統合失調症は、約100人に1人という頻度の高い病気だ。原因は不明だが、ストレスや不眠をきっかけに発症することが多い。症状には、幻聴が聞こえる、妄想にとらわれるといった「陽性症状」のほか、他者との交流や感情が乏しくなる「陰性症状」、順序立てた作業ができない、ちょっとしたことが覚えられない「認知機能障害」などがある。

薬物療法が進み、今は発症者の3割が完全に回復、3〜4割は服薬しながら社会生活が可能になる。だが、長期入院も多く、精神科の入院患者の6割近くを占めている。主力になる薬は「抗精神病薬」。患者の脳では「ドパミン」という物質による信号伝達が過剰になっていると考えられており、それを抑える作用を持つ。

1950年代から「第1世代」の薬が使われてきたが、手足が震える、筋肉が硬直する、じっとしていられないなど「錐体外路症状」と呼ばれる副作用が出やすい。それを抑える薬を使うと、便秘などの副作用が増え、下剤も必要になる。さらに睡眠薬なども加え、10種類以上を処方されてきた人も珍しくない。

そうした副作用が比較的少ないのが「第2世代」の抗精神病薬だ。日本では96年から発売され、現在は5種類の薬が使える。効果や副作用を見極めるため、1種類だけ処方するのが原則とされる。

ところが、日本独特の「多剤大量療法」が今なお幅をきかせている。薬剤師の研究会が昨年10月時点で全国61病院に入院中の患者9325人の処方を調べると、1剤だけの処方は3割弱にすぎず、第2世代と第1世代の薬の併用も多かった。これでは副作用を減らせない。

東京女子医大神経精神科教授の石郷岡純さんは「陽性症状をたたくという対症療法の感覚で薬を使う医師が多い。しかも効果が出ない時に薬を替えるのでなく、別の薬を追加するから多剤大量になる」と指摘する。

多剤大量療法からの切り替えは、
1)まず従来の薬の量を減らす
2)第2世代の薬に替える
3)1剤にして最適な量まで減らす
といった段階を踏み、症状の変化に気を配りながら、ゆっくり進める。

筑波大講師の河合さんは、2003年から3年間、勤務していた茨城県の民間病院で切り替えに取り組み、多剤大量処方が1年以上続いていた患者23人のうち、20人で成功した。「失敗を恐れず、一時的な症状の悪化にひるまず、薬を減らすことを試みるべきだ」と強調する。
(統合失調症 大量投薬見直し)


統合失調症の薬物療法としては、定型抗精神病薬(上記の第1世代)および非定型抗精神病薬(上記の第2世代)が用いられています。

主に、ドーパミンD2受容体拮抗作用を持つ抗精神病薬(日本では20数種類が使用できます)の投与が、陽性症状(幻聴が聞こえる、妄想にとらわれるといった健常な人には存在しない症状)を中心とした症状の軽減に有効であるとされています。

近年、従来の抗精神病薬よりも、副作用が少なく陰性症状にも有効性が高いなどの特徴をもった非定型抗精神病薬(第2世代)と呼ばれる新しいタイプの薬剤(リスペリドン、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン)が開発され、治療の主流になりつつあります。

最近では、アリピプラゾールが加わり、国内では現在5種類の非定型抗精神病薬が使用可能となっています。上記の通り、少量投与でも効果を上げられることや、錐体外路症状(手足が震える、筋肉が硬直する、じっとしていられないといったパーキンソン病でみられる症状)がみられにくいといったことからも、非定型抗精神病薬が治療の質を向上させたのは事実です。

ですが、新たな問題もあり、副作用面では、オランザピン、クエチアピンが稀に高血糖・糖尿病を誘発することがあり、注意が必要です。

「多剤大量療法」から少量服用へとシフトされれば、患者さんの負担が減ることが期待されます。今後、こうした調査や研究、新薬開発がなされることが望まれます。

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