厚生労働省は新薬と成分は同じだが価格が安い後発医薬品の普及を目指し、2008年春にも薬の処方せん書式を変更する方針を固めた。割安な後発薬の処方を前提とした書式にする。後発薬を普及させることで、膨張する医療費を抑える考えだ。今秋にも中央社会保険医療協議会(中医協)で本格的な検討を始め、08年春の診療報酬改定の際に導入を目指す。
 
現行の書式は、新薬の処方が前提になっている。薬の処方は医師が決めるが、後発薬を選ぶ場合には「後発薬への変更可」という項目に医師が署名する形式だ。
(厚労省、薬の処方せん書式変更・後発薬を標準に)


医師が患者に薬を処方する際、これまでは新薬の使用が「標準」だったのを、後発医薬品を「標準」に転換する方針を固めたようです。

現行の処方せんは、まだまだ新薬が基本です。2006年度の診療報酬改定で、「後発品への変更可」という欄が追加されました。欄に、医師の署名があれば、薬局などで後発医薬品の処方が増えると期待されていました。ですが、実際に後発医薬品が処方されたケースは全体の1%未満の約9,500件にとどまったそうです。まったく普及効果はあまりなかったと考えられています。

後発医薬品の価格は、新薬の4〜7割程度が中心です。アメリカやドイツなどでは、使用される医薬品の4〜5割程度が後発医薬品で、日本でも欧米並みに普及すれば、年間1兆円程度の医療費の抑制が可能とされています。

新薬の特許は、おおむね20〜25年で、その間は開発した製薬会社の利益が守られます。ですが、新薬の開発費は数百億円とも言われ、世界の巨大製薬会社との開発競争が激化していることから、大手製薬会社には、「国は後発医薬品の普及よりも、新薬に高い薬価を認め、画期的な新薬の開発を促進するべきだ」という意見も根強いです。後発薬に移行するには、こうした製薬会社との関係性も障壁となっています。

ですが、医療費削減は急務です。逼迫した財政を考えれば、もはや待ったなしの状況下です。来年度からは、後発薬の割合が増加することが望まれます。

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