医療相談室に「妊娠中の娘が不規則抗体陽性」と相談が寄せられていました。
娘が2人目妊娠中に「不規則抗体陽性」と告げられました。M型だそうです。本人はもちろん、生まれてくる子への影響が心配です。何に気をつけたら良いでしょうか。(64歳母)

この相談に対して、埼玉医科大学総合医療センター産婦人科准教授である高井泰先生は、以下のようにお答えになっていました。
血液型にはABO以外にもたくさんの種類があり、酸素を運ぶ赤血球の表面には様々なたんぱく質(抗原)が埋め込まれています。妊娠・分娩・輸血などによって自分以外の赤血球が流入すると、この抗原に反応するたんぱく質(抗体)が血液中に作られることがあります。これを不規則抗体といい、妊婦の2%前後にみられます。

不規則抗体の種類や量によっては、胎盤を通り抜けて胎児の赤血球を壊し(溶血)、胎児の重症貧血や心不全、胎児死亡や新生児黄疸などの原因になることがあります。出産時の母体出血に対して輸血する場合、不規則抗体による拒絶反応が起きない血液の確保が難しい場合もあります。

M型(抗M抗体)の場合、胎児の溶血の可能性がありますが、大部分は順調に経過し、出産後の赤ちゃんの経過も問題ありません。輸血の確保も支障がないと思います。不規則抗体の血中濃度(抗体価)が低い場合は、4週間ごとに濃度を測定すれば十分です。もし濃度が高くなってきたら、2〜4週間ごとの濃度測定と同時に、胎児の脳血流を1〜2週間ごとに超音波で測定することにより胎児の貧血をチェックします。

ヒトの血清中には、生まれながらに存在する規則抗体である抗Aおよび抗B抗体があります。この抗Aおよび抗B抗体以外の赤血球抗原に対する抗体を、「不規則抗体」といいます。種類に関しては、「不規則抗体」こちらに記載されています。

輸血や妊娠など何らかの免疫刺激により産生される。抗体の種類には低温(5℃〜22℃)で反応するIgM抗体と37℃で反応するIgG抗体とがあり、臨床的意義をもつのはIgG抗体です。受血者血清中にIgG抗体が存在する場合は、輸血実施時にその抗体に対応する抗原陰性血を供給する必要があります。
胎児の具合の悪化が疑われたら入院し、胎児輸血や出産を早めて母体外で治療することなどを検討します。抗体価が高い場合は、出産後も小児科医による厳重な観察が必要です。転院を要する場合もあるので、担当医から説明を受け、方針を相談することが大切です。

とのことでした。

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