「イレッサ発売時および発売後を通して、医師に対し適時・適切に情報提供を行ってきた。早急に判決内容を精査し、対応を決定する」とコメントした。
(イレッサ判決「ドラッグ・ラグ拡大する」販売元側も不満)
イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)は、抗癌剤の一種です。一般的な抗癌剤とは異なり、癌の増殖などに関係する特定の分子を狙い撃ちする分子標的治療薬です。作用としては、上皮成長因子受容体 (EGFR) のチロシンキナーゼを選択的に阻害します。
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)とは、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (EGF) を認識し、シグナル伝達を行う受容体です。このEGFRに遺伝子増幅や遺伝子変異、構造変化が起きると、発癌、および癌の増殖、浸潤、転移などに関与するようになります。この作用を抑えることで、イレッサは癌を抑える作用を持っているとされているわけです。
適応となるのは、手術不能のステージ(病期)が進んだ症例や、再発した非小細胞肺癌に対する治療薬として用いられます。ただ、すべての非小細胞肺癌に有効性が認められているわけではなく、遺伝子変異を認めるEGFRが強く発現している症例に特に有効性が認められており、副作用も考慮してその適用は慎重に配慮すべきと考えられます。
さらに、以下のようなことが言えると思われます。
1) 東洋人、2) 女性、3) 非喫煙者、4) 腺癌ではゲフィチニブが腫瘍縮小効果を示す割合が高く、これはEGFR遺伝子変異が関係している可能性が指摘されています。特に、EGFR遺伝子変異をもつ非小細胞肺癌に対しては特にゲフィチニブは奏功し、70-80%程度の患者に腫瘍縮小効果を示すとされています。
イレッサの特徴としては、内服薬であるという点もあります。一般的に肺癌治療で用いられる抗癌剤としては、シスプラチン/カルボプラチンなどのプラチナ製剤の他に、パクリタキセル、ドセタキセル、ジェムザール、アリムタなどがありますが、これらは点滴による治療です。イレッサの場合は、内服で連日投与されます。そのため、比較的高齢者で点滴による抗癌剤治療に耐えられない方でも、治療を行えるといった点もあります。
副作用としては、やはり間質性肺炎が大きなものとしてあげられると考えられます。投与後4週間以内に発症しやすく、日本において、ゲフィチニブ投与後8週間以内の急性肺障害・間質性肺炎の発症率は約5.8%(193例/3322例)、肺障害による死亡率は2.3%(75例/3322例)であり、およそ100人に1〜2人は発症すると考えられます。また PS (performance status) 2以上、喫煙歴のある人、すでに間質性肺炎を合併している人、化学療法を受けたことのある人、では間質性肺炎がおこりやすいことも示唆されています。
ただ、EGFR遺伝子変異がある肺腺癌患者さんの場合、効果的である可能性もあり、この裁判の結果が今後の薬剤使用に大きな影響が出ないか、懸念されます。
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非小細胞肺癌に対するTS-1の治療効果について
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肺癌で化学療法を行い闘病、亡くなった−野沢那智さん
イレッサの特徴としては、内服薬であるという点もあります。一般的に肺癌治療で用いられる抗癌剤としては、シスプラチン/カルボプラチンなどのプラチナ製剤の他に、パクリタキセル、ドセタキセル、ジェムザール、アリムタなどがありますが、これらは点滴による治療です。イレッサの場合は、内服で連日投与されます。そのため、比較的高齢者で点滴による抗癌剤治療に耐えられない方でも、治療を行えるといった点もあります。
副作用としては、やはり間質性肺炎が大きなものとしてあげられると考えられます。投与後4週間以内に発症しやすく、日本において、ゲフィチニブ投与後8週間以内の急性肺障害・間質性肺炎の発症率は約5.8%(193例/3322例)、肺障害による死亡率は2.3%(75例/3322例)であり、およそ100人に1〜2人は発症すると考えられます。また PS (performance status) 2以上、喫煙歴のある人、すでに間質性肺炎を合併している人、化学療法を受けたことのある人、では間質性肺炎がおこりやすいことも示唆されています。
ただ、EGFR遺伝子変異がある肺腺癌患者さんの場合、効果的である可能性もあり、この裁判の結果が今後の薬剤使用に大きな影響が出ないか、懸念されます。
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