フジテレビ系情報番組『めざましテレビ』(毎週月〜金 前5:25)のメインキャスターを務める大塚範一さん(63)が、「急性リンパ性白血病」の治療のため休養すると6日、同局が発表した。

今月2日より体調不良を訴え番組を欠席した大塚キャスターは、診断の結果、そのまま都内の病院に緊急入院。当面の間入院し、抗がん剤を用いた化学療法を受けるという。今後の番組復帰は治療経過を見つつ、医師および本人と相談の上決定し、当面の間、同局の伊藤利尋アナウンサーが代行する。

以下は大塚キャスターからのコメント全文
17年と7ヶ月、所定の休みを除いて皆勤で走り続けて来ましたが、全く予期せぬ突然の病を得て、休みを頂くことになりました。
 
健康だけが取り柄の、また健康だけを頼りにめざましテレビに取り組んで参りました。それがこのような形で崩れた衝撃は、まだ受け止めきれていません。
 
しかし、情報をみんなの元気と笑顔に乗せてお伝えするめざましテレビのMCとしては、厳しい治療にも気力で耐えて、数ヶ月先の5時25分に再び元気な笑顔で再登場することをお約束します。それまでどうか変わらぬご支援をめざましテレビと私にお寄せ下さい。

11月6日
めざましテレビキャスター大塚範一
(『めざましテレビ』大塚範一キャスター、急性白血病で休養)

急性リンパ性白血病とは


急性リンパ性白血病は、遺伝子の突然変異により、癌化してしまったリンパ系前駆細胞(リンパ系幹細胞/前駆細胞)が原因で起こります(癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活性化も伴って腫瘍化します)。急性リンパ性白血病とは、このように生じた白血病細胞が、分化・成熟が障害されて著しく増える造血器腫瘍です。

骨髄で増殖しつづけた白血病細胞は、次第に正常造血幹細胞による造血を抑制し、増殖したリンパ系の芽球は末梢血を循環し始めます。結果、全身の臓器に浸潤する血中、さらには諸臓器に浸潤するようになります。こうした状態になると、骨髄不全による感染症や出血、さらに臓器不全を生じ、死に至る可能性もあります。

日本では、白血病全体では年間6,000〜7,000例発症するといわれていますが、その中で急性リンパ性白血病は約20%を占めます。主に小児に多く、成人での1年間の発症率は、約10万人に1人とされています。

症状は、正常造血幹細胞による造血が抑制されることによって起こってきます。
つまり、
・赤血球減少:貧血症状(息切れ、動悸、倦怠感、顔面蒼白など)
・好中球減少:発熱(感冒症状の遷延化)
・血小板減少:出血症状(点状出血,紫斑,口腔粘膜・歯肉出血,性器出血)

などが多いと言われています。他にも、脾腫、肝腫、リンパ節腫大のほか、髄膜浸潤による髄膜刺激症状や中枢神経白血病による頭痛なども時にみられます。

白血球数は増加、正常範囲、減少と一定せず、白血球分画を必ず検査し白血病細胞を証明します。上記のように、貧血ないし血小板減少あるいは両者が必ずみられ、その症状も高度の場合もあります。

白血病細胞が認められる場合は、細胞表面マーカーの検索も行います。この検査の結果、白血病細胞の種類が分かり、
1)幼若なB細胞系列性
2)T細胞性
3)成熟したB細胞(細胞表面免疫グロブリン陽性)性
などに分類されます。

急性リンパ性白血病が疑われる場合、ほぼ確実に骨髄穿刺(診断のためには必須の検査)が行われます。骨髄穿刺により、塗抹標本などや染色体検査、細胞表面形質の検索も必ず実施し、遺伝子診断のために骨髄細胞の保存も行います。

急性リンパ性白血病の治療


急性リンパ性白血病の治療としては、以下のようなものがあります。
治療としては、主体は抗がん剤を用いた化学療法と、造血幹細胞移植です。まずは化学療法によって白血病細胞を叩き、完全寛解(正常造血の回復によって末梢血液像および骨髄像が正常化し、臓器浸潤も消失した状態)と呼ばれる状態になるまで治療します。

第1選択薬としては、ビンカアルカロイド製剤であるビンクリスチン(VCR)、アンスラサイクリン系薬剤であるドキソルビシン(DNR)、副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロン(PSL)の併用療法がよく用いられます(DNRの代わりにアドリアマイシンこともあります)。

年齢や病状などにより治療法は異なりますが、複数の抗がん剤を組み合わせて行う化学療法が基本です。効果的な投与方法について工夫が続けられています。

新薬としては2年前に、「ネララビン」(商品名アラノンジー)という抗がん剤が登場しました。リンパ球のうち、「T細胞」と呼ばれる細胞ががん化した場合に使われています。

完全寛解に到達した直後に、寛解地固め療法が行われます。これは、残存白血病細胞をさらに減少させ、完全寛解状態をより強固なものにする目的で行われます。地固め療法には、寛解導入療法と同じ治療法(投与量をある程度減量する場合が多い)あるいは交差耐性のない薬剤を組み合わせた多剤併用療法が2〜3回繰り返されます。その後、より安定した状態を維持するため、維持強化療法が1〜2年継続されます。

化学療法のみでは治癒が期待できない患者さんなどでは(HLAが一致した兄弟姉妹のドナーがいる場合では、寛解後できる限り早期に移植を行うことを考えます)、治癒を目指した治療法として、同種造血幹細胞移植が積極的に検討されます。

同種造血幹細胞移植とは、(血縁者・非血縁者をドナーとして)採取した正常な骨髄液を、患者さんの静脈から輸血のように体内に入れ、破壊された造血幹細胞と入れ替えます。

一般的には、骨髄移植によって、造血幹細胞を多く含む骨髄を採取・輸注することで行います。ただ、最近では、末梢血あるいは臍帯血もその細胞ソースとして用いられており、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植とよばれています。

造血幹細胞移植は、自分や他人の体から骨髄を取り出し、移植する方法です。最も強力な治療法と考えられ、主に化学療法だけでは治りにくいと予想される場合に行われます。

年齢や移植時の病状などによって治療成績は異なりますが、日本造血細胞移植学会の2008年度の報告では、他人から移植を受けた人の5年生存率は45%でした。

また、急性リンパ性白血病の中でも、特に治りにくいとされる異常な遺伝子を持つタイプには、特定のがん細胞に効果があるとされる「イマチニブ」(商品名グリベック)や「ダサチニブ水和物」(商品名スプリセル)などの「分子標的治療薬」と呼ばれる薬が効果を上げています。

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