三鷹の森ジブリ美術館が、養護老人施設を舞台にしたスペインの長編アニメーション映画『しわ』を配給し、6月22日より新宿バルト9ほかにて全国順次公開することが明らかになった。

本作は、スペインの漫画家パコ・ロカが描き、第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した漫画「皺」を、スペインの新鋭イグナシオ・フェラーレスが、長編アニメーション化した作品。高畑勲監督のファンであったフェラーレス監督が日本を訪れた際、高畑監督を訪問した縁もあり、世界の優れたアニメーション作品の数々を日本に紹介してきた三鷹の森ジブリ美術館が、配給を手掛けることを決めたという。

元銀行員のエミリオ、同室のミゲル、面会の孫を待ち続ける女性アントニア、認知症のモデスト、その世話を焼く妻ドローレスなど、養護老人施設で生活する老人たちの姿が描き出されていく本作。自分が認知症であることに気付き、気を病んでしまったエミリオのために行動を起こすミゲルの姿など、老人たちの絆が人々の心を打ち、フェラーレスは、新鋭ながらスペインのアカデミー賞と呼ばれる第29回ゴヤ賞最優秀アニメーション賞、最優秀脚本賞を受賞する快挙を成し遂げた。

そんな本作に、高畑監督も「『しわ』という作品で、アニメーション映画の持つ可能性がまたひとつ広がった、とわたしは思っています。元になっているコミックスがまずそうなのですが、この映画は、誰もが無関心ではいられないが、そのくせ、できれば目をそらせていたい老後の重いテーマを、勇気をもって扱っています。わたしはひとりの老人として、人間として、そして一アニメーション従事者として、映画『しわ』に心から敬意を表します」と賛辞を送っている。

第83回アカデミー賞長編アニメ賞にノミネートされた映画『イリュージョニスト』にもアニメーターとして参加していたフェラーレス監督は、日本との親交も深く、斬新な切り口で注目を浴び、映画化もされたおバカ・スポーツ競技の映像大会「東京オンリーピック」にも参加。高畑監督のファンとあって、手描きアニメーションの手法が用いられた本作には、節々に高畑監督作品、そして日本のアニメーション作品へ敬意が感じられる。三鷹の森ジブリ美術館が紹介する日本のアニメーションの影響を受けたスペインの優れたアニメーション映画を、ぜひ劇場で目にしたい。
(ジブリ、認知症描くアニメーション映画を配給)

認知症とは


認知症は65歳以上の高齢者の8 %以上を占め、加齢により発症率・有病率ともに急増します。日本では、人口の高齢化に伴い今後20年間で患者数は倍増すると見込まれます。2大原因疾患は、1) アルツハイマー病と2) 脳血管性認知症です。

アルツハイマー病とは、初老期〜老年期に認知症を生ずる代表的な変性疾患です。簡単に言ってしまえば、何らかの原因によって大脳皮質の神経細胞が少しずつ死滅し、脳が萎縮、記憶や意欲など生きるために必要な能力が徐々に失われていく疾患です。

記銘力障害(物忘れ)、失見当識(日付や今いる場所などが分からなくなります)で発症し、中期には失認・失行(以前できていたことが分からない、行えない)のため、日常生活に支障をきたします。ほかにも、物盗られ妄想(自分でどこかにしまってしまって忘れてしまっているのに、誰かに盗られたと思い込んでしまう)や徘徊(出歩いて帰れなくなる)、不眠などの周辺症状のため、介護負担が大きいことも問題となります。

日本では、65歳以上での認知症の約半数がアルツハイマー型痴呆とされています。一般には65歳以上の高齢者に多い病気ですが、40歳から50歳という働き盛りで発症してしまうこともあります。これは「若年性アルツハイマー病」と呼ばれ、通常より進行が早いのが特徴です。

神経病理学的特徴としては、老人斑、神経原線維変化、神経細胞脱落などがあります。上記にもありますが、沈着するβ蛋白が発症に大きく関わっているといわれています。アミロイド前駆体蛋白(APP)から切り出されたβ蛋白が、神経細胞障害を起こし、神経細胞死や神経原線維変化が生ずる、と考えられています。

ほとんどが孤発性(遺伝性がない)のアルツハイマー病ですが、家族性アルツハイマー病では、APP遺伝子やプレセニリン1遺伝子、プレセニリン2遺伝子の異常などが認められます。続きを読む