NHKが各地の消防などに取材して午後5時現在でまとめたところ、7日、熱中症とみられる症状で病院に運ばれた人は全国で少なくとも689人に上り、このうち愛媛県で1人が死亡し、三重県と茨城県などで合わせて5人が意識不明の重体になっています。熱中症対策マニュアル

愛媛県四国中央市では、屋外で清掃活動をしていた50歳の男性が熱中症の症状を訴えて病院に運ばれ、手当てを受けましたがまもなく死亡しました。

さいたま市岩槻区の中学校では、7日正午前、野球の試合をしていた中学生10人が吐き気などの症状を訴え、病院に運ばれていずれも熱中症と診断されました。また鳥取県北栄町では、7日午前、マラソン大会でレースに参加していた20代から70代までの男女9人が相次いで体調不良を訴え、熱中症の疑いで病院に運ばれました。
命に別状はないということです。

さらに、青森市で開かれていたマラソン大会で、午前中から昼すぎにかけて出場していた30代から50代の合わせて6人の男性ランナーが、熱中症とみられる症状を訴えて、相次いで病院に搬送されました。症状はいずれも比較的軽く、意識ははっきりしているいうことです。

NHKが各地の消防や警察に取材して午後5時現在でまとめたところ、7日、熱中症とみられる症状で病院に運ばれた人は、▽愛知県で86人、▽埼玉県で71人、▽茨城県で46人、▽神奈川県で38人など、全国で少なくとも689人に上っています。

このうち、愛媛県では1人が死亡し、三重県と茨城県、愛知県、それに宮崎県で合わせて5人が意識不明の重体になっています。
(熱中症の症状で689人搬送)

熱中症とは


熱中症とは、外気においての高温多湿などが原因となって起こる症状の総称です。体内に溜まった熱を下げることができず、体温が異常に上昇することで様々な障害が出てきます。

人体においては、深部体温が42℃以上になると生命の危険が出てきます。そのため、視床下部にある体温中枢は、食事・運動による熱産生の亢進または高温・多湿による熱放散の低下によって体温が上昇すると、皮膚の血流増加と発汗によって放熱を促し、核心温を約37℃に維持しようとします。

ですが、脳の温度が上昇すると体温中枢が障害され、発汗が停止して体温が急激に上昇して40℃以上となってしまいます。結果、細胞障害などから昏睡、けいれん、ショック、溶血、横紋筋融解、腎不全、多臓器不全、DICなどの致命的な病態を生じてしまうことがあります。

熱中症は、高温多湿で輻射熱があり風のない環境下で、運動や作業を始めた初日に起こりやすいです(皮膚にある汗腺は、暑熱な環境で運動や作業をして4日目頃から効率的に発汗する)。また、乳児、高齢者、肥満者、暑さに馴化していない人、脱水状態の人、食事をしていない人、通気性や吸水性の悪い衣服を着ている人に起こりやすいです。

熱中症の予防・治療


熱中症の治療・予防としては、以下のようなものがあります。
まずは予防が重要となります。予防としては、日よけや帽子などで暑熱環境を改善することや、運動や作業の前に体調管理(二日酔い、食事抜き、下痢や発熱性疾患の罹患、抗コリン薬などの内服がないこと)が重要となります。

また、暑さに慣れる前は身体負荷を軽減し、日陰でこまめに休憩や水浴びをすることも重要です。スポーツドリンクは、活動前から飲用することも有効です(ただし、糖尿病患者などでは高血糖に注意)。

夏になると急増する熱中症。その患者の半数近くを占めるのが、実は60歳以上の方々なのです。そもそも私たちは、全身の知覚神経の働きによって、暑さ、寒さの気温の変化を感じ取っています。しかし、年齢とともに、この機能は衰え、高齢者は2度から4度も暑さや寒さを感じなくなってしまうのです。

高齢者が最も熱中症を発症しやすい場所は「室内」だそうです。東京消防庁の調べによると2007年、60歳以上の患者のうち、家の中で発症したケースが実に6割近くまで達するのです。ではなぜ、日差しが照りつける外より、部屋の中の方が危険なのでしょうか?実は、夏は日差しの強い外より、室温の方が高くなるのです。

国土交通省のデータによれば、部屋に2箇所の窓がある場合でも、窓を閉めていると、外より9℃も高くなることが分かっています。一方、2つとも窓を開けておくと、温度の上昇は2.8℃であり、風通しを良くすることも重要です。

また、熱中症になりやすい日、というのもある程度予測する指標が発表されています。
その指標とは、WBGT(湿球黒球温度)です。WBGTとは、人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標で、乾球温度、湿球温度、黒球温度の値を使って計算します。
・屋外:WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
・屋内:WBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

であり、環境省熱中症予防情報の「環境省熱中症予防情報」で、危険、厳重警戒、警戒、注意、ほぼ安全に分類されて掲載されています(WBGT温度 31度以上で危険、28〜31 度で厳重警戒、25〜28度で警戒、21〜25度で注意となっています)。


熱中症になってしまった人が出た場合は、風通しのよい涼所に移動させ、体表面を露出させ水で濡らして冷風を送り、スポーツドリンクを飲ませて水とナトリウムを補います。氷嚢などは、頸部や腋窩部、鼠径部などの大血管部位を冷やします。脳血流を確保するためには、足を挙上し手足を末梢から中心部に向けてマッサージします。
 
病院に搬送された場合は、まず気道を確保し、呼吸や循環、尿量、核心温(直腸温や膀胱温)をモニターします。深部体温を38.5℃まで冷却することを目標に、微温湯で皮膚を湿らせ、空気をファンで当てたり、アイスパックを鼠径、腋窩、頸部に当てます。冷却効果が得られない場合は、アルコールを皮膚に塗布したり、冷水を胃内に出し入れしたり冷却ブランケットなどにより冷却するといった処置が行われます。

さらに、ソリタ-T3号やラクテック注を急速静注して補液を行い、CPKが高いときはミオグロビンによる腎障害に注意します。水バランスをとるにあたっては、肺水腫の発生を早期発見するため聴診などを行うほか、頻回の動脈血ガス分析を行い、PaO2の低下をチェックします。電解質の値も補正する必要があります。

夏場は室内にいても、このように熱中症になる可能性があります。是非とも室温には気をつけ、水分(できればスポーツドリンクなどのナトリウム補給ができるもの)をこまめにとることを心がけていただければ、と思われます。

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