体内にある微量元素の亜鉛が、免疫系の細胞で情報を伝達する役割を担っていることを、理化学研究所と大阪大の研究チームが突き止めた。

研究が進めば、新たな薬を生み出す手がかりになりそうだ。成果は21日付の米専門誌「ザ・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー」に掲載される。

亜鉛はたんぱく質の合成や傷の治癒、抗酸化作用といった重要な働きがあり、不足すると免疫低下や発育不全などをもたらすことは昔から知られていた。しかし、他の役割についてはよくわかっていなかった。

研究チームは、免疫機能に重要な役割を果たす「肥満細胞」の内部で、亜鉛がどう働いているかに注目。肥満細胞を刺激して特殊な顕微鏡で観察した結果、刺激から数分で、細胞内部の小胞体という器官のあたりから亜鉛が大量に放出されることを突き止めた。

研究チームによれば、肥満細胞が活性化すると、炎症物質が放出されるが、亜鉛はこうした物質を作る遺伝子調節にかかわるとみられる。平野俊夫・大阪大大学院教授は「細胞内で情報伝達を担う物質には、カルシウムや脂質など約10種類が知られている程度。他の細胞でも亜鉛放出が起きていれば、細胞を制御する新たな手段となりうる」と話している。
(亜鉛に免疫系細胞の情報伝達作用、理研・阪大チームが解明)


亜鉛不足といえば、味覚障害が有名ではないでしょうか
ですが、ほかにも亜鉛欠乏時には、胃腸機能の減衰および免疫機能低下による下痢が見られ、亜鉛を含む栄養素の摂取不良を招き、欠乏がさらに悪化することがあります。亜鉛はインシュリンの構造維持に必須でもあり、糖代謝にも関与します。さらに、ビタミンAの活性化にも関与するため、亜鉛の欠乏により、ビタミンA欠乏症が現れることがあります。

以前より、免疫機構の補助としての亜鉛の役割は知られていたようですが、今回のように、そのメカニズムが明かされたのは初めてのようです。免疫機能に重要な役割を果たす「肥満細胞」に働いているということがわかり、亜鉛不足は免疫系に大きな影響をきたすと考えられます。

「日本人の食事摂取基準」では、推定平均必要量:男性8 女性6mg/日、推奨量:男性9 女性7mg/日、上限量:男女ともに30mg/日とされています。

不足されているかたは、こうした基準値を意識して食事やサプリメントで補充されてはいかがでしょうか。

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