親が育てられない新生児を匿名で受け入れようと、熊本市の慈恵病院が運用している「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)に12日、生後数カ月の男の赤ちゃんが預けられていたことが16日、分かった。健康状態は良好だという。

子どもの受け入れが明らかになったのは、運用初日の5月10日に保護された3歳ぐらいの男児以来。慈恵病院や熊本市はポストの運用状況については年に1回、件数のみを公表する姿勢で「受け入れがあったかなかったかも含めて何も言えない」(慈恵病院)としている。

関係者によると、男の子が預けられたのは12日夜。病院は赤ちゃんの健康チェックなどを行う一方、熊本県警や地元の児童相談所に通報。健康面に問題はないとみられることから、今後親が現れない場合、赤ちゃんは通常、乳児院で育てられる。

慈恵病院の赤ちゃんポストは、病院の外壁に取り付けた扉を開け、中の保育器に赤ちゃんが預けられるとブザーが鳴りスタッフが駆け付ける仕組み。保育器のベッドの上には「気持ちが変わったら連絡してほしい」などと書かれた親あての手紙も置かれている。

ポストをめぐっては「命を救う最終手段」「子捨てを助長する」と賛否が分かれているが、設置を機に慈恵病院や熊本市には妊婦らの切実な相談が相次いでおり、最大の目的は相談してもらうことだとしていた関係者は「設置には意義があった」と受け止めていた。
(赤ちゃんポストに男の子 2例目、生後数カ月)


国内での運用は、実は1986年から5年間、群馬県大胡町(現前橋市堀越町)で『天使の宿』と呼ばれる、赤ちゃんポストと同様の施設が設置されていたことから数えて2件目とのことです。

前回は、1992年2月に施設内の新生児が凍死する事故が発生したため、閉鎖されたそうです。今回は、内部には摂氏36度に設定された保育器を設置する。新生児が入れられるとアラームが鳴り、医療従事者が駆けつけるという仕組みになっているとのことなので、こうした問題はないでしょう。

ですが、「育児放棄を助長する」といった意見や、保護責任者遺棄罪や児童福祉法、児童虐待防止法に違反する恐れがあるといった批判も、子供が預けられるたびに起こってきそうです。

政府も、柳沢伯夫厚生労働相が「(赤ちゃんの遺棄は)許されないというのが基本的立場。今後どのような状況になっていくか注意深く見守りたい」と述べているように、否定的な表明をしています。

たしかに、命を救うという尊い行為ではあると思われますが、子供自身が今後どのように人生を送っていくのか、など長期的な視点での評価が待たれます。

【関連記事】
赤ちゃんポスト問題 柳沢厚労相「許されるべきでない」ほか関係閣僚も批判

望まない妊娠で24時間相談 「赤ちゃんポスト」に対応