日本糖尿病学会が今年出す見通しの「糖質制限を含めた食事量をめぐる声明案」の概要が明らかになった。1月13日に開催された第16回日本病態栄養学会年次学術集会 で、日本糖尿病学会食事療法委員会の委員長を務める宇都宮一典氏(東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授)が説明した。

まず、肥満の是正について明記。肥満の是正は糖尿病の予防と治療で重要であり、総エネルギー制限を最優先にすると強調した。

その上で、「総エネルギー制限をせずに、炭水化物を100g以下に制限するのは、長期的な有用性や安全性のエビデンスが不足しており勧められない」と指摘。1日当たりの糖質の摂取量は100g以上にすべきであると推奨した。

炭水化物とたんぱく質、脂質の構成比は、従来の考え方を改めて確認。「炭水化物は50%-60%、たんぱく質は20%以下を目標とする。脂質の摂取上限は25%とする」と説明。n-3不飽和脂肪酸の摂取を増やすといった脂肪酸の構成にも配慮すると付記した。

糖質制限は今後の検討課題と位置付けた。「炭水化物量の摂取は議論がある。問題と認識して、炭水化物40%-50%の減量効果は積極的に検討課題にすべきである。生活習慣病は、日本人の食習慣を考えないと持続しない」と解説している。
(糖質制限勧めず、DM学会声明案)

上記の声明をまとめますと、以下のようなものになると思われます。
1) 1日当たりの糖質の摂取量は100g以上
2) 総エネルギーの構成としては、炭水化物は50%-60%、たんぱく質は20%以下を目標。脂質の摂取上限は25%
3) 脂肪に関しては、n-3不飽和脂肪酸の摂取を増やす。


まず1)-2) に関してですが、以前から「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多く、短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘されており、バランスよく食事摂取を行うことが大事ですよ、といった内容になっています。

3) に関してですが、脂肪酸は、その科学的構造から二重結合の数によって大きく3つに分類でき、
i) 二重結合がない飽和脂肪酸(乳製品、肉などの動物性脂肪や、ココナッツ油、やし油など熱帯植物の油脂に含まれます)、
ii) 二重結合がひとつの一価不飽和脂肪酸
iii) 二重結合を2つ以上含む多価不飽和脂肪酸に分類されます。

多価不飽和脂肪酸は、主に植物油や魚に多く含まれ、体の中で合成できないため食べ物からとらなければならない必須脂肪酸も含まれます。n-6系脂肪酸のほとんどはリノール酸で、大豆油、コーン油、サフラワー油などに多く含まれています。

n-3系脂肪酸には、調理油などに含まれている必須脂肪酸のα−リノレン酸、魚類に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などがあります。このn-3系脂肪酸を多く摂取するようにしましょう、と言われているわけですね。

糖質制限食は、短期的なダイエットには向いているかもしれませんが、長期的な健康といった視点で考えると、決して良い面ばかりというわけではなさそうですね。