yomiDrの医療相談室に、「顔面神経まひ 再発、後遺症心配」が掲載されていました。
19歳の娘が、顔の左側が急に動かなくなり、「顔面神経まひ」と診断されました。抗ウイルス薬とステロイド(副腎皮質ホルモン)を飲んでいますが、後遺症や再発の恐れはないでしょうか。(45歳女性)

この相談に対し、手稲渓仁会病院 耳鼻咽喉科・頭頸部 外科部長である古田康先生は、以下のようにお答えになっています。
顔の片側が動かなくなる顔面神経まひのうち、突然発症するもので最も多いのは、原因不明の「ベルまひ」です。最近、口内炎などの原因となる単純ヘルペスウイルス1型が引き金となることがわかってきました。

次いで多いのが、水ぼうそうの原因ウイルスで、耳やのどに水ぶくれやかさぶたが生じ、急に顔面のまひが起こる「ハント症候群」です。これらのウイルスが、顔面神経の炎症や水ぶくれを引き起こし、まひが生じると考えられています。治療は、抗ウイルス薬とステロイドの飲み薬を使い、ウイルスの増殖や、炎症を抑える治療が行われます。

ベルまひは、症状が軽ければ1か月程度で完全に治ります。顔が全く動かないような高度のまひでも、8〜9割の患者は2か月程度で改善します。残る1〜2割は、半年から1年経過してもまひが続き、まぶたと口が一緒に動く異常運動や、顔面のひきつれなどの後遺症が残ります。

ハント症候群は、ベルまひに比べて治りにくく、後遺症に悩まされることが多いのが特徴です。

ただ、ベルまひでも一度治った後に再発することもあります。約7%の患者が、まひにもう一度かかりますが、左右が入れ替わることの方が多いです。

同じ側だけ何度も繰り返す場合は、顔面神経にできた腫瘍が原因のこともあります。コンピューター断層撮影法(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などによる検査が必要となります。

ベル麻痺とは


ベル麻痺は、かつては末梢性顔面神経麻痺の総称として用いられていましたが、現在では原因不明(特発性)の末梢性顔面神経麻痺を指します。ベル麻痺とは、原因不明の急性一側性(稀に両側性)の末梢性顔面神経麻痺です。

一側の全顔面筋が麻痺し、眼輪筋麻痺により眼裂が閉じずに兎眼となり、目を閉じようとすると、Bell現象で白眼が出ます。顔面神経専門外来の約40%を占めるとされています。顔面神経の走行、分岐の途中でなんらかの障害を受けて起こります(内耳孔と膝神経節の間、アブミ骨筋神経分岐部、鼓索神経分岐部、茎乳突孔部)。

診断としては、急性に末梢性の顔面神経麻痺をきたし、Ramsay Hunt(ラムゼーハント)症候群、Guillain-Barre症候群、サルコイドーシス、聴神経鞘腫、外傷など他の原因が除外することで行います。

予後は一般に良好で、80%は 1〜2か月以内に完全治癒に至りますが、残りは半側顔面筋の拘縮、麻痺、痙攣や異常連合運動など不快な後遺症を残します。

Ramsay Hunt(ラムゼーハント)症候群とは


Ramsay Hunt(ラムゼーハント)症候群とは、
1) 外耳道・耳介周辺の帯状疱疹
2) 顔面神経麻痺
3) 耳鳴・難聴、めまいなどの第7・第8脳神経症状

を来す症候群です。

原因は顔面神経膝神経節に潜伏感染する水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によります。顔面神経症状は高率にみられますが、内耳神経症状は65%程度に出現します。

上の3主徴がそろった完全型といずれか1つを欠く不全型があります。帯状疱疹を欠くが血清ウイルス抗体価の変動により帯状疱疹ウイルスが原因と診断された症例を無疱疹性帯状疱疹(zoster sine herpete)と呼ぶこともあります。発生頻度は顔面神経麻痺患者の10〜15%を占め、麻痺程度は完全麻痺から不全麻痺までさまざまです。

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