リハビリテーション(リハビリ)は高齢者のためのものと思いがちだが、がんの治療前後のリハビリが今年度から健康保険で受けられるようになった。

抗がん剤による体力低下、手術後の呼吸機能の低下や身体機能の障害など対象は幅広いが、実施する病院はまだ少ない。専門家は「リハビリを効果的に行えば、患者さんは良い状態で早く退院できる」と訴えている。

千葉県松戸市の会社役員、大江秀一さん(43)は昨年10月、食道がんと診断され、慶応大学病院に入院した。抗がん剤治療で腫瘍を小さくし、手術に臨むためだ。

抗がん剤治療の傍ら、運動機能のリハビリが始まった。ベッド上での生活が長引き、抗がん剤治療もあって体力が落ちた大江さんの筋力は85歳レベルにまで低下していた。大江さんは「がんで入院したのにリハビリがあることに驚いた」というが、当時はリハビリ室を歩いて1周するのがやっと。歩行訓練や筋トレに前向きに取り組んだ。

12月にはさらに、手術を視野に入れたリハビリを受けた。食道がんの手術は一般に、胸部、腹部、頸部の3カ所を切開する大がかりなもので、体へのダメージも大きい。肺活量が落ちるため、呼吸は浅く早くなりがちで、飲み込みや発声が難しくなることも予想される。こうした説明を受けた大江さんは、腹式呼吸やせきの仕方を練習する「呼吸リハビリ」を受けた。手術前に練習することで呼吸や発声のコツをつかんでおくのが目的だ。

手術に臨む頃には筋力は71歳レベルまで戻り、病棟の廊下を30周ほど歩けるようになっていた。

食道がんの手術は8時間近くかかるが、翌日には起きるよう促される。寝たきりだと体力が落ちるだけでなく、たんがたまって肺炎など合併症の危険性も高まるためだ。大江さんは「手術前のリハビリがあったから歩けた。リハビリなしだったら、手術後、病棟に戻ってすぐ歩くのは怖かったと思う」という。

口から食べられるようになると、再び、飲み込み、発声、腹式呼吸のリハビリ。手術後は呼吸が浅くなった大江さんだが、「機器を使うことで回復を実感しながらリハビリができた。言語聴覚士からは『横を向いた方が声が出やすい』など、自分では思いもつかないアドバイスを受けた。本当にありがたかった」と話している。

がん患者のリハビリは平成22年度に診療報酬がついた。病気の進行や治療で体力や身体機能が落ち、生活の質も低下するのを防ぐのが目的だ。

リハビリが有効なのは、
1) 肺がんや食道がん手術後の呼吸機能の低下
2) 舌がんや口腔がん、咽頭がん、喉頭がん術後の飲み込みや発声障害
3) 乳がん手術後の肩関節の運動障害
4) 血液腫瘍の化学療法や骨髄移植による全身倦怠感・体力低下−などがある。

対象になるがんはこれ以外にも、胃がん、肝臓がん、大腸がん、膵臓がんなど幅広い。

慶応大学病院ではリハビリの3割ががん患者。リハビリテーション医学教室の辻哲也講師は「手術前にリハビリの必要性を説明し、呼吸のコツをつかんでもらうことで、術後のリハビリがスムーズにいく。

運動機能を改善して早くベッドから起きられれば、肺炎などの合併症を起こす危険性も減り、退院日数も長引かず、良い状態で退院できる。患者さんも医療職も、もっとがんのリハビリを知ってほしい」と話している。

(がん治療前後にリハビリ 手術に備え体力向上)


理学療法士や言語聴覚士の方々などにリハビリ依頼をさせていただき、日に日に活動性が増し、精神的にも前向きに治療に臨むことができた、という患者さんは多いように見受けられます。

体を動かしたり、嚥下訓練・言語療法などのリハビリを行うこと自体、単調となりやすく刺激が少ない入院中で、大いに刺激になり、多大な効果をもたらしてくれるように思います。

ですので、特にご高齢の方では是非ともリハビリを利用させていただきたい、というところではあります。長期臥床ともなれば、日を追って筋力低下は避けられません。そこで、リハビリを取り入れさせていただければ、ベッド上でのリハビリでも筋力維持に大きな効果があると思われます。

その一方で、以下のようなことが考えられると思われます。
やはり、スタッフの人員不足はどこの病院でも大きな問題となっていると思われます。私の務める病院では、ベッド数300前後、理学療法士の方は4人、言語聴覚士の方は2人となっています。

これだけの人数で、全病棟、全科の患者さんのリハビリを担うとなれば、非常に大きな負担となると思います。夕方や夜間にまで、リハビリをやってくださっています。

保険適応により、入院期間の短縮などを見込んでのことでしょうが、リハビリに携わるスタッフの方々の人員を増やす、などの施策が必要となると考えられます。

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