日本シリーズで巨人の前に敗退したものの、全6戦で安打を放ち打率.391をマークして優秀選手賞に輝いたのが日本ハム・小谷野栄一内野手(29)。3年前に発症した「パニック障害」と戦いながら得た“勲章"だった。ストレス社会の中で増加の一途、国内で100人に3人ともいわれる患者へ勇気を与えることになるか。

「表彰? 1軍では初めて。そういうものには縁がないタイプなので。精いっぱいやりました」。チームが敗退したとあって、小谷野は控えめに語り小さく笑った。

小谷野が野球人生の危機に陥ったのは、ほとんど2軍暮らしだった3年前。打席に入ろうとするたびに吐き気を催し、たびたびおう吐した。「パニック障害」だった。

パニック障害は強い不安、ストレスから発作を起こすものだが、症状は吐き気のほか、めまい、動悸、呼吸困難など人によって千差万別。電車に乗れない人、飛行機に乗ると発作を起こしやすい人などさまざまなケースがある。最近では長嶋一茂氏、タレントの高木美保さんなどがパニック障害に悩んだ経験を明かしている。

医師による投薬治療なども行われるが、「『症状が良くなった』と感じる患者も、無意識のうちに自分がストレスを受けやすい場所へ行くのを避けているだけで、極端に行動範囲が狭くなってしまっているケースが多い。完治したかどうかの見極めは難しい。むしろ、まずは薬で症状を抑えながら生活に支障がないのならそれでいいではないか、とゆったりと構えた方がいいと思う」(NPO法人・全国パニック障害の会=会員約1000人)。

しかし、小谷野の場合、打席に立たなくては仕事にならない。「正直言って、今も不安と戦いながらの毎日です。だからこそ、試合に臨む前に悔いのない練習をしよう、悔いのない準備をしようと心がけるようになって、結果的に技術が上がった。逆にプラスだったと思っています」。プラス思考などという言葉では軽すぎる、壮絶な“覚悟"を示す。

その小谷野が「いまの自分があるのは福良さんのおかげ」という。福良淳一ヘッド兼打撃コーチ(49)は、3年前は2軍監督として小谷野を指導していた。「とにかくまじめな子。まじめ過ぎる。時にはベンチ内でも吐いてしまった。代打で行かせようとすると吐く。チェンジになって守備から帰ってきて、自分が先頭打者となるともういけない。審判に言って少し待ってもらったりしていた。自分にとって指導者として初めてのケースで戸惑った」と振り返る。

症状が劇的に改善されたのは、同年秋の宮崎フェニックスリーグだった。「選手の数が足りなかったこともあって、十数試合に全部出場させた。『多少無理をしてでも、とにかく打席に立とうやないか』と話し合った。全試合に出られたことで自信になったのではないか。結果を恐れるあまりに発作が起こるようだから、『結果は考えるな。どうでもいいやないか』と言って聞かせた」と福良コーチは明かす。

小谷野は翌2007年から1軍で活躍するようになり、福良コーチも梨田監督就任と同時に08年から1軍へ昇格した。「(小谷野には)今もなるべく数多く声をかけている」
(パニック障害と戦いながら得た勲章 日本ハム・小谷野)

パニック障害の症状


パニック障害における発作では、動悸・頻脈、息苦しさ・過呼吸、死の恐怖が最も多く、そのほか悪心、めまい感、手足のしびれ、冷汗、気が狂う恐怖なども起こりえます。

大きく分けて、突然の強い不安感(死ぬのではないか、気が狂ってしまうのではないかという恐怖)と自律神経症状(動悸、頻脈、呼吸困難、発汗、息切れ、胸腹部不快など)が起こる、と考えられます。

発作は反復性に生じ、慢性に経過していきます。症状の再発を恐れる「予期不安」を伴うことが多く、さらに発展して「広場恐怖」に至ることも多いです。

「予期不安」とは、不安がまた襲ってくるのではないかと予期しつつ怯える状態を指します。不安神経症や予期神経症に認められます。

典型例は、動悸、発汗、心悸亢進、胸内苦悶、窒息感、眩暈、嘔気など自律神経症状を伴う不安発作を経験した場合で、このまま気が狂うのではないか、あるいは死んでしまうのではないかという破局感、切迫感を感じます。

一端、そのような体験をすると、同様の発作が再来するのではないかと予期して不安におののく状態が起こってしまいます。これを予期不安と言います。

「広場恐怖」とは、助けが容易に得られない場所にいることへの恐怖を指します。特定の場所における恐怖(単一恐怖)や、特定の社会的状況における恐怖(社会恐怖)とは異なります。通常、パニック障害(急性不安発作)が起きた後に出現します。上記の「自分がストレスを受けやすい場所へ行くのを避ける」といった行動は、こうしたことの現れだと思われます。

1人で戸外や混雑の中にいたり、バスや電車で移動しているときに、広場恐怖が生じやすいです。このような状況を回避するため、1人では外出をせず友人や家族としたりする傾向があります。重度になると、家にこもりっきりとなってしまうこともあります。

パニック障害の治療


パニック障害の治療としては、以下のようなものがあります。続きを読む