山口大医学部付属病院で24日、腎臓癌の50代女性患者から左腎臓を摘出する手術で、腎動脈と誤認して別の動脈を切断するなどし、女性が肝不全などを起こして死亡したと発表しています。



病院によると、10日に腹腔鏡手術を実施し、40代の執刀医が腎動脈と誤認し、上腸間膜動脈と腹腔動脈を切断、さらに右腎動脈に誤って止血クリップをかけてしまった、とのこと。手術後、血便があったことなどから、誤切断の可能性があると判断し、11日未明に緊急手術を行ったが、女性は12日夜に死亡したそうです。
 
詳しくは山口大医学部附属病院のHP「本院における医療事故の発生について」に記載されています。

さて、この手術は医師の間でも非常に注目を集めているようで、医師の情報共有掲示板m3.comの中でも話題のスレッドになっています。そこで議論が行われておりますが、手術ミスがどうして起きてしまったのかについても多くの意見が寄せられていました。その中で的を射ていると考えられる発言内容をご紹介させていただこうと思います。

腹腔鏡下での手術で視野が不十分だった


内視鏡手術では、狭い場所しか見えておらず、しかもビデオで拡大しているため、角度や場所間違えるととんでもないところを剥離してしまう、といったこともあるようです。そのため、腎動脈と上腸間膜動脈や腹腔動脈を見誤ることもあるのではないか、という意見。

内臓脂肪が多かった可能性


根治的腎摘では、通常Gerota筋膜ごと切除するため、内臓脂肪が多いケースでは腸間膜も脂肪の塊に見えてしまい、上腸間膜動脈を腎動脈と誤認する可能性は全くないとは言えない、とのことです。

動脈の処理の確認不足


動脈にクリップをかけたり、切断する前に、解剖学的な位置・方向を再確認することを怠った可能性がある。

といったことが、原因の可能性として挙げられていました。
真相はこれから明らかになっていくのかもしれませんが、こうしたミスはつきものですので、亡くなられた方にご冥福をお祈りする一方で、他山の石としてミスを減らす努力をしていかねばならないと思われます。