読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
狭心症でステント(金属製の筒)を血管に入れて広げる治療を受けましたが、運動はどの程度ならしてもいいのでしょうか。(71歳男性)

東邦大学医療センター 大橋病院循環器内科教授である中村正人先生は、以下のようにお答えになっています。
心臓には、「冠動脈」という心臓の外側を取り巻く血管が3本あります。心臓に必要な酸素や栄養分は、冠動脈によって運ばれています。冠動脈が動脈硬化を起こし、75%以上狭くなると十分な酸素や栄養分を供給できなくなり、発作が起きます。これが狭心症です。運動したり興奮したりすると、より多くの酸素などが必要になり、発作が起きやすくなります。

狭くなった冠動脈にステントを入れて広げる治療を行ったとのことですが、血管を十分に広げることができたのであれば、病気になる前の状態に戻ったと言えます。原則的に運動を制限する必要はありません。

ただ、この治療は6~12か月後に血管が再び狭くなる「再狭さく」を起こす恐れがあります。再狭さくが起きると再び狭心症が起きますので、その時は激しい運動を避けるなどの注意が必要です。


ステント治療とは


経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は、1977年にGruentzigらにより初めて行われて以来、さまざまな技術上の、あるいは器具における進歩を遂げています。

当初は、バルーンによる拡張術のみであり、経皮的バルーン冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty:PTCA)とよばれていました。ですが、冠動脈ステント留置術(coronary artery stenting)、方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)、ロータブレーター、といった新しい器具の発明とそれを用いた治療が普及するにつれ、経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)と総称されるようになりました。

経皮的冠動脈形成術(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)とは、心臓を栄養する血管である冠動脈の閉塞した箇所にカテーテルを用いて、バルーン(風船)を拡張して狭くなった冠動脈を拡げる手術です。

PTCAは約3分の1の割合で、再狭窄が数か月後に起こるのが欠点の1つとして挙げられていましたが、最近ではステントと呼ばれる小さなメッシュ状の金属チューブを動脈壁に留置することが行われています。

ステントを留置することにより、再狭窄を少なくすることができると考えられます。ステントによって、再狭窄率は15%前後にまで低減することができたと言われています。急性閉塞や再狭窄を抑制する目的で、円筒状の金属ステントを留置する手技が開発され、現在では冠動脈ステント留置術がPCIの主流となっています。

特に、2004年夏から日本に導入された薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、新生内膜増殖を抑制する薬剤をステント表面にコーティングしたステントであり、再狭窄率がきわめて低いため頻用されています。

ステント治療後の注意点


ステント治療後の注意点としては、以下のようなものがあります。続きを読む