YOUMIURI ONLINEで、「脳ドックで髄膜腫の診断」という記事が掲載されていました。
脳ドックのコンピューター断層撮影(CT)で、髄膜腫と診断されました。症状はないのですが、大きくなったら脳外科で診てもらった方がいいと言われ不安です。(66歳女性)

この相談に関して、東京女子医大東医療センター脳神経外科教授である糟谷英俊先生は、以下のようにお答えになっています。
髄膜腫は最も頻度の高い良性の脳腫瘍です。成人100人のうち2〜3人にあります。

頭痛や頭部外傷、脳ドックなどで、CTや磁気共鳴画像(MRI)検査が行われるようになり、見つかることが増えています。偶然見つかった腫瘍はほとんどは大きくなりませんが、経過観察が必要です。

女性に多く、乳がんとともに見つかる場合もあることから、女性ホルモンが関係すると考えられています。放射線被曝後や遺伝性疾患に伴うこともあります。

腫瘍のほとんどは脳を包む髄膜から発生し、脳や神経を圧迫して症状を引き起こします。視力障害、顔面神経まひ、手足のまひや、けいれんなど、症状が出て見つかった場合や、腫瘍が大きくなった時には、治療が必要です。

髄膜腫とは、脳や脊髄を被う「硬膜」に付着して発生する、くも膜細胞由来の腫瘍です。そのため、くも膜顆粒というもののある所に発生しやすく、具体的には、「脳室内:や、稀に「頭蓋外」にも発生します。髄膜腫は発生部位により頭蓋骨円蓋部、頭蓋底部、脊髄腔の各部位の名称で分類されます。

中年以降の女性に多く、症状としては痙攣、徐々に出現する片麻痺や脳神経麻痺、認知症などで発症します。硬膜に付着して発育し、脳の圧排症状を呈します。テント上が9割を占め、大脳円蓋部は焦点発作や不全麻痺を起こし、傍矢状部は下肢の片麻痺を生じる可能性があります。

診断では、頭部CTやMRIなどが有用です。単純CTでは境界鮮明な軽度高吸収域を示し、造影CTで比較的均一に造影されます。MRIではT1、T2ともやや延長する傾向にあり、Gd増強T1強調画像で著明に増強されます。付着部の硬膜も増強されることがあり、髄膜腫に特徴的とされます。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療には開頭手術と定位放射線治療(ガンマナイフ)があります。薬で効果のあるものはありません。

基本は、手術でできる限り摘出することです。神経、静脈、脳に付着し、摘出すると症状が悪化するおそれがある場合は、意図的に残す場合もあります。

残った腫瘍が大きくなったり、再発したり、手術のリスクが高い場合は、ガンマナイフで治療します。腫瘍が大きくなるのを抑える効果があります。

基本的には良性ですが、悪性の性格を持つ腫瘍もありますので、髄膜腫が見つかった場合は、脳神経外科医の受診を勧めます。造影剤を用いたMRI検査で、より正確に診断できます。

髄膜腫ではその発生部位や大きさにより手術の難易度が異なりますが、基本的には良性腫瘍であり5年生存率は90%以上となっています。

髄膜腫などの良性腫瘍の多くは、顕微鏡下手術による全摘出により治癒が期待できますが、発生部位や大きさによっては手術により重篤な神経症状をきたす場合もあり、定位的放射線治療(ガンマナイフ)などの治療オプションも考えられます。

上記で触れられているγナイフなども、治療選択として重要です。γナイフにより病変部に限局して大量の放射線を照射することが可能であり、髄膜腫にも有用です。