本当は怖い家庭の医学で取り上げられていた症例です。

同じ課に配属された10歳年下の後輩に猛アタックし、見事、結婚へとこぎつけたK・Hさん。その数日後、残業に励んでいた彼女は、なぜか右手の指先にしびれを感じました。しびれは生活に支障をきたすほどではなく、1週間後にはすっかり治まったK・Hさん。しかし、ある日、入浴中に再び右手がしびれ、今度は感覚が鈍くなっている気がしました。湯上がりの身体の火照りが冷めていくと同時に、手のしびれも治まりましたが、その後も更なる症状が彼女を襲います。

症状としては、
(1)手のしびれ
(2)手がしびれ、感覚がにぶる
(3)右目の視界がぼやける
(4)両足のひどい疲労感
(5)膝下の感覚が無くなる
というものでした。


脳と脊髄の神経線維は、神経同士を絶縁する働きのある「ミエリン」という脂肪質のカバーで覆われています。多発性硬化症は、このミエリンのあちこちを自分で壊してしまう自己免疫疾患であり、この結果として起こる脳と脊髄の病気です。
そのために、神経の情報が上手く伝わらなくなって、様々な症状が出てきます。

発症の引き金として現在考えられているのは、主に風邪などの感染症と、強いストレス。K・Hさんもこの条件に当てはまっていました。彼女の場合、1人で何から何まで準備をしたあの結婚式をきっかけに、急激な生活環境の変化がストレスとなり、免疫力が低下。そして軽い感染症をきっかけに、病を引き起こしたと考えられます。

ミエリンが壊された場所によって症状が決まります。その部位は人によって違うため、症状はひとりひとり異なり、脳と脊髄のどこにでも起こり得ることから、非常に多くの症状があります。さらに、時期により、日ごと、時間ごとにも変化します。
よく見られる症状は、視力障害・運動障害・感覚障害・排尿障害・しびれ・めまい・疲労・ふるえなどで、程度も人それぞれです。

体温が上がると一時的に症状が重くなることがあります。
ですので、お風呂に入っているときに症状に気づいたのではないでしょうか。
お風呂などで体温が上昇した際、脳内の信号伝達に使われる電気信号が不安定になります。すると、正確な情報が身体の各所に伝わらなくなり、一時的に症状が現れることが多いのです。

治療としては、急性増悪期に炎症を抑えるため、ステロイドを点滴静注します。軽度であれば経口投与します。

再発の抑制には、インターフェロンβを皮下注射することで再発率を約30%減少させられることがわかっています。

もしこうした症状が現れたら、ご注意を。

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