『おくのほそ道』の松尾芭蕉は、裂肛(切れ痔)に悩まされたそう。『おくのほそ道』の旅を終え、弟子に出した手紙には、痔で出血が止まらず四国以西への旅を断念したこと、長旅で痔が悪化したことが綴られていたという。『おくのほそ道』の創作に、痔が影響していたようだ。

夏目漱石の未完の大作『明暗』は、主人公が痔の治療をしている描写から始まるが、漱石自身の痔瘻(じろう)の経験を反映しているという。彼は切開手術を受け、無事に痔瘻を克服できたそう。

「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の句で有名な歌人・正岡子規も痔瘻を患っていた。手術を受けたものの、症状は改善しなかったそう。

ほかにも、医学者の野口英世や杉田玄白、熊本城の築城者である加藤清正、「大岡越前守」として知られる大岡忠相も痔を患っていたそう。

昔は手術もあったようだけど、強引に痔を切ったりとったりするものだったそうで、麻酔も今ほどしっかりしていなかったようだから、偉人たちも苦しかっただろう。

しかし、現在は医療も進歩し、痔瘻以外での痔の手術はほとんどないという。なるべく手術をしないで治す保存療法が主流で、病院では投薬に加え、免疫力や自然治癒力を高めるために生活改善を提案されることも多いんだとか。

昔よりも効果的かつ痛みをともなわない治療法が見つかった現代に生まれてよかったぁ。こうやって、ネットやテレビなどを通じて、痔の情報や改善法を自分で調べられるようになったのも、昔との大きな違いといえそう。

もちろん、「プリザエース」のような市販の専門薬でセルフケアできるのも、苦痛を軽減できる理由の一つ! もし、当時「プリザエース」が開発されていたら、芭蕉や漱石の偉大な作品は生まれてなかったかも!?
(痔の苦痛が名作に及ぼした影響とは!?)

痔の症状、診断とは


痔核(イボ痔)とは、肛門管の静脈叢が静脈瘤状に膨らんだ状態をいいます。肛門病変の約60%を占め、最も頻度の高い疾患であるといわれています。男性にやや多いですが、女性では妊娠に続発するものが多いといわれています。

原因としては、肛門管に分布する上・下直腸静脈叢のうっ血によって起こるといわれています。どうしてこうしたことが起こるのかと言えば、排便時の怒責、便秘や妊娠などの腹圧、門脈亢進をきたす肝硬変など背景にあると言われています。

改善には、まずは生活習慣の改善が必要です。便秘や下痢を防ぎ、適度な水分や食物繊維の摂取を心がけます。便意に忠実な排便を心がけ、過度のいきみや長時間のトイレを避けることも重要です。できれば、排便後は強く拭き取るよりは、ウォシュレットなどで洗浄するようにしたほうがいいでしょう。また、出血や疼痛のあるときは、アルコールや刺激物は避ける必要があります。

裂肛(切れ痔)は、肛門部に生ずる急性の裂創から慢性の潰瘍までを総称するものです。痔核、痔瘻とならんで頻度の高い痔疾患です。急性のものはいきんで硬い便を排泄した時に、疼痛と出血を伴って生じます。数日の安静で治るものが多いですが、排便状態の不良や感染、内括約筋の痙攣痛を伴うものは慢性化するといわれています。

裂肛も、生活習慣の改善が重要です。便秘が根底にあるので、緩下剤を投与して便通を整えます。また、清潔に保つのも重要です。局所にはステロイド含有・非含有の軟膏を適宜使用して、痛みが強い場合は、鎮痛用坐薬を使用します。

手術としては、排便障害を改善するものが中心となり、手術後はとても楽になります。肛門を締める筋肉の一部に小さな切れ目を入れるか、肛門のすぐ外側の皮膚を肛門の中側にずらして肛門を広がりやすくする方法があり、個々の患者さんの状態に合わせて選択されます(側方皮下内括約筋切開術やSSG [sliding skin graft]皮膚弁移動術などがあります)。再発防止には、便秘や下痢を避け、排便の状態を良く保つことが大切です。

痔瘻(あな痔)としては、以下のようなものです。続きを読む