兵庫県伊丹市の市立伊丹病院は6日、甲状腺眼症治療のため眼窩の骨を削る手術を受けた患者の眼球の下付近に、止血用ガーゼを置き忘れる医療ミスが少なくとも4件あったと発表した。いずれも同じ男性医師(55)が執刀した。
 
病院は、男性医師が執刀したほかの患者67人のコンピューター断層撮影(CT)画像などを調査。うち37人にガーゼが残っている可能性があり、検査の案内状を送付する。
 
4人は平成13年から14年に手術を受けた。いずれも当時10〜30代の女性で、手術後、副鼻腔炎などを発症。うち3人のガーゼは除去し、残る1人も治療中。手術後5年間、3枚のガーゼが残されていたケースもあった。
 
男性医師は15年、同病院を退職。「突然出血が多くなったりしてガーゼの数を数えなかったこともあった」と釈明したという。平塚正弘院長は「安全管理により一層留意したい」と陳謝した。
(眼球下にガーゼ放置、女性4人に同じ医師が執刀)


甲状腺眼症(甲状腺機能異常眼症)とは、甲状腺機能の異常(バセドウ病、橋本病など)があるため、眼球が突出したり瞼が腫れたりする状態を指します。発症の原因としては、大きく分けて以下の2つに分けられます。
・甲状腺中毒症状:甲状腺ホルモンが過剰な状態による中毒に由来する。
・バセドウ病眼症:バセドウ病は、TSH受容体に対する自己抗体が原因ですが、このTSH受容体に類似した細胞表面糖蛋白の存在が眼窩で証明されており、独立に自己免疫反応が発生している。

こうした原因により、眼筋(眼球を動かすための周囲の筋肉)の肥大と眼窩における脂肪の容量増大が起こります。さらに、二次的に発生する静脈還流の障害が、眼窩で鬱血して悪循環を起こします。こうしたことにより、眼球突出や複視(物が二重に見える)がおこってきます。

そのため、美容面などや視機能(悪性の眼症では、最悪の場合、失明することもあります)といった問題が起こってきて、これを改善するために手術が行われています。

治療としては、甲状腺機能のコントロールやステロイド投与、放射線照射、眼窩減圧術を行います。眼窩減圧術は、ステロイド大量と放射線照射の併用で甲状腺眼症が改善せず、重症な悪性眼球突出に対して眼窩骨壁を除去し減圧します。 

上記の手術は、この眼窩減圧術であると思われます。ガーゼの放置は、結果、副鼻腔炎などを発症していることからも、見過ごすことの出来ない手術ミスです。執刀医師の患者に関して、しっかりとした検査や処置が必要であると思われます。また、こうした結果を招いた、チェック体制の甘さ(ガーゼの枚数を術前・術中・術後にしっかりとカウントするなど)も、これを機に見直していただきたいと思われます。

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