本来は異物の侵入から体を守る免疫機構の1つなのに、過剰に起こるとアレルギー疾患やリウマチなどの自己免疫疾患につながる炎症反応を、正常に終わらせる働きを持つ酵素を理化学研究所などがマウスで発見、29日付の米科学誌ネイチャーイムノロジー電子版に発表した。

この酵素の働きを制御できれば、アレルギーなどの治療につながる可能性があるという。

研究チームは、樹状細胞と呼ばれる白血球の一種が細菌やウイルスへの感染を感知すると、同細胞内でタンパク質「NFκB」が炎症反応を起こす遺伝子の働きを高めることに着目。NFκBの働きが低下した細胞を調べ、ある特定の酵素がNFκBを分解する反応を促進していることを突き止めた。
(炎症反応止める酵素発見)


NFκBは、アポトーシスの抑制による細胞生存・cell cycleの制御・免疫反応や炎症性サイトカインの産生などさまざまな機能を示す転写因子です。そのため、癌細胞においては発癌のプロセス・転移や浸潤能の獲得・抗癌剤耐性獲得などに重要です。

他にも、免疫反応や炎症性サイトカインの産生にも関与しているため、このNFκBを抑制するデコイ作成を目指していたようです。デコイは、この核酸医薬の一種です。遺伝子は、転写因子がゲノムに着地してスイッチが入りますが、デコイは、そのゲノム上の転写因子結合部分と同じ配列を含む短い核酸(DNA)を人工的に合成したもので、体内に投与すると転写因子がゲノムに着地することを阻害して遺伝子の働きを抑えます。

この方法は、自己免疫疾患の治療を広くカバーできそうです。臨床応用が待たれます。

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