10月末に入院・手術を受けたタレントの上原さくらが、公式ブログで自身の病名を初めて明かしている。

11月11日付けのエントリー「昨日は、先日手術した件で最後の通院をしてきました☆」は、術後の診察がすべて終わったことを機に、これまで明かしていなかった病名を告白し、ファンに早期の検診を呼び掛ける内容。それによると、上原が手術を受けたのは「卵巣のう腫」の治療のためだったそうだ。

卵巣に腫瘍があることがわかったのは1年ほど前に受けた定期検診で、その後は経過観察を続けてきたが、「今年の検診で少し大きくなっているのが分かり、茎捻転を起こしてからでは手術も緊急になり大変だと思い、最終的に自分で決断をして」手術を受けることにしたという。

この病気が判明したのは「年1回の子宮けい癌の検診を受けるついでに診て頂いたから、早期で発見出来た」との経緯があり、また、周囲にも同じ病気の女性が数人いることから、ブログの女性読者に対して「婦人科の定期検診は受けておいた方がいいですね☆」「婦人科系は、定期的に検診を☆」と呼び掛けている。

ちなみに、手術の傷口は「もうホントに、どこなんだか指さして教えてあげないと分からないくらいのレベル」とのことだ。

上原はブログの10月29日付けエントリーで手術を受けたことを告白。病名は伏せた上で、「いや、想像してたよりは痛いんだけど」「ともかく無事終わってホッと一息☆ いや、一息つくと痛いんだけど(笑)」と術後の様子をつづり、ファンからは心配の声が多く寄せられていた。
(上原さくら“卵巣のう腫”だった、「婦人科系は定期検診を」と呼び掛け。)

卵巣嚢腫とは


卵巣嚢腫とは、卵巣に発生する嚢胞性の良性腫瘍を総称したものです。病理組織学的には、
1) 漿液性嚢胞腺腫
2) 粘液性嚢胞腺腫(ムチン性嚢胞腺腫)
3) 成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢胞腫)
が含まれます。

1) 漿液性嚢胞腺腫とは、水のようにサラサラとした液体(漿液)が貯留した嚢腫です。全卵巣腫瘍の約50%を漿液性腫瘍が占めており、そのうちの70%が良性の漿液性腺腫であるといわれています。単房性の嚢胞(1つ嚢胞がある状態)を形成します。腫瘍細胞は線毛をもつ、卵管上皮あるいは立方型の卵巣表層上皮に似ます。

2) 粘液性嚢胞腺腫は、ネバネバした液体がたまる嚢腫です。多くの場合、表層上皮性間質性腫瘍に属する良性の粘液性腫瘍です。頸管腺型と腸上皮型の2型があります。

一般に、閉経期から高齢者に多くみられますが、若年者にも発生します。約5%の粘液性腫瘍では奇形腫成分が混在することがあり、そのような例では胚細胞由来が考えられます。多くの場合、多房性の嚢胞を形成するため、超音波診断や腹部CTなどの画像で診断が推定できるといわれています。

3) 成熟嚢胞性奇形腫は、毛嚢、皮脂腺、汗腺などの皮膚付属器を含む表皮に被覆された嚢胞です。内容として皮脂、角化物、毛、骨、軟骨などが含まれています。成熟型奇形腫は分化成熟した組織だけからなり、これらの組織が雑然と入り乱れて全体として塊状を呈しています(部分的に一定の臓器組織のような形を示すこともあります)。成熟型奇形腫のうちで、最もよく観察されるのは卵巣の皮様嚢腫です。

成熟嚢胞性奇形腫では、約10%に両側発生が認められます。比較的に強靭な嚢胞壁(カプセル)で被包され、正常な卵巣組織とは明確に境界されています。自然破裂する場合もあり、放置すれば茎捻転や、二次的な悪性転化(2%程度)をすることもあります。悪性化した場合は扁平上皮癌が多いです。稀ではありますが、自己免疫性の溶血性貧血の原因となることもあります。

卵巣嚢腫は、一般に無症状のことが多く、内診や超音波検査などで偶然発見されることが多いです。また、婦人科特有の症状も乏しいといわれています。一般的に、月経異常や不正性器出血は少ないそうです。

症状としては、下腹部膨満感、下腹痛、腫瘤の触知などが最も多く(約20〜30%)、腫瘤が大きくなると腰背部痛や直腸・肛門の圧迫感などを自覚しますが、単に太った(肥満)と感じている場合もあります。

胸腹水の貯留もみられることがあり、特に線維腫で比較的高頻度にみられます(Meigs症候群と呼ばれます)。非血性で、こうした症状は腫瘤摘出により自然消退します。

性ホルモン分泌による症状としては、エストロゲンやアンドロゲンを産生するホルモン産生腫瘍(莢膜細胞腫、門細胞腫、類副腎腫)では男性化、脱女性化、早期女性化、再女性化などがみられることがあります。

腫瘍の茎捻転、破綻・出血、周囲との癒着などもみられることがあり、特に茎捻転では下腹部の激痛、腹膜刺激症状、ショックを呈することがあります。こうした状況になると、ほかの急性腹症(子宮外妊娠、急性卵管炎、急性虫垂炎、腸閉塞、尿路結石など)との鑑別が重要であり、超音波検査で卵巣腫瘤の存在を確認する必要があります。

卵巣嚢腫の治療


治療としては、以下のようなものがあります。
治療法としては、原則として腫瘍のみを摘出(腫瘍核出術)し、手技的に困難な場合にのみ卵巣または付属器を摘除します。腹腔鏡下手術では、巨大なものや癒着が高度なもの、さらに悪性が少しでも疑われるものは除外し、腹腔鏡下に腫瘍核出術を行います。

腹腔鏡下手術の適応外のものは開腹して、腫瘍核出術を行います。悪性が疑われるものには腫瘍内容が漏れないように注意し、腹水あるいは腹腔洗浄液の迅速細胞診、腫瘍の迅速組織診を行います。

術中迅速病理診断が境界悪性、または悪性となった場合は基本術式として、単純子宮全摘術、両側付属器切除術、大網切除術を行い、進行期の確定のために横隔膜下面以下の腹腔内の視触診、腹腔細胞診、腹腔内生検、後腹膜リンパ節の郭清術または生検、次に腹腔内に腫瘍が広がっている場合は可及的腫瘍縮小術を行います。

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