人に感染すると重い肝障害を引き起こす寄生虫エキノコックスの卵が国内で初めて、飼い猫のふんから検出されていたことが28日、北海道大の野中成晃講師(寄生虫学)らの研究で分かった。北海道江別市で開かれる日本獣医学会で来月2日に発表する。

エキノコックスは北海道を中心に、ネズミなどを介してキツネや犬に広がっているが、猫は感染しにくいと考えられていた。野中講師は「猫が人への感染源になる可能性がある」としている。

研究によると、昨年12月初旬、北海道内の飼い猫(雌、当時6歳)が獣医師にかかり、ふんから見つかった卵をDNA検査してエキノコックスと分かった。この猫は放し飼いでネズミを捕まえている様子が頻繁に目撃されていた。

野中講師は「ネズミを食べて感染したか、卵の含まれていたキツネのふんを食べ、感染せずに卵だけ排泄された可能性がある」としている。

エキノコックスはサナダムシの一種。飲み水などを介して卵が人の体内に入ると肝臓などに病巣を作り、放置すると死亡する場合もある。人から人へは感染しない。厚生労働省によると、今年は12人、昨年は20人の発症が国内で確認されている。
(猫からエキノコックス卵 人への感染源になる恐れ)


エキノコックスは、単包条虫 (Echinococcus granulosus) および多包条虫 (Echinococus multilocularis)に分けられ、日本(北海道)に生息しているのは後者です。

感染経路としては、虫卵に汚染された飲水や食物を摂取したり、成虫が感染している犬との接触によって虫卵が経口摂取されることによって成立します。ただし、終宿主(=イヌ、キツネ、オオカミ、コヨーテ、タヌキ、ネコ)→中間宿主(ヒトなど)→終宿主→…という形でしか感染しないので、ヒト同士の接触によっては感染しないといわれています。

症状としては、嚢胞が小さい内は無症状ですが、やがて肝臓腫大を惹き起こして右上部の腹痛、胆管を閉塞して黄疸を呈して皮膚の激しい痒み、腹水をもたらす事もあります。

次に侵され易いのは肺で、咳、血痰、胸痛、発熱などの結核類似症状を惹き起こされます。経過は成人で10年、小児で5年以上かかるといわれています。そのほかにも、脳、骨、心臓などに寄生して重篤な症状をもたらす事があります。

また、嚢胞が体内で破れ、包虫が散布されて転移を来たす事もしばしばあり、アナフィラキシーショックとなることがあります。

治療法としては、手術療法や化学療法(アルベンダゾールalbendazole)が使用されます。

2005年では、本州への拡大が懸念されており、埼玉県が県内の野犬からエキノコックス虫卵が検出されたと発表されています。まだ北海道の話ですが、飼い猫を介して感染、ということも十分に考えられます。今後は、ペットのことでも油断はできないようです。

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