日本人のほとんどの乳児にあるとされる青あざの一種、蒙古班。通常はお尻にできるものだが、特に治療の必要はなく、成長とともに自然に消失するものだ。しかし、世の中には蒙古班以外にもさまざまなあざがあり、中には治療が必要な、悪性化するあざもある。今回、中国をはじめ世界で報じられた中国・広東省のある少女は、先天性のあざが原因で身体の大部分が毛に覆われてしまい、大層難儀な人生を送っているという。

広東省封開県江口鎮に住む6歳の女の子、小媛ちゃん(仮名)の身体の大部分は黒っぽく、皮膚は荒れ、長い毛で覆われている。小媛ちゃんは、出生時にはすでに背中やお尻、すね、ひじなどに黒いあざのようなものがあったそうだが、当時は医者から大きな問題はないと診断されていたそうだ。

しかし、小媛ちゃんの症状は半年が過ぎても収まらないどころか悪化するばかり。あざは一向に薄くならず、毛は伸び続けている状態だ。そして毛がはえた黒いあざの部分は発汗ができないため、小媛ちゃんは気持ち悪さから患部をさすってしまい、皮膚にはすぐにかさぶたができてしまうという。母親によると、小媛ちゃんの皮膚は「まるで“イノシシの皮"」(広州日報より)で、愛娘が病気で苦しんでいることに心を痛めている。

このような特異な病気に悩まされている小媛ちゃんは、地元の子どもたちからは「黒い毛の子」といじめられ、人目につかない場所で隠れて泣くことも。また、母親には自分の肌が真っ白になった夢の話をするそうで、小媛ちゃんは背中が露わになったキャミのワンピースを「いま一番着たい」そうだ。

肇慶市の病院の医師の説明では、小媛ちゃんは「先天性色素痣」あるいは「獣皮様痣」で、遺伝的な原因の可能性があるとのこと。その症状は大変珍しく、症状もひどいことから、通常行われるようなレーザー治療をするにしても、麻酔の影響や多量の出血など、多くのことを考慮しなければならない。また、小媛ちゃんの家庭に経済的余裕がないことも、治療の妨げになっているようだ。
(背中があざと毛で覆われた少女、周囲からは「黒い毛の子」といじめも。)

巨大色素性母斑とは


巨大色素性母斑(獣皮様母斑)とは、有毛性で獣皮様にみえる母斑を指します。900cm^2以上または、最大径が20cm以上のものを巨大とする場合が多いです。部位により水着様母斑、ストッキング様母斑などの別称があり、上記のケースでは、水着様母斑と称することもできると考えられます。

色素細胞母斑とは、発生異常に基づく奇形の一種で、母斑細胞の増殖したものを指します。発生時期により先天性と後天性に分けられ、臨床像、組織像とも特徴を有します。上記のケースでは、先天性色素細胞母斑であると考えられます。

先天性色素細胞母斑は、生下時または生後早期に現れ、体の成長に伴ってゆっくり拡大します。20cm以上に及ぶ巨大母斑は悪性化の頻度が高いといわれています。

通常、巨大なものを除けば2、3個はみられます。直径2〜3mmまでの比較的小さな黒子から体の大部分を占める獣皮様母斑までさまざまなものがあります。褐色から黒色を呈し、扁平なものから丘疹状に隆起するものまであり、疣状を呈したり有毛性のものもあります。

巨大母斑の場合、悪性黒色腫の発生が問題となります。形状や色調の変化、隆起性の有無などを問診する必要があります。また、神経皮膚黒色症を考慮し、頭蓋内圧亢進症状の有無も重要です。

検査としては、ダーモスコピーや病理組織検査などを行います。ダーモスコピーでは、規則性のある網状斑上に黒褐色塊が多数存在します。病理組織検査では、複合型が多いです。境界部活性が高く、真皮下層まで母斑細胞が増殖します。脈管、付属器周囲にもみられるのが特徴です。

巨大色素性母斑の治療


巨大色素性母斑の治療としては、以下のようなものがあります。続きを読む