銀が使われる理由としては抗菌効果が高いからです。銀は水中に溶出することで発生する銀イオンの状態で殺菌力を発揮します。銀イオンは各種のバクテリアの細胞に強く吸着し、バクテリアの細胞酵素をブロッキングして死滅させます。においの元となる細菌を死滅させればいいわけなので、以前に紹介された「アルコールでワキのにおいが抑制できる」原理と一致するわけです。

銀イオンの殺菌効果は絶大で、ブドウ球菌、サルモネラ菌、赤痢菌、クレブシェラ、レジオネラ、シュードモナス、ポリオウィルス、ロタウィルス、ヘルペスウィルスをはじめとして多くの細菌、ウィルスに効果があることが認められています。

しかし、抗菌効果があるとはいえなぜ銀が抗菌剤、及び制汗剤などに選ばれて使用されているのでしょうか。金属はアレルギーを起こすこともあり、大丈夫なの? と思う人もいるでしょう。金属アレルギーはピアス穴を通したりすることにより、組織液に金属が溶け出し、アレルギー反応を引き起こしてしまうことです。最もアレルギー反応を起こしやすいのがニッケルで悪質な店ではシルバーアクセサリーにニッケルが含まれています。銀自体ではアレルギーを引き起こしたという報告はありません。

5〜10ppbという微量濃度で大腸菌を死滅させるような銀イオンがなぜ人体に影響がないのか。実は銀は体内に取り込まれてもすぐに体外に排出されるのです。飲み込んだとしても銀イオンは胃酸の中の塩酸に触れるとすぐに不溶性のAgClとなり吸収されることなく排出されます。

これは中世ヨーロッパの時代から銀の食器が使用され現代までにその毒性となる報告が見つかっていないことからもわかることでしょう。それどころか銀は食品添加物としても使用され、水道の蛇口の浄水器の内部抗菌にも銀が使用されているくらいなのです。このように抗菌力、安全性を兼ね備えているため抗菌剤の主成分となっているのです。
(ワキの下のニオイ対策に銀イオンが高い効果を発揮)


悪臭の原因となるのは、以下のようなものがあります。
・脂肪酸系(ハロゲン、アルデヒド類:刺激臭の代表的なものなど)
・窒素化合物系(アンモニア(NH3)、酸化チッソ(NO2)、ヘプトン類など肉類の分解過程に発生するものなど)
・硫黄化合物系(イオウ酸化物(SO2)、メチルメルカプタン(CH3SH)、硫化水素(H2S)、ジメチルサルファイト((CH3)2S)など)

腋の下のニオイなどは、アポクリン汗腺が多いために起こってくると考えられます。
汗腺は大きく分けてエックリン汗腺とアポクリン汗腺があります。

アポクリン汗腺から出る汗の成分は、タンパク質、糖類、アンモニア、鉄分、色素、蛍光物質、脂質、脂肪酸などで、エックリン汗腺が出す汗よりも粘り気があり、本来は無臭だといわれています。ですが、細菌などによって分解され独特の臭いを発し、これがワキガの原因になります。

銀イオンが高い消臭効果をもつのは、抗菌効果が高いからで、ワキのニオイなどを低減させるのには、効果的であると考えられます。また、上記の通り、非常に毒性が低い金属といわれています(製菓材料のアラザンや、昔ながらの清涼剤である仁丹の表面の銀色に使われています)。

香りで誤魔化すのではなく消臭を望むのなら、一度、銀の力を使ってみてはいかがでしょうか。

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