「眠り姫」と言えば、魔女の呪いで100年間眠り続けたお姫様のお話だ。王子様が現れることによりお姫様は目を覚ますのだが、実際にこのような病気が存在するをご存知だろうか。一度眠ると1日どころか最長で6カ月眠り続ける病気にかかった少女がいるとイギリスで報じられた。

長期間眠り続ける病気「眠り姫病」こと「クラインレビン症候群」にかかってしまったのはイギリスに在住のベサニー・ローズ・グーディアさん(18才)だ。

彼女は元々大学で心理学と社会学を専攻する活発な女の子だった。だが、昨年の11月のある日を境にほぼ丸一日眠るようになってしまった。

家族は最初はベサニーさんが怠けていると思っていたそうだが、彼女が起きてくるのは食事とトイレ1、2時間のみ。目はとてもうつろで反応もない。話し方やふるまいが幼児のようになり、起きて来るときもゾンビのような歩き方をするようになったそうだ。

さすがにおかしいと思った家族がベサニーさんを病院に連れて行ったところ、クラインレビン症候群にかかっていることがわかったそうだ。この病気は世界でも症例が1000例ほどしかない奇病である。

結局、彼女は2010年11月から2011年5月まで約6カ月間眠り続けた。誕生日もクリスマスもお正月も眠り続けていたそうだ。もちろん発症して以来大学にもほとんど行けず、結局中退せざるを得なかった。彼女は眠っている間に様々なものを失ってしまった。

ベサニーさんが眠っている間家族と恋人のアダムさんが交代で24時間看病しているそうだ。アダムさんは「付き合い初めて3カ月で彼女は病気になってしまった。そのときは独りぼっちになってしまったようで、本当に怖かった」と語る。眠り始めて6カ月後ベサニーさんが目を覚ましたときは、家族と手をとりあって喜んだそうだ。

ベサニーさんによると「私の時間は眠り始めた日で止まっているの。この半年間のことは何も覚えていないのよ。ぼんやりとした印象はあるんだけど夢と現実の境もわからない」とのことである。目を覚ました10日後、ベサニーさんはまた眠りに落ちていった。

アダムさんは「付き合って15カ月経つけど、そのうち9カ月間彼女は眠っているんだ。でもだからといって僕は彼女から離れたりしない。むしろ病気が僕たちをより強く結びつけてくれた気さえする。この先どうなるかはわからないけれど、僕は彼女が良くなることを信じている」と、今後も辛抱強くベサニーさんを看病していくつもりだという。

クラインレビン症候群は自然に治ることもあるそうだ。治療には薬物療法などが用いられるが確立された治療方法はないそうだ。彼女の病が少しでも良くなることを願わずにはいられない。
(いつまでも眠り続ける奇病「眠り姫病」にかかった少女)

クラインレビン症候群とは


クラインレビン症候群(クライネ-レヴィン症候群、Kleine-Levin syndrome)は、周期性過眠過食症と同意語です。反復する眠気のエピソードに加え、むちゃ食い(多量の食物の急速な摂取)をその特徴とすることでよく知られています。このように、周期的傾眠に引き続く病的な空腹感と貪食を特徴とする症候群です。

歴史的には、1925年クライネ(Kleine W)、1936年レヴィン(Levin M)によって、思春期に発症し、無関心、無気力を伴う特異な傾眠と病的飢餓を示す疾患として報告されました。1942年にクリチュリー(Critchley M)らによって、クライネ-レヴィン症候群と名づけられました。

成因は不明ですが、間脳、視床下部の機能障害が一時的に起こると類推されています。通常、思春期の男性にみられ、性格変化で始まり、次いで傾眠と睡眠状態が数日から数週間にわたってみられ、トイレ以外はほとんど眠っており、目が覚めると病的な空腹感を訴え、むさぼるようにがつがつと食べます。

発作中は覚醒しても意識は完全に清明でなく、健忘がみられます。脳波は通常の傾眠脳波で、紡錘波、発作性徐波がみられます。経過は良性で通常は自然に消失するといわれています。

診断や治療は、以下のように行います。

クラインレビン症候群の診断・治療


ナルコレプシーにみられる短時間の睡眠発作と異なり、比較的長時間(数日から数週間)持続する傾眠が周期的にみられ、覚醒すると空腹感からむさぼるように食べる症状が思春期の男性にみられれば、診断されます。検査所見に特徴的なものはなく、臨床的に診断します。

鑑別診断としては、ナルコレプシー、てんかん、Pickwick症候群がすが、症状の組み合わせから診断にはほとんど問題ないです。Pickwick症候群は肥満による肺胞低換気状態が基礎にあって起こる高炭酸ガス血症、低酸素血症による傾眠であり、鑑別は容易です。

治療としては、発作予防にはナルコレプシーと同様、中枢神経刺激性薬物、硫酸アンフェタミン、塩酸メチルフェニデート(リタリン) 30〜60 mg/日が有効ですが、本症は良性な経過をとり、自然治癒することが多い疾患です。