厚生労働省は30日、昨季(昨年10月〜今年3月)のインフルエンザワクチン接種による副作用で、80歳代の女性が死亡したと発表した。



同省によると、女性は接種後、血小板が減り内出血しやすくなる「特発性血小板減少性紫斑病」を発症した。接種から発症まで短期間であることなどから、病気の発症は接種と関連があると専門家会合で判断された。

昨季に同ワクチンの接種を受けた人は推定で延べ5024万人という。
(インフルワクチン接種副作用、80歳代女性死亡)

特発性血小板減少性紫斑病とは


特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とは、血小板に対する自己抗体によって血小板数が減少し、出血傾向をきたす自己免疫疾患です。

血小板に対する自己抗体が産生されると、それに引き続いて抗血小板抗体を結合した血小板の細網内皮系(マクロファージ)への取り込み(貪食、破壊)により、血小板が減少することになります。

有病率は人口10万人に対して12人程度です。急性型は小児に、慢性型は20〜40歳代の女性に多いです。小児に好発する急性型は、多くの場合ウイルス感染症が先行し、発症が急激ですが、6ヶ月以内に治癒します。成人に多く発症し長期に遷延する慢性型では、約30%は通常の治療法に反応しない難治性となります。

症状としては、紫斑(皮膚点状出血および斑状出血)、歯肉出血、鼻出血、性器出血などがみられます。関節内出血や深部出血は稀です。血小板数が 5万/μl 以上あれば無症状のことが多いです。重症では口腔粘膜や歯肉の出血がみられます。

特発性血小板減少性紫斑病の治療


治療としては、出血症状がないか軽度の場合には無治療経過観察(血小板数>3万)か、あるいは標準的治療が勧められます。血小板数が2万から3万でも、高血圧や高齢者、胃潰瘍などの易出血性疾患を合併しているなどの危険因子がなければ、経過観察でも良いですが、危険因子がある場合には標準的治療を開始することが勧められます。出血症状が高度の場合には血小板数に関係なく標準的治療を開始します。

副腎皮質ステロイド療法に全く反応せず、さらに出血症状のある患者には摘脾療法を行います。摘脾の施行時期に関しては、診断後6ヶ月以降とされています。手術予定日に合わせて、γグロブリン大量静注療法を施行するのが一般的だそうです。また、ITPの治療に対して、ピロリ菌の除菌療法が用いられ、60%以上の有効率が報告されています。

ステロイド内服治療では、多くの副作用が出てくる可能性があります。そのため、治療継続が難しいケースも出てくるわけです。摘脾を行うことも考えられますが、その際は、しっかりと担当医と手術に関するリスクや副作用などについて検討することが重要であると考えられます。

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