2013年10月29日放送の「トリハダ(秘)スクープ映像 100科ジテンの2時間スペシャル」にて、生後9ヶ月の姿のまま30歳になった女性が紹介されていました。



「永遠の赤ちゃん」生後9カ月の姿のまま30年間生きてきたブラジル人女性
彼女の名前は、マリア・アウデテ・ド・ナシメントさん。1981年5月7日生まれ、今年30歳だ。ブラジル東部のセアラー州の田舎町に、家族と共に住んでいる。家庭はとても貧しく、家族は身を寄せ合うようにして暮らしている。彼女は30歳ではあるが、生まれついて「甲状腺ホルモン欠乏症」という病をわずらっていたため、生後9カ月のまま成長が止まってしまっている。

容姿は赤ちゃんのままで、しゃべることもままならない。彼女の身の回りの世話は父親と、彼の後妻のドラさんが行っている。彼女の実の母親が13年前に亡くなって後、ドラさんは自らの子どもとしてマリアさんの世話を献身的に行っているのである。ドラさんは彼女との出会いを「神様が私に授けてくれたギフト」と語っている。家は貧しく生活もままならないのだが、家庭に愛情が不足することはない。

専門医によれば早くから治療が行われれば、順調な成長も望めたと話している。しかし今となっては過去の話、もしも当時症状について詳細にわかっていたとしても、しっかりとした治療を受けるお金がなかったのだ。

2010年にマリアさんのことが地元テレビ局に紹介されると、とある大学が無償で医療を提供することを申し出た。以来、定期的に治療を受けているそうだ。そしてようやく、2〜3の言葉を口に出来るようになったとのことである。

彼女の疾患は、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)であったようです。甲状腺ホルモン投与で言葉を発することができ、歩くこともできるようになったそうです。

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは


先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは、胎児の頃から甲状腺ホルモン低下が生じる病態です。原因としては、
・甲状腺自体に問題がある原発性(甲状腺低形成、異所性、甲状腺ホルモン合成異常)
・脳の下垂体・視床下部が原因の中枢性
・一過性(ヨード過剰、母親への抗甲状腺ホルモン薬投与など)

に分類されますが、原発性が大部分です。

未治療では、遷延性黄疸、臍ヘルニア、知能障害、低身長、便秘、活動性低下などがみられます。さらに、未治療で経過していると、重症甲状腺機能低下症となります。特有な顔貌(まぶたが浮腫んだようになり、目は開いたようになります。また、鞍鼻といわれる鼻すじが落ちこんで、低くなった状態になります)を呈し、低身長(特に四肢の短小)や運動発達遅延などを来します。

ちなみに日本では、新生児マススクリーニング対象疾患(検査項目、血清TSH)であり、乳幼児期に発見されます。そのため、マリアさんのような症例は、きわめて稀です。

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の治療


治療は、レボチロキシンナトリウム10μg/kg/日を内服します(重症では12-15μg/kg/日)。
治療開始後、血清FT4 は1週間後には正常化し、血清TSHは4週間後には正常化します。その後は血清TSHが基準範囲をFT4 は基準範囲の平均-上限を維持するように投与量を決めます。

生後6か月までは1-2か月ごと、3歳までは3-4か月ごと、思春期が終わるまでは6-12か月ごとに検査を行います。一過性の場合は、減量や中止を検討します。

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