糖質制限食について長期的な効用は認めず、むしろ死亡リスクが有意に増加する。こんなメタアナリシスの結果を1月12日、国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科医長の能登洋氏が第47回日本成人病(生活習慣病)学会で発表した。

近年、減量法や糖尿病治療として炭水化物の摂取量を減らす糖質制限食が注目されている。数週間〜数年間の減量や動脈硬化リスクファクター改善の有効性が示唆されているものの、長期的なアウトカムや安全性については明らかになっていない。能登氏らは、MedLine、EMBASEなどの検索エンジンを用いて、“low-carbohydrate diet”や“carbohydrate-restricted diet”などのキーワードで関連する研究を選択し、メタアナリシスを行った。

総カロリーに占める糖質の割合をスコア化し(low-carbohydrate score;LCスコア)、糖質の割合が低い(30〜40%)群と高い(60〜70%)群を比較した結果、総死亡リスクは低糖質群で31%、有意に増加した(調整リスク比の95%信頼区間は1.07-1.59)。「低糖質・高蛋白質」群と「高糖質・低蛋白質」群を比較した結果(LC/HPスコア)でも、前者で総死亡リスクは22%、有意に増加(同1.02-1.46)。糖質制限食による長期的な効用は認めなかった。

心血管疾患死については低糖質群で10%増加したが、有意差は認めなかった(同0.98-1.24)。また、心血管疾患発症リスクはLCスコアでの検討では有意差はなく、LC/HPスコアで検討していた1文献では有意差を認めていた。

結果について能登氏は、「糖質制限食をし好する人は、脂肪や動物性蛋白質の摂取量が高値となる傾向にあり、総死亡の増加への関与が想定される」と話した。ただし、「今回の検討では糖質の特徴や蛋白質源などの影響は加味されていない。これらの解析を含む長期介入研究が必要だ」とした。
(糖質制限食の長期的効用は認められず)

糖質は、「多価アルコールのアルデヒドおよびケトンの誘導体の総称」です。炭水化物(carbohydrate)ともいいますが、広義の糖質には複合糖質も含まれます。

結合している糖の数により、単糖、オリゴ糖、多糖に区別されます。ホモ多糖であるキチンやセルロースは昆虫や植物の表皮骨格物質として、またグリコーゲンや澱粉は動・植物の貯蔵物質として存在します。

糖質は管腔内消化、膜消化により単糖にまで分解されます。食品中に含まれる重要な単糖はグルコース、ガラクトース(乳糖中に含まれる)、フルクトースの3種です。
ヒトは、その身体活動のために常にエネルギーの供給を必要としますが、食物を摂取して余剰な栄養素はグリコーゲンとして肝臓と筋肉に、トリグリセリドとして脂肪組織に貯蔵します。そして必要なときに、これらを利用してエネルギーを供給することができます。

このエネルギーの蓄積を唯一可能にしているホルモンがインスリンであり、一方、グルカゴンやカテコールアミンなどのインスリン拮抗ホルモンは貯蔵エネルギーを分解放出します。インスリンの最も基本的な作用は栄養素の同化促進作用であり、グルカゴンやカテコールアミンなどは異化促進作用を持ちます。

「糖尿病」は、インスリン作用が減弱した病態を指します。血中のグルコースの値(血糖値)は、肝からの糖放出と筋肉・脂肪組織への糖取り込みのバランスで決定されます。肝からの糖放出は,グリコーゲンの分解と乳酸・アミノ酸・グリセロールなどからの糖新生の二つの系によります。インスリンはこの両者を抑制し、筋肉・脂肪組織への糖取り込みを促進します。

糖質制限は、糖尿病などに効果的かと考えられていますが、極端な食事制限などはやはり問題なようです。バランスよく食事を摂ることがやはり肝要なようですね。