タレントの乙葉さんは小学3年生のときに喘息(ぜんそく)を発症、ひとたび発作が起きれば息ができなくなるほどの苦しさに悩まされてきた。吸入ステロイドで気道の炎症を抑える治療と出合い、苦しい発作のない「症状ゼロ」の毎日を手に入れた。先月、喘息について知ってもらうキャンペーン「チェンジ喘息!」のナビゲーターに就任。自身の経験も踏まえ、喘息の正しい治療を受けることの大切さを訴えている。(文・平沢裕子)
 
■コスモス摘みで喘息を発症
小学3年のとき、コスモス畑でコスモスを山ほど摘んで帰った日の夜、発熱し、1週間ぐらい吐き続けたときがあったんです。この日をきっかけに、喘息の発作がたびたび起こるようになりました。喘息はたいした病気じゃないと思っている人は多いですよね。私も喘息だからと体育を休んだこともなかったし、周りもたいへんな病気とは思ってなかったと思います。〈喘息は気道(気管支など)の内側に炎症があり、空気の流れが制限される病気。吸入刺激に過敏に反応し、発作的にせきやたん、息苦しさ、喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼー、ヒューヒューいう音)、呼吸困難などの症状が出る。日本では喘息の発作で年間約2千人が亡くなっている〉
 
発作のときは、わずかな隙間から息をしている感じ。ほんとに息が詰まって苦しいのですが、子供のときは世の中の人がみんなそうだと思っていました。走って苦しくなるのも、みんな同じだと思っていたんです。でも、走ったとき、自分は喉がヒューヒュー鳴り出すけど、他の人はそうなっていない。だんだん「どうしてかなあ」と思うようになりました。
 
風邪をひくことが喘息の発作を起こすきっかけになるので、とにかく風邪をひかないように気をつけていました。特に毎年9月に症状が出ることが多い。一度、舞台の地方公演が9月まで休みなく続いたとき、体調が悪くなったことがありました。休むと他の方に迷惑がかかるので、公演先の病院でステロイドの点滴を打ってもらい、舞台に立ちました。舞台でせきをしてしまったら芝居ができません。せきが出ないように我慢しないといけないのがつらかったですね。
 
■吸入ステロイドで症状ゼロ
吸入ステロイドで気道の炎症を抑える治療のことを知ったのは2年前。それまでは発作が出たときに病院に行って、ステロイドの点滴を打ってもらう治療を繰り返していました。夜中にせきが止まらなくて眠れず、夜通し起きていることも当たり前のようにありました。それで、「夜中の発作が起こらないようにしてもらえないかな」と医師に相談してみたんです。お医者さんは「治療法が新しくなったんだよ」と教えてくれ、それから吸入ステロイドを使うようになりました。〈吸入ステロイドは気道の炎症を抑え、喘息の症状を起こらないようにする薬。喘息治療のガイドラインで第一選択薬と位置づけられている〉
 
今は朝夕、吸入ステロイドを欠かさず行っています。毎日というと大変と思うかもしれないけど、吸入器から吸い込むだけなんですよ。発作のつらさがなくなることを思えば苦になりません。風邪をひいても前のように喘息の症状が長引くこともなくなりました。

喘息は他人にはうつらないんですが、せきが出るとみんなにうつると思われて離れていかれ、せつない気持ちになることが多かった。治療をちゃんとすることで、こうしたつらい思いをすることもなくなりました。

喘息の原因は気道の炎症ですが、アレルギー物質も症状を引き起こす要因の一つです。野原や公園など緑が多い場所はブタクサなどの花粉があって、それが原因で発作が起こることもありました。これまではそうした場所に行くのがためらわれましたが、吸入ステロイドを始めてからは気にせず出掛けられるようになりました。
 
大人の方でこの治療を知らない人は多いですよね。ぜひ一度、専門医を受診して、試してもらえればと思います。
(乙葉さん、喘息に苦しんでいた…治療で「症状ゼロ」に)

気管支喘息とは


喘息とは、気道の慢性炎症性疾患であり、気管・気管支平滑筋の攣縮、気道内分泌物の過多、気道粘膜の浮腫など、広範な気道の狭窄に特徴づけられます。簡単に言ってしまえば、突然気管支が狭くなり、咳や呼吸困難などの発作を起こす疾患です。

小児および成人ともに軽症・中等度症の死亡例が増加して、急激な経過で死亡することが問題になっています。重症ほど突然死を生じやすいというわけでないため、注意が必要となります。

気管支喘息患者にみられる発作性の呼吸困難、喘鳴(「ヒューヒュー」「ゼェーゼェー」という音が、聴診器を使わずに聞こえる状態)、咳の症状がみられる状態です。

気道狭窄がひどくなり、気流制限(呼吸ができにくい状態)が起こるために生じます。軽度〜致死的な発作まであり、自然に、または治療により発作が終われば元の状態に戻ります。夜間から早朝に出現することが多く、治っても反復し、安静時にも出現することがあります。

喘息発症の初期の誘因として、気道における抗原の慢性曝露や、気道感染を代表とする慢性気道刺激があるといわれています。具体的には、花粉やハウスダスト、ダニ、たばこの煙、ディーゼルの排気ガスなど、アレルギー物質を日常的に吸い込むことで、気道に炎症が起こります。

また、このような刺激に対する過敏反応として、気管支平滑筋・気道粘膜の浮腫、気道分泌亢進などにより気道の狭窄・閉塞が起こり、いわゆる喘息発作を起こすことがあります。

気管支喘息の治療とは


気管支喘息の治療としては、以下のようなものがあります。
治療法としては、急性発作に対しては、気管支拡張薬、ステロイド薬を中心とした治療を行います。気管支拡張薬としては、吸入β2-刺激薬を基本として、キサンチン製剤、抗コリン薬などを用いることもあります。ステロイド薬(炎症を抑える)は経口ないし点滴で用います。

持続する喘息の場合、軽症持続型では少量の吸入ステロイド薬が基本です。キサンチン製剤、β2-刺激薬吸入、抗アレルギー薬は、補助的に用います。中等症〜高度持続型の場合も、吸入ステロイド薬が基本ですが、量は増えます。同様に、キサンチン製剤、β2-刺激薬吸入、抗アレルギー薬を補助的に用いることもあります。

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