劇団新派の舞台などで活躍し、映画「男はつらいよ」シリーズの初代マドンナを務めた女優の光本幸子(みつもと・さちこ、本名深谷幸子=ふかや・さちこ)さんが22日午後6時10分、食道がんのため東京都台東区の病院で死去した。69歳。いつか来るさよなら [DVD]

光本さんは昨年12月15日に都内の映画館「銀座シネパトス」で娯楽映画研究家・佐藤利明氏(49)とトークショーに出演。初代マドンナということで「男は‐」特集の初日にゲスト参加し、これが最後の公の場だった。佐藤氏は「笑顔で撮影当時の思い出を楽しんで語っていらした。昨年は11月の葛飾など計5回も光本さんとご一緒にイベントをさせていただいた。普通にお元気でいらしたのに」と悼んだ。

寺男の源公役で第1作からレギュラー出演し、デイリースポーツでコラム連載中の俳優・佐藤蛾次郎(68)は「昨年11月24日に東京・葛飾で行われたトークショーで佐藤利明さんを交えて3人で集まった。光本さんは源公が仕えた“御前様”の娘役だが、実は僕とは映画の撮影で1回も絡んでないんですよ」と、当時を振り返った。

蛾次郎は「久しぶりにお会いして、光本さんは『今度、利明さんやシネパトスの支配人さんら、みんなでガジさんの店に飲みに行くわ』と言ってくださった。病気の“びょ”の字も感じないほどお元気でしたが、今にして思うと『首のあたりが痛いのよ』と言われていたことが気になった。ショックです」と、再会を約束した矢先の突然の死に衝撃を隠せなかった。
(佐藤蛾次郎、光本さん急死にショック「首のあたりが痛い、と…」)

食道癌とは


食道癌とは、食道に発生した上皮性悪性腫瘍を指します。好発年齢は60歳代であり、発症のリスクとなるのは、喫煙や飲酒があり、特に両者の相乗作用との関係がいわれ、1日20本以上喫煙し3合以上飲酒する群が他の群と比べ、食道癌の発生に有意な差のあることが指摘されています。また、食道アカラシアや腐食性食道狭窄、Barrett食道などに癌発生頻度が高いと指摘されています。

色素内視鏡や超音波内視鏡検査の普及に伴い、早期食道癌の発見される機会が著しく増加したため、早期食道癌発見の機会があがっています。そうした症例では、内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)が行われることも増えてきました。

症状としては、早期癌では食物がしみたり、食べ物の通過障害感、胸骨後部異常感などの軽度の食道症状が起こりえます。進行癌となると、狭窄が高度になり、嚥下障害が強くなってきて、悪心・嘔吐がみられることもあります。嘔吐は、初期には食物のみですが、狭窄が進むと唾液や粘液までも吐出してきます。

このように表在癌の症例では、症状を認めないのがおよそ半数程度でありますが、一方、進行癌では愁訴がないのはわずか5%程度であり、狭窄感、嚥下障害を有する症例が半数を占めます。

食道には漿膜がないため、周囲臓器への浸潤が起こりやすく、胸痛や背痛がみられたり、気道との間の瘻孔形成により激しい咳が起こることもあります。また、反回神経麻痺による嗄声などがみられることもあります。

食道癌の早期発見や存在診断は、消化管造影検査および内視鏡検査が主に行われています。特に、早期発見には、内視鏡検査(粘膜癌の診断や1cm 以下の微小癌の発見に大きな役割を果たしている)が主に行われています。

食道癌の診断は内視鏡検査が先行され、次いで精密検査としてX線造影検査が選択される傾向があるようです。内視鏡検査は病変の指摘が短時間で容易にでき、X線造影検査は病巣部の正面像・側面像から病巣の深達度、内視鏡所見では描出しにくい粘膜下の病変の広がりなどが分かるからです。

その他、超音波検査、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査なども行われます。これらにより、臨床の現場においては食道癌の周囲臓器浸潤、リンパ節転移診断、他臓器への転移診断などが主な役割となっています。また、近年では拡大内視鏡検査やFDG-PET検査の有用性も認められつつあり、食道癌の診断に用いられつつあります。

治療としては、以下のようなものがあります。

食道癌の治療


食道癌の治療法としては、内視鏡的粘膜切除術や手術療法、放射線療法、化学療法などが通常行われています。食道癌治療ガイドラインによれば、壁深達度およびリンパ節転移により、その治療方法が選択されています。

粘膜癌(特にm1〜m2)に対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR)が第1選択とります。粘膜下層癌(sm癌)では従来の頸部、胸部、腹部の3領域リンパ節郭清を基本術式とします。

m3およびsm1であっても、患者さんが外科治療を望まない症例や全身状態が根治手術に適さないと判断された症例の場合は、術前の画像診断上リンパ節転移がなければEMRの相対的適応となります。ただ、深達度がm3およびsm1癌では半数以上に脈管侵襲があり、リンパ節転移を認めていることも少なくありません。

癌腫が粘膜下層に深く入ったものでは50%以上の転移率であるといわれています。表在癌であっても、リンパ節転移がある程度疑われるものに対しては、進行癌に準じてリンパ節郭清を行うのが一般的です。

また、癌腫が固有筋層にとどまる病変(T2)あるいは食道外膜に浸潤している病変(T3)を有する症例は、遠隔転移および遠隔リンパ節転移を認めなければ、リンパ節郭清を伴った食道切除術を行うか、心・肺・肝・腎などの他臓器の機能障害を有していたり、手術を希望しない場合には化学放射線療法を行うことが通常です。

他臓器浸潤のある症例に対しては、転移した臓器が容易に合併切除可能な臓器の場合は、手術を行いますが、気管や気管支、大血管への浸潤が認められる場合には、まず化学・放射線療法を行ってから腫瘍を縮小し、手術を考慮します。

高度リンパ節転移、あるいは他臓器転移のような高度に進行すた場合は、非切除症例として化学放射線療法や化学療法が選択されます。

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