・あらすじ
1867年(慶応3年)秋。「大政奉還」の実現に向け、坂本龍馬(内野聖陽)は日々奔走していた。その一方で、南方仁(大沢たかお)はそんな龍馬のことを気にかけつつも、乳癌のリンパ節/肺転移を抱えながらの出産を控え、『仁友堂』に入院してきた野風(中谷美紀)の身体を心配していた。

橘咲(綾瀬はるか)も野風のため、産婆のもとへ足を運び、少しでも出産の手助けが出来るようにと努力の日々を過ごす。だが、橘恭太郎(小出恵介)は、幕府の上役(中原丈雄)に引き続き龍馬の動向を探るよう命ぜられていた。

そんなある日、野風のお腹の子が逆子であるとわかり、そのまま産むには危険な状態だと判明。仁は、『仁友堂』の面々に協力してもらいながら“整胎術”や“お灸”で逆子を戻そうと試みるのだが、野風の母体を第一に考え、ある決断を下そうとする。その決断とは、母胎を優先し、子供を諦める、というものだった。

野風を落ち着かせ、麻酔下に子供を取り出そうとする仁。「子供には影響の少ない麻酔にします」と伝えた仁だったが、その嘘を野風はすぐに見破る。そして、「麻酔無しで、帝王切開で子供を取り出して欲しい」と切望される。その様子に、咲も後押しをする。

そして、ついに無麻酔での帝王切開術が開始された。激痛の中、手術が進行する。それは、想像を絶するような苦しみであった。無事に取り出された子供は、呼吸をしていなかった。咲は子供の背を叩き、呼吸を開始させた。泣きだした子供の様子に安心した野風は、安心したかのように目を閉じた。

子宮切開部からの出血、播種性血管内凝固(DIC)、そして心肺停止に陥った野風。だが、仁の心臓マッサージで野風は蘇生した。母胎、そして子供ともども救命することができたのだ。子供は、安寿と名付けられた。

一方、その頃、幕府側は大政奉還を決定事項とした。坂本龍馬の奔走により、大政奉還が結実することとなったのだ。



帝王切開術とは/骨盤位・横位とは


帝王切開術とは、急速遂娩術の1つで、子宮壁を切開して胎児を娩出させる方法です。腹式帝王切開術と腟式帝王切開術とがありますが、後者はほとんど行われません。

適応となるのは、狭骨盤や児頭骨盤不均衡、切迫子宮破裂、前回帝王切開、経腟分娩に母体が耐えられないなど母体側の適応と胎児仮死、胎盤の異常(前置胎盤,常位胎盤早期剥離など)、胎位、胎勢の異常(骨盤位、横位、回旋異常など)などです。重複することもあります。

野風の場合は、逆子(骨盤位)であり、なおかつ分娩途中で横位となっていました。そこで、仁は帝王切開術を施行しようと決断します。
胎児の縦軸と子宮の縦軸が一致するものを縦位、直角になるものを横位といいます。また、縦位には頭位(児頭が下、すなわち産道に近いもの)と骨盤位(児の骨盤が下にあるもの)があります。このうち、頭位のみが正常な胎位とされ、骨盤位と横位は異常胎位です。骨盤位の児の分娩は頭位に比べハイリスクであり、横位の児は縦位に矯正されない限り、経腟分娩は不可能です。

妊娠中期での骨盤位の頻度は約30%ですが、そのほとんどは自然回転するので特に治療は要しません。しかし、妊娠35−36週になっても骨盤位が持続する場合は、条件のよい症例にはリトドリンで子宮収縮を抑制しながら、超音波下に外回転術を行います。

ただ、外回転術の禁忌例として、1) 多胎 2) 子宮の形態異常 3) 子宮の手術既往(帝王切開・筋腫核出など)、4) 狭骨盤、5) 羊水過少、6) 胎内発育遅延 7)臍帯頸部巻絡 8)前置胎盤および分娩後期の出血例などがあります。

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