「肺癌になった場合、どれくらい生きられるのか?」というのは、患者さんやそのご家族も一番気になるところではないでしょうか。気にはなっていても、そのまま医師に質問することはためらわれる、という方がほとんどではないでしょうか(中には、そのまま質問される方もいらっしゃいますが)。

また、逆も然りで、医師の方もそれを答えることはためらわれることが多いのではないでしょうか。そこで、この記事では、おおよその目安、統計的・疫学的なデータでお示ししたいと思います。ご参考にしていただければ、と存じます。

なお、医学用語では、「どれくらい生きられるか、病気になった後にどうなるのか」、といったことを「予後」と言ったりします(wikipediaでは手術や病気、創傷の回復時期やその見込みを意味する、とあります)。その予後について、はっきり示していこう、というのがこの記事の狙いです。


TNM分類について



まずは癌という疾患全般で言えることですが、それぞれのステージ毎に、生存期間などは決定されていきます。そこで、まずはそのステージがどのように決定されるのか、ご理解いただかなければなりません。

TNM分類について
TNM分類とは、UICC(Union Internationale Contre le Cancer=国際対がん連合)が採用している悪性腫瘍の病期分類です。

身体の28部位の悪性腫瘍について、
T(tumor):原発腫瘍の進展度
N(nodes):所属リンパ節の状態、特定の部位では遠位リンパ節
M(metastasis):遠隔転移の有無

これら3つの因子に付記する数字によって、その広がりを表示するようになっています。

まず、肺癌のT因子では、
T因子(tumor:原発腫瘍の進展度)
T1:腫瘍径が3cm以下
  腫瘍は肺組織または臓側胸膜に囲まれているが、葉気管支より中枢に浸潤しない。
   T1a:腫瘍径が2cm以下
   T1b:腫瘍径が2cm〜3cm
T2:腫瘍径が3cm〜7cm、あるいは以下の特徴を有する
  主気管支に浸潤が及ぶが腫瘍中枢側が気管分岐部より2cm以上離れている。
  臓側胸膜浸潤がある。
  腫瘍によって肺門におよぶ無気肺あるいは閉塞性肺炎があるが、一側全体には及ばない。  
   T2a:腫瘍径が3cm〜5cm
   T2b:腫瘍径が5cm〜7cm
T3:腫瘍径が7cmをこえるもの、あるいは以下の特徴を有する  
 ・胸壁浸潤
 ・横隔膜浸潤
 ・横隔神経浸潤
 ・縦隔胸膜浸潤
 ・壁側胸膜浸潤
 ・腫瘍が気管分岐部から2cm未満におよぶが、気管分岐部に浸潤のないもの
 ・腫瘍による無気肺あるいは閉塞性肺炎が一側肺全体に及ぶもの
 ・同一肺葉内に存在する腫瘍結節
T4:腫瘍のサイズは問わず、以下に浸潤するもの
 ・縦隔浸潤
 ・心臓浸潤
 ・大血管浸潤
 ・気管浸潤
 ・反回神経浸潤
 ・食道浸潤
 ・椎体浸潤
 ・同側肺に存在する複数の腫瘍結節

このようになっています。もちろん、一般の方々はこんなのは覚える必要はありません。
要は、「T因子は元となる肺癌が、1) どのくらいの大きさなのか、2) どれくらい周囲に広がっているのか」といったことを決めている」といったことをご理解いただければ良いかと思います。T1aが最も軽いもので、T4が最も重篤な状態です。

次に、N因子です。
N(lymph node:所属リンパ節転移の有無や範囲)
N0:所属リンパ節転移無し
N1:同側の気管支周囲リンパ節、肺内リンパ節、および/または、
  同側の肺門リンパ節への転移あるいは直接進展
N2:同側の縦隔、および/あるいは、鎖骨下リンパ節への進展
N3:対側縦隔、あるいは対側肺門リンパ節、あるいは同側・対側の斜角筋
  あるいは鎖骨下リンパ節への転移

これも覚える必要はありません。「N因子は、胸(胸郭)の中のリンパ節にどれくらいの範囲で広がっているか」を示すものです。N0は全くリンパ節転移が無いもので一番軽いもの、N3は最も重篤な状態で、「癌のある側とは反対の胸のリンパ節に転移している、もしくは鎖骨下リンパ節などに転移している状態」です。

最後に、M因子です。
M(metastasis:遠隔転移の有無)
M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり
 M1a:対側肺葉内に存在する腫瘍結節、悪性胸水・悪性心嚢水
 M1b:遠隔転移あり

これは、「遠隔転移が有る/無いを示す因子」です。転移があればM1、無ければM0です。

上記を全て踏まえて、たとえばT1N0M0、T4N3M0やなどと表します。

肺癌のステージについて


TNMさえ決まっていれば、ステージは自ずと決まります。次の表を参考にしてください。
stage

たとえば、T1aN0M0(原発となる癌が存在しているのみの状態)であれば、ステージIAと決定されます。
T3N1M0(腫瘍径が7cmを越える、もしくは胸壁へと浸潤している場合。かつ、同じ側の肺門部リンパ節に転移している状態)であれば、ステージIIIAと診断されます。

ここまでくれば、肺癌のステージ(病期)についてご理解いただけたのではないか、と思います。

次の記事に続く。