読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
先日妻(64歳)が、検診の一環で胸部ヘリカルCT(コンピューター断層撮影)検査を受け、「サルコイドーシス」の疑いがあると診断されました。どのような病気なのでしょうか。今後どのように、病気と向き合っていったらよいか、教えてください。(70歳男性)
この相談に対し、JR東京総合病院副院長である山口哲生先生は以下のようにお答えになっています。
サルコイドーシスとは、肉芽腫という小結節ができる病気です。主に侵される臓器は、肺門リンパ節、縦隔リンパ節、肺野、表在リンパ節、眼、皮膚、神経、筋肉、心臓などです。ほぼ全身にできる可能性のある病気です。

 奥様の場合は、CTで発見されたということなので、肺門や縦隔(胸郭の中)のリンパ節が腫大していたのでしょう。リンパ節が腫大しているだけでは、ほぼ何も症状はありません。これがサルコイドーシスなのかそうでないのかを確定するのは、かなり難しい場合があります。

 すなわち、大きなリンパ節であれば検査をしやすいですが、小さなリンパ節で無症状であれば、「サルコイドーシスの可能性はありますが、検査は難しいので経過を観察するだけにしましょう」といわざるをえないのです。

 もっとも、手術によってリンパ節を生検してそれを顕微鏡でみて、中に「類上皮細胞肉芽腫」をみいだせれば、サルコイドーシスの確定診断になりますが、まったく症状もなくリンパ節も小さいのに手術をすることはあまりありません。

サルコイドーシスにて、起こりうる症状としては、以下のようなものがあります。
病気が縦隔や肺門のリンパ節だけでなく、肺野に広がってくると、さらに広がる可能性を考えて経過観察をさらに慎重にする必要がでてきますし、陰影が増加すると、せきや息切れなどの症状が出てくることがあります。

 さらに侵される臓器によっては、目の場合はぶどう膜炎、皮膚の場合は様々な皮膚病変が出ます。神経は顔面神経麻痺(まひ)や様々な神経障害、筋肉は筋肉腫瘤(しゅりゅう)、心臓は不整脈や心不全といったように、実に様々な症状を呈する病気です。

 まず、初めにCTを撮ってもらった病院に話をよくきいて、状況によっては、さらに血液検査、ガリウムシンチグラム、さらには気管支鏡などの検査を考えてもらうことが必要になります。

サルコイドーシスとは、非乾酪性肉芽腫性病変を基調とする病態の疾患です。侵される臓器はリンパ節、眼、皮膚が主であり、内科的には肺、心臓、神経があります。

原因は不明ですが、未知の吸入抗原による免疫システムの活性化が病因と考えられており、上記のように抗原の候補としてPropionibacterium acnesが注目されています。

臨床症状は多彩であり、無症状のものから、急激な経過をたどり死に至るものもあります。診断時に多いのは眼症状(霧視、羞明など)、呼吸器症状(咳、息切れなど)、皮膚症状(皮疹、皮下結節など)、全身症状(発熱、全身倦怠感など)があります。

その他、心病変でめまい、失神、徐脈などのAdams-Stokes(アダムス・ストークス)症候を、神経病変で顔面神経麻痺、精神神経症状などを生じます。少数ですが、ぶどう膜炎、両側耳下腺腫脹、顔面神経麻痺を主徴とするHeerfordt(ヘールフォルト)症候群で発症することもあります。

上記のような肺サルコイドーシスは、50%前後は無症状で、健康診断時の胸部X線異常所見から発見されています。症状発見群の中で、呼吸器症状(咳・呼吸困難など)で発見されることは少なく、最も多いのは、眼症状で本症が疑われ,胸部X線撮影で発見される例であるといわれています。

症例の50〜70%は発症・発見後5年以内に病変は消褪するといわれていますが、残りの症例では病変は不変あるいは残存しますが、上記のように肺病変が線維化病変に進展し、呼吸不全を呈する症例は5%以下であるといわれています。

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