自動車の中で避難生活を送っている人は、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓(そくせん)症)に注意が必要だ。

長時間動かずにいた時などにできる血の塊(血栓)が肺の血管に詰まり呼吸困難を起こす病気で、重度になれば死亡することもある。04年の新潟県中越地震では車内で避難生活をしていた人に死者が出ており、足をこまめに動かし、定期的な水分補給をするなどして予防したい。

飛行機のエコノミークラスの座席など狭い場所で椅子に座った姿勢で長時間足を動かさずにいると、足の静脈の血流が悪くなり、血液がたまる。その結果、足に血栓ができ、血流に乗って肺の血管を塞いでしまう危険がある。厚生労働省によると、初期症状で足が赤くなったり、むくんだりするといい、すぐに医療機関を受診する必要がある。症状が進むと胸の痛みや息切れ、失神などの症状が出て、最悪の場合死亡する。中高年の女性に多いというデータもある。

窮屈な場所で手足を縮めて寝泊まりを続けると症状が発生しやすいが、新潟大学などの調査では、07年の新潟県中越沖地震で避難所生活を送っていた被災者にも症状が確認された。限られたスペースで寝起きするためとみられ、車中泊と同様に注意が必要だ。

厚労省が勧める予防法は、
1) 長時間同じ姿勢を取らない。
2) 1時間に1度はかかとの上下運動(20〜30 回)をする、歩く(3〜5分)などの足の運動をする。
3) 血液が濃縮されないよう定期的に水分補給する。
4) 時々、深呼吸する。

などを挙げている。やむを得ず車中泊をする場合は、
1) できるだけゆったりとした服装にする。
2) 足を何かの上に上げた状態で寝る。

などが効果的とされる。
(東日本大震災:サポート情報 エコノミー症候群対策は)


肺動脈に、形成された血栓により閉塞された病態を「肺血栓症」、静脈系から肺動脈へ流入した物質により肺動脈が閉塞された病態を「肺塞栓症」といいます。これら両者をまとめて「肺血栓塞栓症」と呼びます。

「エコノミークラス症候群」としても知られるように、長時間、同じ姿勢のまま過ごすと起きやすいことで知られています。新潟県中越地震では、被災地で車中泊をしていた人が多く発症したことが報告され、有名になりました。

男女比は5:4で、あらゆる年齢層に発症する可能性があります。ただ、高齢になるほど多く、60歳以上が患者全体の約50%を占めます。

静脈系から肺動脈へ流入した物質により肺動脈が閉塞である「肺塞栓症」が大半です。急性肺血栓塞栓症は、その90%以上が、下肢あるいは骨盤内の静脈に生じた血栓が原因であり、それらの血栓が肺動脈を閉塞することにより生じます。

症状としては頻度の高いものとして、急に発症する呼吸困難(約80%)、多呼吸(約80%)、頻脈(約60%)などがあります。広範な塞栓の場合にみられる場合、不整脈や狭心症様の胸部重苦感、失神などが起こります。肺梗塞・肺水腫を伴う場合は、胸膜炎様胸痛、咳嗽、発熱などが起こることもあります。

治療としては、以下のようなものがあります。
呼吸循環管理や血栓塞栓の溶解除去、塞栓源への対処を中心とした迅速な治療が必要となります。呼吸循環管理としては、低酸素血症に対し十分量の酸素を投与します。

抗凝固療法を早急に開始し、血栓の拡大・新生を防止します。血栓溶解療法〔組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)、ウロキナーゼなど〕や、基礎疾患の治療も必要となります(下肢静脈血栓症については、発症後10日以内であれば外科的に血栓除去術を行う)。

抗凝固療法は出血活動期などの禁忌例を除き、本症を疑った時点より全例に投与します。低分子ヘパリンやダナパロイド(オルガラン)などが使用されます。

血栓溶解療法は抗凝固療法単独に比べ、早期血栓溶解効果、血行動態改善効果があるものの、出血性合併症のリスクが増すため、広汎型、亜広汎型が適応とされます。クリアクターを13,750〜27,500単位/kgを約2分間で静注します。

予防としては、上記内容をご参考ください。被災地の方々は、是非ともエコノミークラス症候群の予防にご留意下さい。

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