厚生労働省は、医療機関が名乗ることのできる診療科名に「総合科」を新たに加える案を、21日開いた医道審議会の専門部会に示した。専門分野が偏らず一定の診断能力を備えた医師を個別に審査し許可していく方針。現在、医療機関が広告の際に掲げることが認められている診療科名を分かりやすく整理する中で、開業医など、かかりつけ医の診療科として確立していきたい考え。

医師の専門分野化が進み、一つの病院の中でも総合的に患者を診る医師がいなくなっていることや、専門領域の診療科を掲げる開業医が増え、かかりつけ医を探しにくくなっていることが指摘されていた。このため、内科や小児科など幅広い領域で総合的に高いレベルの診断ができる医師、医療機関が、地域医療に欠かせないとし、医療法上、広告できる診療科名に「総合科」を新設することにした。

厚労省の案では、総合科という言葉のイメージから受ける診療内容が広く、あいまいでもあるため、当面の間、厚生労働省が「総合科」を名乗ることのできる医師の資格を個別に審査し、許可制とする。

また、現在広告が認められている34の診療科名について、表記方法の規制を緩和し、患者に分かりやすくする案を提案。

内科や外科など基盤的な診療科名を18にしぼり、「病理診断科」「臨床検査科」「救急科」「総合科」を加え、計22に。これらを表記した上で、専門の領域について、身体の部位や症状、治療技術などを原則自由に表記できるとしている。
(診療科名に「総合科」 厚労省が新設案示す)


標榜科とは、病院や診療所が外部に広告できる診療科名のことです。

医療法第69条では"いかなる方法によるかを問わず、次条に規定する診療科名以外を広告してはならない"と定めていて、第70条では"診療科名は政令で定め、それ以外にも医師又は歯科医師が厚生労働大臣の許可を受けたものは広告できる"と定めています。

具体的な診療科名は、医療法施行令第5条の11に広告することができる診療科名として規定されています。

その診療科名とは、
・内科 ・心療内科 ・精神科 ・神経科(神経内科) ・呼吸器科
・消化器科(胃腸科) ・循環器科 ・アレルギー科 ・リウマチ科 ・小児科
・外科 ・整形外科 ・形成外科 ・美容外科 ・脳神経外科
・呼吸器外科 ・心臓血管外科 ・小児外科 ・皮膚科 ・泌尿器科
・性病科 ・肛門科 ・産婦人科(産科、婦人科) ・眼科 ・耳鼻咽喉科
・気管食道科 ・リハビリテーション科 ・放射線科 ・麻酔科(厚生労働大臣の許可が必要)


となっており、これ以外は標榜できなかったわけです。
ですが、乳がんの治療のための乳腺科を標榜できるようにすべきとの議論があったり、日本病理学会からは病理診断や細胞診断を実施、またはセカンドオピニオンに対応するため、診療施設としての病理科標榜の要望が上がっていたりします。

「これ…何を診る科なの?」と困ってしまうような標榜では問題になりますが、"総合科"など、ある程度は緩和することで、より分かりやすく具体的な標榜ができるようになれば、患者さんの選択がしやすくなるのではないか、と思われます。結果的に、「どこに診てもらえばいいかわからない…大学病院へ行けばいいか」という患者さんが減り、中〜大病院への負担が減るようにもなるのではないでしょうか。

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