よしもとクリエイティブ・エージェンシーは11日、お笑いコンビ「千鳥」のノブさん(33)が、首の後ろにある椎骨動脈が裂ける「未破裂左椎骨動脈解離」で大阪市内の病院に入院したと発表した。1週間程度の入院が必要という。

同社によると、ノブさんは10日に激しい頭痛を訴え、同市内の病院で診察を受けたところ、未破裂左椎骨動脈解離と診断され、即日入院した。医師によると、しばらく安静にすれば問題ないという。

入院中の仕事は休演するか、相方の大悟さん(32)のみが出演する予定。
(お笑いコンビ「千鳥」ノブさん入院 未破裂左椎骨動脈解離と診断)

椎骨動脈解離とは



椎骨動脈は鎖骨のあたりから首の左右両側を通って脳に至る血管です。脊髄動脈や後下小脳動脈を分枝し頸髄や延髄、小脳下部を栄養します。

その椎骨動脈の内壁の一部が弱くなって裂け目が入り、血圧などで外側に膨らんで瘤になった状態が解離性動脈瘤で、脳内の動脈では椎骨動脈で起きることが多いようです。

血管の壁が弱くなる原因には、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病のほか、喫煙、大量の飲酒、外傷があります。もし瘤が脳幹や小脳を圧迫するくらいにまで大きくなれば、頭痛やめまいを起こしたり、ろれつが回らなくなったりする症状が出ます。

脳動脈瘤の破裂が起こると、くも膜下出血が起こりえます。くも膜下出血をきたすと、その半数近くは死亡してしまうと言われているため、未破裂脳動脈瘤の治療は、くも膜下出血を予防するという観点で非常に重要となっています。

動脈壁の解離による動脈瘤は大動脈のものがよく知られていますが、脳の動脈に発生した解離性の動脈瘤を「解離性脳動脈瘤」いいます。くも膜下出血で発症する場合は,大部分が椎骨動脈または脳底動脈の領域に発生します。

未破裂脳動脈瘤のほとんどは、くも膜下出血を起こさない限り無症状ですが(無症候性未破裂脳動脈瘤)、周囲の神経を圧迫し症状を出すことがあります。また、サイズの大きいものでは脳を圧迫し、症候性になる場合もあります(症候性未破裂脳動脈瘤)。症候性のものは、その症状出現が破裂の前兆(warning sign)の場合があるので、速やかに脳神経外科に相談する必要があります。

ただ、未破裂脳動脈瘤は成人の約5%に存在していると考えられており、脳ドックや診断機器の普及により、その無症候性の未破裂脳動脈瘤の発見される頻度が増加傾向にあります。

「70歳以下で5mm以上、治療に支障を生じる合併症がないこと」が治療の適応となり、10mm以上では積極的に治療が勧められます。3〜4mm未満または70歳を越える場合は、平均余命、大きさ、形態、部位、治療リスクなどを考慮し個別に判断します。

椎骨動脈解離の治療


治療としては、以下の様なものがあります。

6ヶ月以内に画像により動脈瘤の大きさと形態変化の観察を行い、増大傾向や突出部分(ブレブ)の形成が認められるか、症状が出現した場合には治療を勧めます。変化のない場合は、その後1年ごとに経過観察を行い、高血圧などの危険因子の除外に努めます。

脳動脈瘤の治療法において従来から広く行われ、最も確実なのが開頭クリッピング術です。根治性は高く、治療後の再発はまれであるという利点があります。ただ、開頭術のため、血管内治療に比較して手術侵襲は大きくなることから、重度の全身合併症を有する症例や高齢者では血管内治療が行われます。

椎骨脳底動脈系や傍床突起部内頸動脈瘤などは、一般に開頭術による合併症の頻度が高いため、血管内治療が選択されることが多いです。

血管内治療とは、カテーテルにより動脈瘤をコイルで塞栓する方法です。原則として開頭術が困難な症例が対象となります。

動脈瘤頸部が体部に比して小さい場合、根治性は高いです。動脈瘤頸部が広い場合、コイルが親血管に逸脱するため塞栓が難しいです。塞栓し得た場合も、頸部へのコイル充填が不十分となりやすいです。そのため、再発する可能性があり、治療後も定期的な画像による経過観察が必要です。

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