厚生労働省は、終末期医療について、国民や医療従事者の意識変化を探る大規模調査を来年初めにも実施することを決めた。終末期医療をめぐっては、国として初のガイドライン(指針)が9日にも同省の検討会でまとまる見込み。同省は「指針づくりは対策の第一歩」としており、意識調査を踏まえて、国民の合意を得られる施策を進めたい考えだ。
 
調査対象は一般の人のほか、医師や看護師、介護・福祉施設職員などを想定している。今年秋ごろをめどに有識者でつくる検討会を設置。検討会は具体的な調査方法や設問などを固め、結果を受け今後の終末期医療の在り方について提言する。
 
終末期医療をめぐる意識調査はこれまで平成5、10年、15年にも実施。前回15年2〜3月に約1万4,000人を対象にした調査では、延命治療を望むかどうかを事前に書面で意思表示する「リビングウイル」に賛成する人が、初めて一般国民の過半数を占めた。
 
また延命治療の中止などを決める手順に悩んでいる医療従事者が多いことも判明。これを受け現在検討中の国の指針案には、延命中止を決める場合の手続きなどが盛り込まれた。
 
今回の意識調査も同規模程度で実施。指針策定後になるため、厚労省は指針が医療現場に与える影響についても調べる意向だ。
 
昨年3月、富山県の射水市民病院で人工呼吸器取り外しが発覚したことをきっかけに、終末期医療に対する関心が高まり、意識が変化している可能性もある。厚労省は「この問題には国民の合意が欠かせない。調査結果を新たな対策の基礎資料にしたい」としている。
(厚労省 終末期医療で大規模調査 来年初め、「指針」後の施策に反映)


積極的安楽死の問題としては、名古屋安楽死事件や東海大学安楽死事件などがある。

名古屋安楽死事件は、被告人が患者である父親に毒薬入りの牛乳を飲ませて安楽死させた事案である。本件では、被告人に嘱託殺人罪の成立を認めた。
この際に出された安楽死の要件(違法性阻却事由)としては、以下の6項目があげられた。

1)不治の病に冒され死期が目前に迫っていること
2)苦痛が見るに忍びない程度に甚だしいこと
3)専ら死苦の緩和の目的でなされたこと
4)病者の意識がなお明瞭であつて意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託又は承諾のあること
5)原則として医師の手によるべきだが医師により得ないと首肯するに足る特別の事情の認められること
6)方法が倫理的にも妥当なものであること

というものだった。本件では、5と6の要件を満たさない(違法性は阻却されない)として、被告人に嘱託殺人罪の成立を認めた。

東海大学安楽死事件は、以下のような流れであった。
患者は多発性骨髄腫のため東海大学医学部付属病院に入院していた。病名は家族にのみ告知されていた。平成3年4月13日、昏睡状態が続く患者について、家族は治療の中止を求め、助手はこれに応じた。長男はなおも「いびきを聞くのが辛い」と申し出たため、鎮痛剤、抗精神病薬を通常の2倍の投与量で注射した。しかしなおも苦しそうな状態は止まらず、長男が「今日中に家につれて帰りたい」と求められた。そこで助手は殺意を持って塩化カリウム20mlを注射し、患者は同日、急性カリウム中毒で死亡した。

判決としては、刑法第202条の嘱託殺人罪ではなく、第199条の殺人罪とされた。

こうした問題があがるたび、「ガイドライン作成を」といった要請があったにもかかわらず、本格的な取り組みはなかなかできなかった。今回、ようやく調査が開始されたようだ。

終末期という患者本人、家族、医療従事者にとって重くのしかかる問題に関して、早急に解決の方法を提示して欲しいと思われる。

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