医療相談室に、長年の咳でお悩みの方の相談が掲載されていました。
20年以上前から、むせるほどの突発的なせきに悩まされています。数年前にハウスダストのアレルギーがわかりましたが、ほこりのない浴室でもせきが治まらないことがあります。(38歳女性)

この相談に対して、横浜市立みなと赤十字病院 アレルギーセンター長である中村陽一先生は、以下のようにお答えになっていました。

咳喘息の可能性


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せきの主な原因は、ウイルスや細菌などの病原体によって引き起こされる、風邪や急性気管支炎などの感染症です。ただし、長い場合でも3週間程度でおさまります。

ご質問者のように、数年にわたり長期間続くせきを繰り返す場合は、感染症以外の原因が考えられます。可能性が高いのは、せきぜんそくです。

せきぜんそくは、気管支ぜんそくのように「ヒュウヒュウ」「ゼイゼイ」といった呼吸音や息苦しさがなく、「せき」だけが目立ちます。原因は気管支粘膜の慢性的な炎症であり、治療をせずに放置すると重症化し、3人に1人は気管支ぜんそくに至ります。

ダニやハウスダスト、カビ、ペットの毛などに対するアレルギーは、ぜんそくの重要な原因となります。ただし、アレルギーとは関係なく、風邪やたばこ、室内外の温度や湿度の変化などでも、せきが誘発されることがあります。

咳喘息とは、喘鳴が明らかでなく、咳嗽のみを症状とする喘息を指します。病態や治療は慢性の喘息と同じであり、気道反応性の亢進(気道過敏性)が診断の根拠となります。喘鳴(「ヒューヒュー」「ゼェーゼェー」という音が、聴診器を使わずに聞こえる状態)が明らかでなく、咳のみを症状とする喘息のことです。

胸部X線所見や肺機能検査が正常で、慢性の咳嗽を認める疾患として気管支喘息の頻度が高いことから、「咳喘息」と呼ばれます。治療などは、いわゆる喘息と同じであり、慢性の咳を認める疾患として、特に気管支喘息の頻度が高いことから"咳"喘息といわれています。

くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、発熱などのかぜ症状にせき(咳嗽)を伴っても、通常はかぜ症状の改善と同時に、1週間以内に治まります。しかし、せきだけが長引き、場合によってはますます強くなり睡眠に障害があったり、女性はせきとともに尿がもれたりすることがあります。2ヶ月以上続くと、慢性咳嗽と診断されます。

特徴的なのは気道過敏性といって、健康な人では問題にならないほどの軽微な刺激で、咳き込んでしまうなど、症状が出現することです。原因として多いのは、運動やなどで、他にも煙草の煙、香水などのニオイ、ストレスなどです。

せき喘息は、ヒューヒュー、ゼーゼーいう喘息の前段階で、多くは喘息と同じ治療(気管支拡張薬と吸入ステロイド)で改善します。アトピー咳嗽は、喉のイガイガ感や痰のひっつき感を伴いますが、アレルギー治療に使う抗ヒスタミン薬や吸入ステロイドで治療できます。

治療としては、以下の様なものがあります。
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治療は、炎症を鎮める吸入ステロイド(副腎皮質ホルモン)を予防的に使い、激しいせきには、気管支拡張薬を併用します。

長引くせきの原因には、せきぜんそく以外にも蓄のう症や、胃酸が逆流する胃食道逆流症などもあります。高齢なら慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疑いもあり、さらに見逃してはならないのは、肺結核や肺がんなどの重大な病気です。

長引くせきに自己判断は禁物であり、専門医を受診して治療を開始すべきでしょう。

治療法としては、急性発作に対しては、気管支拡張薬、ステロイド薬を中心とした治療を行います。気管支拡張薬としては、吸入β2-刺激薬を基本として、キサンチン製剤、抗コリン薬などを用いることもあります。ステロイド薬(炎症を抑える)は経口ないし点滴で用います。

持続する喘息の場合、軽症持続型では少量の吸入ステロイド薬が基本です。キサンチン製剤、β2-刺激薬吸入、抗アレルギー薬は、補助的に用います。中等症〜高度持続型の場合も、吸入ステロイド薬が基本ですが、量は増えます。同様に、キサンチン製剤、β2-刺激薬吸入、抗アレルギー薬を補助的に用いることもあります。

典型的な喘息発作で受診する患者の診断は比較的容易ですが、軽症例・慢性的な症状のある例や、咳喘息例などでは注意深い診断が必要になります。可逆性気流閉塞が認められない場合が多いですが、非特異的気道過敏性、慢性(好酸球性)気道炎症の存在で診断可能となります。

慢性咳嗽を主訴に受診することが多く、喀痰中の好酸球増多と気道過敏性の存在する場合に咳喘息と診断することができます。このような特徴があり、長引く咳がみられた場合、早期に呼吸器内科などを受診されることが望まれます。

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